かゆみそのものは症状であり、原因はほかにいろいろあるわけですが、かゆみをこらえきれず、かきむしったり、かき壊したりすることで状況を悪化させてしまいます。何とかかゆみの症状を抑えたいものです。
《豆知識》
・かゆいところをかくことで、"快楽ホルモン"と呼ばれるドーパミンが分泌されます。かくことは快楽を伴います。
・過剰な掻破行動は、皮膚を傷つけ、それが原因でかゆみがさらに悪化し、かゆみの悪循環に陥ります。
・かくことで、「皮膚バリアの損傷」、「炎症性サイトカインの放出」、「軸索反射(はじめは皮膚の一部がかゆいだけなのに、いつの間にかその周辺もかゆくなる)」の3つの変化が起こり、かゆみも皮膚病変も憎悪します。
・高齢者に多い「乾燥肌」、「乾皮症」は、皮膚の保湿をすることがとても大切です。冬場に乾燥する最大の理由は「気温が低下することで血流が皮膚の表面に来なくなるから」です。
・汗には乳酸ナトリウムと呼ばれる保湿成分が含まれており、それが減少することにより乾燥肌・肌トラブルにつながってしまいます。
汗をかくと乳酸ナトリウムが皮膚の表面に出てきます。この乳酸ナトリウムには水分とくっつきやすい性質があるため、皮膚の表面や角層に含まれる水分、さらに空気中の水分までくっついて、離れにくくしてくれるのです。それにより、皮膚の上には水のバリアができます。
また、汗には乳酸ナトリウムだけでなく、尿素や乳酸カリウムなどの保湿成分も含まれています。
皮膚には基礎発汗機能があり、ごく少量ですが24時間、全身から出ている特別な汗があります。もちろん保湿成分もたっぷり含まれ、皮膚を潤す働きをしてくれます。
基礎発汗機能を働かせるためには「毎日湯船につかる」こと、「運動をする」こと、「温かいものを食べる」ことです。
(豆知識の参考文献)
・小林美咲/監修(2017)『図解 がまんできない! 皮膚のかゆみを解消する正しい知識とスキンケア』日東書院本社.
・菊池新(2014)『なぜ皮膚はかゆくなるのか』PHP研究所.
・NHK「ガッテン!」(2021/12/8放送)『うる肌もち肌「極上美容液」を体内で作り出す秘策』.
東洋医学的にいえば、五行思想から「皮膚」は「肺」、「大腸」と同様な分類「木」に属し、「肺」が「皮膚」を制御するとしています。
さらに、特に高齢者の場合、皮膚に発疹が出ていないのに、かゆみが出る場合があります。この症状を皮膚搔痒症と言いますが、体内の水分が不足し、体に余分な熱がこもっている状態である「陰虚」、血が不足し、循環が悪い状態である「血虚」によるものとみます。
かゆみには、これらの考え方から治すことに加え、直接かゆみによく効くいくつかの特効穴を使います。
1. まず、かゆみによく効く特効穴です。
右図「治痒穴」 ちようけつ (上腕の外側、腋窩横紋と肩峰から下りた線の交点、または乳首の水平線と肩峰から下りた線の交点→どちらのツボも有効)
2つの「治痒穴」及びそれらを結んだ線も含めて施術をしてください。押して、下から上にスライドしてください。蕁麻疹のかゆみ止めにも有効です。かゆみの原因である湿疹の炎症も緩和します。
「臂臑」 ひじゅ (肩峰の外端で肘を上げると2つのくぼみが生じ、その前のくぼみより指4本下)
上肢を下ろした場合は5横指、三角筋前縁にとります。ほぼ、前脇下横紋端の水平線上です。「臂臑」は子供の皮膚病によるかゆみにも効きます。三角筋を引き剥がすように引きます。頻繁に行ってください。
湿疹の周りや「臂臑」、「治痒穴」の周りを楊枝でチクチクと刺激をしても結構です。2、3周で結構です。
右図「かゆみ反応点」 (薬指と小指のまたの間から、1/3下がったところ)
右図「百虫窩」 ひゃくちゅうか (大腿骨内側膝蓋骨内上角の上方、指4本)
むずむずしたかゆみ、湿疹に有効です。項番3の「血海」より指1本上方です。
右図「対屏尖」 たいへいせん (外耳道の前の耳たぶ側にある出っぱり(対珠)の頂点)
別名、「耳下腺」とも言います。強力なかゆみ止めのツボです。
2. 次に「肺経」と「大腸経」の経絡(ツボの経路)から、かゆみに効果があるツボです。
右図「合谷」 (手背、第二中手骨中点の橈側のくぼみ)
「列缺」 れっけつ (両手の拇指と次指のまたを交差させ、示指の先端が当たるところのくぼみ(橈骨茎状突起のそばのV字型の割れ目))
右図「曲池」 (肘を十分屈曲して、肘窩横紋外端の陥凹部)
3. 「陰虚」、「血虚」への対応です。「体質とツボ」を参照してください。
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