肩こり

肩こりを次のような方法に分類して紹介します。ご自分にあった方法を組み合わせてください。分類の項目名をクリックしていただければ本文にジャンプします。

《基本的なツボで治す》

1. まず、定番の首、肩、背中のツボです。  

①右図「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)

体の正中線より指3本弱外側に位置します。

「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)

左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。 

「健脳」 (風池より指幅1本下)

「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)

人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。

「肩井」 (第七頸椎棘と肩の骨の先端(肩峰角)を結んだ中央)

皮膚に対して垂直に押します。押すとズンとひびきます。

「天髎」 てんりょう (肩井の斜め内側後ろ親指幅1本)

内側への斜め後ろのほうが響きます。

「肩中兪」(大椎穴の外方指3本離れたところ)

「肩外兪」(陶道穴の外方指4本離れたところ)

肩甲骨内側の上の角のわき(背骨側)にとります。「肩井」、「大椎」、「肩中兪」はほぼ横に並びます。

「第六頸椎点」 (第6頸椎棘突起から左右親指幅1本)

指幅1本のみならず、2~4本離れた箇所も押してください。特に、3、4本目は肩を後にそらし頸の付け根の筋肉が少しくぼんだところを押してください。古い傷による頸部や肩の慢性的な痛みに効果があります。

 

 

第七頸椎棘という言葉が出てきましたので、ここで説明しておきます。第七頸椎棘は、首を前に曲げると首と背中の付け根に飛び出る椎骨で、丸く一番大きく見える骨です。棘は椎骨の後端が隆起し、突出したもの(突起)を意味します。人によっては、第六頸椎が大きく見える人もいます。その場合は、次の方法で判別します。

第七頸椎は頸椎(首の骨)の一番下で、髪の生え際から指4本下の大きな椎骨です。次の胸椎(背骨)の一番上との違いは首を縦横振ってみると動くのが頸椎、動かないので胸椎です。また、首を後ろに倒すと奥に引っ込むのが頸椎です。動く椎骨と動かない椎骨の間のくぼみが他に比べて一番大きいのも特徴です。このくぼみが、後で出てくる大椎というツボです。その下の椎骨、第一胸椎の下になりますが、陶道というツボになります。

 

精神的な疲れは肩甲間部に症状が出ます。腕を前で交叉し、肩甲骨を開いておくと取りやすくなります。

右図「魄戸」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)

左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。

「膏肓」 こうこう (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁、最も強い響きのあるところ)

わかりやすいとり方は、たとえば右側は、左腕を右肩から背中へ深くかけ、第三指(中指)の先で右の肩甲骨内側のふちを探りズンとひびくところです。

「神堂」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)

「譩譆」 いき (第六、第七胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)

左右の肩甲棘突起内端を結んだ線と肩甲骨下角(下縁)を結んだ線を4等分し、上から「魄戸」、「膏肓」、「神堂」、「譩譆」 と割り当てていくとわかりやすいと思います。肩甲骨の際の少し筋肉が盛り上がったところに取った方が効き目があります。

「肺兪」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。

「厥陰兪」 けついんゆ (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「心兪」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「膈兪」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「膈兪」は左右の肩甲骨下縁を結んだ線上を目安にしてください。

 

《リンパの流れを促進して治す》

2. 肩こりには鎖骨下リンパ本管、腋窩リンパ節にはたらきかけ、リンパの流れを促進させることも有効です。

時として、肩の全面に疲れが出ます。その際のツボです。中指で軽く押圧してください。

右図「欠盆」 (乳頭線上(前正中線の外方指5本(鎖骨の中央))で鎖骨上方の陥凹部)

陥凹部の中心を、指を小さめに回して探ってください。 

「気戸」(前胸部、前正中線の外方指5本、鎖骨下縁の陥凹部)

鎖骨の真ん中で鎖骨の下縁にあるくぼみの中の圧痛点に取ります。

「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下) 

肋骨に沿って体の奥深く指を入れ込み、ゆっくりと押します。上肢の内側に響きます。

 

②頸腕部の慢性的な痛み、こりに対し腋下リンパ節にはたらきかけます。

「極泉」 (腋窩中央、腋窩動脈拍動部)

拍動部にこだわらず、数カ所を押してください。 

 

右図「肩貞」 (肩関節の後下方、腋窩横紋後端の上方親指幅1本)

広背筋の緊張による肩こりにも有効です。腋窩横紋端も含めて近辺も押してください。腋窩横紋端には「後腋下(ごえきか)」というツボがあります。

《頑固な肩こりをパターンごとに治す》

3. 肩こりのパターンは多様です。部位ごとのコリを下の図のパターンに分け、それぞれの腕、足の経絡(ツボの経路)、ツボを使います動的なストレッチで補完するとさらに効果が上がります

・A:肩上部

・B:肩上部内側

・C:肩甲骨内側の上部

・D:首~肩甲骨間

①まず、Aパターンです。

「八宗穴(八総穴)」という経絡をまたがった病症を治す応用範囲の広い八つのツボがあります。その「八宗穴」から「外関」(三焦経)と「足臨泣」(胆経)を使います。

 

上記前腕の外側正中線(三焦経)を軽擦、揉捏、サムウォーキングをしてください。

とくに右図「外関」 (腕関節背側横紋の中心(やや小指側)から上方指2本、橈骨と尺骨の骨陥)がよく効きます。体の側面が張っている場合に有効です。

腕関節横紋から指で滑らせていくと皮膚のたるみで指が止まるところです。親指で一旦押し込み、指先方向に引っ張ります。相当痛いですが、10~15秒押し込みます。

 

次に足の第4指、5指中足骨間(胆経)を押圧します。特に「足臨泣」(第四、第五中足骨を圧上して指の止まるところ)は念入りに押してください。 

Aパターンで、押したときの筋肉のこりはないが、押された本人はすごくこりを感じるケースがあります。緊張が続いたことが原因にあります。そのときは項番④の頭をめぐる経絡のツボ押しが有効です。

 

②Bパターンです。前腕の尺側(小指側、小腸経)を軽擦、揉捏してください。 

首から肩甲骨間上部に痛みやこりがある場合は、次の手法も有効です。肩甲棘の上下から首の横を走っている「小腸経」という経絡を狙います。筋肉で言えば、棘下筋、棘上筋に施術します。 

右図「臑兪」 (肩周囲部、腋窩横紋後端の上方、肩甲棘の下方陥凹部)

「天宗」 (肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部)

「天宗」を含む肩甲棘の下縁のエリア、棘下筋を押圧してください。強く押すと痛いところですが、よく効きます。

「秉風」 へいふう (肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方)

「曲垣」 (肩甲部、肩甲棘内端の上方陥凹部)

「秉風」、「曲垣」を含む肩甲棘の上縁も押してください。

 

③Cパターンです。腕の回内(肘から先の橈骨・尺骨を内側にひねるような動き)が多い方(例えばキーボード入力が多い)や便秘や便通異常で肩甲間部のこりや痛みが発生しているケースが該当します。橈側(親指側、大腸経)を軽擦、揉捏をしてください。特に次のツボを押圧してください。

右図「合谷」 (手背、第2中手骨中点の橈側)

右図「上廉」 じょうれん(次の「曲池」より前腕橈側指4本下)

前腕外側の大きな筋肉の一番盛り上がったところで著明な圧痛点を狙います。手のひらで前腕部を下から支え、親指で押し込みます。

「手三里」 (次の「曲池」より前腕橈側指3本下)

「曲池」 (肘を十分屈曲して、肘窩横紋外端のくぼみ)

 

肘頭に向けて押し込みます。

 

④Dパターンです。足の反射区「胸椎」ゾーンを押しもみます。 

右図「胸椎」 (親指の中足骨内側のアーチ部分)

足の裏側にかけて(緑色部分)も含めて押しもみます。

 

緊張が重なる生活を送っている場合もDパターンがでます。頭をめぐる経絡をツボ押しすることも有効です。  

督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(眉毛中央を上がった線)という経絡を前髪際指2本下から後方に人差し指、中指、薬指の腹で押しながら、少しずつ上がっていきます。コツは三指を少し広げ、頭のくぼみを探り、頭皮に指の腹を押しつけ、前後にすこし揺らします。 

 

緊張が重なる生活を送っている場合、「厥陰兪」 、「心兪」にこりが出る場合があります。その場合は前前腕部のツボを使うことも有効です。

「心臓」 (中指の第二関節から指の付け根まで)

片方の手の爪を使って強めに押します。

「郄門」げきもん (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指5本)

腕関節と肘関節間の中央より、指1本手首側になります。ただし、実際にはこのツボより肘に向けての部位に反応があり、その場合は次の「沢田流郄門」を使います。

「沢田流郄門」 (前腕前面、肘関節正中から腕関節に向け指4本)

上記の「郄門」とどちらか圧痛があるほうを押してください。

「郄門」は心臓疾患のツボとして必須穴と言われています。

「間使」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指4本)

腕をそらして取ります。

「内関」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指2本)

自律神経の安定、不安や動揺の調和、胸部、心窩部の痛みや疾患に効く名穴です。

「大陵」 (腕関節掌側横紋の正中にとる、多少橈側) 

 

《動的なストレッチで治す》

4. 以降の項はパターン共通の補完の手法です。まず、首から背中、特に肩甲骨の高さのコリの改善、また、円背(えんぱい、猫背)矯正の体操です。慢性的な肩こりがある方にはぜひ勧めたいストレッチです

①立つか、椅子に座った状態で、肘を曲げたまま上肢を挙上し、先に肘を前に出し、次に背中をそらすように上肢を後ろに回します。肘を前に出したときはできるだけ肩甲骨間を広げ、肘を横に回したときはできるだけ肩甲骨間を狭めます。肘を前に出したときは小指を手前に手背を合わせ、肘を横に回したときは手のひらを外向けにした方が肩甲骨の可動域が広がります。これを5~10回行います。

 

②同じように立つか、椅子に座った状態で、肩を後屈し肘を曲げたまま、上肢を挙上し、次に下ろします。この動作を繰り返します。上肢を挙上したときは手のひらを内側に向け、下ろしたときは手のひらを外に向けた方が肩甲骨の可動域が広がります。これを5~10回行います。 

 

③立った姿勢で腕は下ろしておきます。まず、肩を後屈します。肩を後屈したまま、腕を挙げていきます。挙げることができるまでです。痛みがある場合はそこで止めます。そして、肩を後屈したまま下げます。この動作を5~10回繰り返します。肩を後屈したまま動かすのがポイントです。

 

④肩をゆっくり回します。回数は5回程度です。肘で大きく肩を前方に、上方に、後方に引っ張るのがコツです

 

《胸鎖乳突筋近辺のツボで治す》

5. 胸鎖乳突筋近辺のツボも肩こり、首こり、特に首の付け根のこりに効果があります

右図「天容」 (前頸部、下顎角と同じ高さ、胸鎖乳突筋前方の陥凹部)

「天牖」 てんゆう (前頸部、下顎角と同じ高さ、胸鎖乳突筋後方の陥凹部)

「天窓」 (喉頭隆起と同じ高さで胸鎖乳突筋の後縁) 

「扶突」 (前頸部、喉頭隆起上縁と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁と後縁の間(中央))

「人迎」 (前頸部、甲状軟骨上縁(のどぼとけ)と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁、総頸動脈上)

甲状軟骨上縁(のどぼとけ)と同じ高さにあり、胸鎖乳突筋の前縁が人迎、中央が扶突、後縁が天窓です。)

c (天窓の下、胸鎖乳突筋の後縁)

人差し指、中指、薬指の3本で軽く押します。

 

これらのツボは、顔を横に向け胸鎖乳突筋を浮き出させた状態で、人差し指、中指(をツボに当てて)、薬指の3本の指を揃えて、軽く押します。胸鎖乳突筋近くのツボは刺激が強いので長押しは避けてください。特に胸鎖乳突筋の前縁のツボです。3~5秒押しを繰り返してください。

 

《手のツボ、耳のツボで治す》

6. 次は手のツボを使って慢性的な首、肩の痛みの緩和を狙います。

①中指の第一関節から付け根まで(右図青色部分)

②中指と人差し指の中手骨の間、中指と薬指の中手骨の間(右図オレンジ色部分)

③中指付け根一帯(右図緑色部分)

を揉みほぐすか、シャープペンシルの先(芯を出していない状態)または片方の手の爪でチクチクと刺激をします。

7. 次は耳ツボで治す方法です。

「肩こり帯」は耳の外縁で耳輪と対輪に挟まれたくぼみ(舟状窩)に取ります。ほんの少し後下方に引っ張りながら押し揉みます。

②「胸椎」、「頸椎」のゾーンは対輪にあり、親指と人差し指で挟むように押し揉みます。