手陽明大腸経

:手陽明大腸経(てのようめいだいちょうけい)の主要穴(13穴/20穴中)

《全般の症状》

  • 便秘、下痢、鼻汁、咽喉部の痛み、大腸の不調による湿疹の予防、高血圧、腱鞘炎、肩(肩関節前面部)の痛み、肩こり(肩甲骨上角近辺)、気持ちが落ち着かない(注参照)

⇒ 手太陰肺経、足陽明胃経、足少陰腎経と合わせると効果が上がる。特に手太陰肺経と密接な関係にある

 

(注) 心身を安定させる幸せホルモンと言われるセロトニンは腸、脳から分泌される

 

《前経脈》手太陰肺経  《後経脈》足陽明胃経

 

《流注》 るちゅう

示指末端(商陽穴)に起こり、示指の橈側白肉際(肌目の際)をめぐり、第一中手骨と第二中手骨の間(合谷穴)に出て橈骨に沿って上がり、肘窩横紋の外端(曲池穴)に入る。上腕の外側を上行して、肩峰突起の外端の肩髃に至り、巨骨を過ぎ大椎穴(督脈)に至って諸経と会する。大椎穴より下って鎖骨上窩(缺盆:足陽明胃経)を経て肺をまとい、下って横隔膜を貫き大腸に属する。

その支なるものは鎖骨上窩(缺盆)より別れて頸部に上り、頬を貫いて下歯中に入り、還り出て左右に別れて口を挟み、鼻下の人中に交わり、左は右に、右は左に行き、すなわち左右交叉して、鼻孔を挟んで鼻翼両側(迎香)に終わる。ついで足陽明胃経に連なる

(注1) 青い太字部分にツボが配置される

(注2) 暗赤色の太字部分は見落とされがちなルート 

 

《商陽》 しょうよう

[部位] 手の示指の内側爪体の角から2mm弱

[字義] 商は肺や大腸と同じ五行(金)に属し、陽(ここでは大腸経)の始まりの意

[適応症] 急な発熱、急な頭痛、急な咽喉の炎症に効く。重要な鎮痛穴

大腸経の井穴(注参照)→他の井穴と合わせて使用する→応用範囲が広くなる

: 肌荒れ、眠気覚まし、高血圧、心機能向上、自律神経を整える、夏を乗り切る、ヘバーデン結節、血管の養生、脂漏性皮膚炎(ニキビダニ)、脳卒中予防、風邪(喉の痛み)、養生(特に血圧の安定)、肺炎予防(免疫力の強化)、美容、下痢(風邪気味)

(注)井穴:各指の爪の生え際にあるツボ(湧泉を除く)、手には6箇所

 

《二間》 じかん

[部位] 第二指の中手指節関節の前橈側陥凹部、赤白肉際

[字義] 二番目の節間

[適応症] 大腸経の熱(痛み、炎症、こり)を取る

: ものもらい、ガングリオン、前腕部の痛み、腱鞘炎、肘の痛み、五十肩、肩の痛み(肩の前面やや外側)

 

《三間》 さんかん

[部位] 手背、第二中指節関節橈側の近位陥凹部

[字義] 三番目の節間

[適応症] 大腸経に沿った痛みを取る

: ものもらい、ガングリオン、前腕部の痛み、腱鞘炎、肘の痛み、五十肩、肩の痛み(肩の前面やや外側)

 

《合谷》 ごうこく

[部位] 手背、第二中手骨中点の橈側のくぼみ

[字義] 合は合う、谷は山間のくぼみ→第一・二中手骨の間の陥凹部にある。

[適応症]  大腸経の原穴(注参照)、「面口は合谷に収む」と言われ、顔面及び口内の疾患には欠かせない名穴(四総穴の1つ)」、全身に作用する最も重要な鎮痛穴。脳活穴

(注)原穴:六臓六腑に1つずつ、臓腑の気がもっとも現われる、臓腑の気を補う最も重要な経穴

: 口内炎、美容(肌荒れ)、風邪(初期)、脂漏性皮膚炎、ニキビダニ、下痢、ばね指、前腕部の痛み、腱鞘炎、鼻血、高血圧、花粉症、頭痛、養生(健康長寿)、認知症

 

《陽谿(陽渓)》 ようけい

[部位] 第一指と第二指を伸展して、深い凹窩の生じるところ

[字義] 陽は背部、谿は谷より大きい陥凹部

[適応症]  手首の痛みの必須穴

: リンパを流す、高血圧、前腕部の痛み、腱鞘炎、ばね指、耳鳴り

 

《温溜》 おんる

[部位] 陽谿穴(第一指と第二指を伸展して、深い凹窩の生じるところ)と曲池穴(肘を屈曲したとき、肘関節の前面にできる横紋の外端のくぼみ)を結ぶ線上で、中央から手首側へ指幅1本強

[字義] 温は熱、溜は溜(た)まる→(大腸経の)熱の留まるところ

[適応症]  大腸の経絡の熱を取る(大腸経の郄穴)

: 歯の養生(歯痛、歯茎の腫れ)

(注) 郄穴(げきけつ、げっけつ):各経絡に1つずつ、急性症状は郄で取る

 

《上廉》 じょうれん

[部位] 次の「曲池」より前腕橈側指4本下(遠位)、前腕外側の大きな筋肉の一番盛り上がったところの圧痛点。

[字義] 骨陵の上にある

[適応症] 大腸経の滞りに起因する肩こり(特に肩甲骨上角、肩甲間部)に効く

: 肘の痛み、前腕部の痛み、腱鞘炎、肩こり

 

手三里》 てさんり

[部位] 次の「曲池」より前腕橈側指3本下(遠位)

[字義] 三は「下廉」、「上廉」の次3つめという意味、里は村や町で人や物が一番集まるところ

[適応症]  脳活穴、大腸経の滞りに起因する肩こり(特に肩甲骨上角、肩甲間部)、上肢の痛み

: 首の痛み、座骨神経痛、呼吸困難、かゆみ、尿失禁、弾発指、肺炎予防、風邪、腱鞘炎

 

《曲池》 きょくち

[部位] 肘を十分屈曲して、肘窩横紋外端のくぼみ

[字義] 曲は曲げる、池は陥凹部の意味→肘を曲げたところの陥凹部

[適応症]  大腸経を代表する応用範囲の広い経穴

: 口内炎、肘の痛み、美容(肌荒れ)、かゆみ、蕁麻疹、高血圧、脳卒中予防、肩こり、アレルギー性皮膚炎

 

《臂臑》 ひじゅ

[部位] 肩峰の外端で肘を上げると2つのくぼみが生じ、その前のくぼみより指4本下

[字義] 臂は前腕、臑は上腕またはやわらかい肉→上腕から前腕までのいろいろな病気に効く

[適応症]  五十肩の代表穴の1つ、蕁麻疹、かゆみでも使う

: 蕁麻疹、五十肩、肩の痛み、かゆみ、飛蚊症

 

《肩髃》 けんぐう

[部位] 肩峰の外端で肘を 上げると2つのくぼみが生じる、その前のくぼみ 

[字義] 肩(ここでは肩峰突起)、髃(端の意)→肩峰突起の先端

[適応症]  肩の痛み、五十肩の代表穴

: 蕁麻疹、五十肩、肩の痛み

 

《扶突》 ふとつ

[部位] 前頸部、喉頭隆起上縁と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁と後縁の間(中央)

[字義] 扶は指4本、突は突出の意(ここでは後頭隆起)→喉頭隆起より指4本外側

[適応症] 陽明の経絡(手陽明大腸経と足陽明胃経)の異常は胸鎖乳突筋に反応が出る

: 美容(たるみ)、冷え症、肩こり

 

《迎香》 げいこう

[部位] 鼻唇溝中(法令線上)、鼻翼(小鼻)外縁中点と同じ高さ

[字義] 臭いを迎え入れるところ

[適応症] 鼻炎の必須穴

: いびき、美容(たるみ)、歯の養生、風邪(鼻汁)

 

《他の経絡上の大腸に関連する重要な経穴》

  • 「大腸兪」 (第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指2本) : 足太陽膀胱経、背兪穴
  • 「天枢」 (臍の両傍指3本) : 足陽明胃経にあるが、手陽明大腸経の募穴

(注) 募穴:六臓六腑に1つずつ、臓腑の異常を見る、臓腑の治療点、臓腑との結びつきが強い