慢性の腰痛

慢性の腰痛改善に関してのポイントは、当たり前のことですが次の通りです。

 

 

それぞれのポイントをクリックしていただければ本文にジャンプします。ポイント毎にいくつかの方法を記述してあります。どの方法でも結構です。

《いかに再発させないか》

1. 予防法として、簡単な気功による養生です。横回転の「スワイショウ」という気功法がお勧めです。

①立った姿勢で、足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

②腕の力を抜いて、腕を垂らしたまま、頭頂から背骨、尾骨の縦の線を軸にして、ウエストをひねって回転運動をします。

③腕と肩の力を十分に抜き、腕は体に巻きつくようにまかせる感じです。勢いをつけて回さないでください。

④首もあわせて回しますが、めまい防止のため回しすぎないでください。

・猫背で首が前に出る姿勢の方は首を前向きに固定したまま、腰をひねる方法を勧めます。

⑤左右に巻きつくとき口からふっと息を吐きます。吸うときは自然に任せます。但し、無理をする必要はありません。自然に任せてください。 

⑥時間にして1~2分程度、一日1~2回行ってください。

 

2. 木槌を使って、予防または慢性で長く続くごく軽い痛みや違和感、筋肉の張りを治す方法です。左右のバランスを取るのに適しています。 

①まず、左右の腰の状況を確認します。仰向けに寝て、左膝を立て、右膝を寝かせます。次に右膝を立て、左膝を寝かせます。膝は曲げたままです。どちらのほうに腰に痛みや違和感があるかを確認しておきます。

 

②木槌を使います。

・仰向けに寝て、右膝を立て、左足首を右膝頭に乗せ、右図青色の枠内(腰の反射区)、踵の中央に位置するツボ「失眠」(骨粗鬆症予防)を木槌で100回ぐらい叩きます。

・次は逆の足をやります。

・そして、上記①の動作で違和感を調べます。まだ違和感が残っていれば、繰り返します。

なお、「失眠」は骨粗鬆症予防を目的としています。

 

3. お勧めのストレッチ、体操です。

①まず、東京大学医学部付属病院特任教授の松平浩先生が推奨している方法です。

・足を軽く開き、膝を伸ばしたまま、手のひらを腰に当て、上体をゆっくり反らします。

・1、2回3秒間息を吐きながらキープします。

・コツは後に反らしすぎないことです。ほんの少しで結構です。

・前かがみの姿勢が続いた後有効です。

但し、脊柱管狭窄症の人は除きます。

 

(本項の参考文献)

・松平浩(2016)『腰痛は「動かして」治しなさい 』講談社.

・松平浩(2016)『文藝春秋2016年11月号』文藝春秋.

・松平浩(2013)『「腰痛持ち」をやめる本』マキノ出版.

 

②次に孫維良先生が推奨している「腰眼押しまわし」という方法です。 脊柱管狭窄症にも有効です。

・右図「腰眼」というツボを親指で押しながら、腰を左右に15回ずつ回します。

・「腰眼」というツボを親指で押しながら、上体をゆっくり前に倒します。そして、ゆっくり戻します。10回繰り返します。前に倒すことで痛みが増す場合は、止めてください。

 

「腰眼」 (第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指4本強、腸骨の上端の高さ)

 

(本項の参考文献)

・孫維良(2018)『脊柱管狭窄症の痛みは指1本で消す!』宝島社.

 

《異常を感じた段階やまだ軽い段階でいかに治すか》

4. 一番のお勧めは右図の足裏の青と緑の線で示す内側縦アーチに沿ったラインです。

腰痛があるとこのアーチの部分に反応が出ます

・左右の拇指を重ねていったん押し込んで、踵のほうに流します。

・病んでいるときは丸い小さなかたまり、また平板状の硬さ、引っかかりを感じます。軽く押さえても痛いはずです。その状況がなくなるまで、また痛みが止まるまで柔らかくそして長めに(15秒ぐらい)押します。数分、繰り返して行うと痛みが和らぐはずです。

・腰に重だるい痛みがある場合は、アーチのある部分に小さなかたまりを感じます。そのかたまりが柔らかくなるまで軽く押し揉んでください。10分程度かかる場合もあります。

・軽症のヘルニアの場合でも、予防的な目的で毎日施術すると症状が軽減、またはなくなります。

 

・内側からの画像も添付します。

 頸椎・・・親指の基節全体(~中足指節関節まで)

 胸椎・・・第一中足骨内側(~リスフラン関節まで)

 腰椎・・・第一楔状骨から舟状骨まで

 仙骨・・・舟状骨の端から距骨まで 

《再発してしまったら、いかに治すか》

5. 足のツボを使います。

①右図「崑崙」 (足の外踝の後方)

指頭で押すとひも状のぐりぐりとしたものに触れます。人差し指または中指で下方に圧力をかけ、外踝のほうに滑らせるように動かします。

「申脈」 (外踝尖の直下、外踝下縁と踵骨の間の陥凹部)

外踝の直下指1本弱のくぼみに取ります。

「崑崙」と「申脈」の間も含めて3箇所圧痛点を狙ってお灸をするかピップエレキバンを貼ります。神経痛のような痛みが出てきたときによく効きます

 

②右図「太渓」 (内踝の後方、アキレス腱の前のくぼみ)

「崑崙」と「太渓」を挟むようにして押してもかまいません。

③右図「委中」 (膝窩横紋の正中)

「腰背の病は委中に求む」といわれる名穴です。膝を曲げてとることがコツです。中指を「委中」に当て、上方向に、初めは軽く押し、次第に強めます。

④上記の方法でも痛みが取れない場合、前項の内側縦アーチの線に沿って指先または爪をゆっくり深く入れ込み、その後筋肉を足裏の方に引きはがすように指または爪をずらします。最も強い刺激法になります。

 

6. 次は腰痛に効く定番の腰部のツボです。

①右図「腎兪」 (第二、第三腰椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

背中から触れる第十二肋骨の先端を結んだ線になります。

「志室」 (腎兪の傍、指2本)

「気海兪」(第三、第四腰椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「大腸兪」(第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指2本、腸骨の上端の高さ)   

腰眼」 (第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指4本強、腸骨の上端の高さ)

「関元兪」 (第五腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方指2本)

加齢とともに「大腸兪」、「腰眼」の周囲に鈍痛が生じます。特に「腰眼」は慢性の腰痛の特効ツボです。 

 

7. 次は大臀筋の萎縮、衰えによる腰痛への対処や、仙骨部の痛みがある場合の定番の臀部のツボです。この場合は上記の項番4の仙骨部に圧痛がでます。

①仙骨孔にあるツボを2箇所押します。臀裂(いわゆるおしりの割れ目)から指1本強横です。仙骨孔は神経の通り道であるため、やさしく押します

「上髎」 じょうりょう (仙骨部第一後仙骨孔)

第一後仙骨孔は次の「次髎」から擦上すると陥凹部を触れます。

「次髎」 (仙骨部第二後仙骨孔)

上後腸骨棘(じょうこうちょうこつきょく)の内側斜め下に孔があり、押すとさしこむような痛みがあります。鼠径部中央の線の真後ろで臀裂から指1本強横に陥凹部があります。

 

②臀裂から指2本横を上から2箇所押します。

小腸兪 (第一後仙骨孔と同じ高さ、正中線の外方指2)

「上髎」と同じ高さです。

膀胱兪 (第二後仙骨孔と同じ高さ、正中線の外方指2本)

「次髎」と同じ高さです。

 

③臀裂から指4本横を上から4箇所押します。

次のようなツボがあります。

「胞肓」 ほうこう (臀部、第二後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方指4(次髎の外方指3))

「秩辺」 ちっぺん (第四後仙骨孔と同じ高さ、仙骨裂孔(仙骨の下端)の外方、指4本)

 

④臀部の応用範囲の広いツボを押します。 

「臀中」 でんちゅう (大転子から坐骨結節の線を底辺とした一辺で三角形を作り、その頂点)

上記の「秩辺」の下で少し外側の圧痛点に取ります。

「環跳」 (大腿骨大転子の頂点と仙骨裂孔を結ぶ線の大転子から1/3)

大転子から指4本内側の圧痛点に取ります。

「承扶」 (臀部、臀溝の中点)

 

⑤側臥位で施術します。

「坐骨神経点」 (上後腸骨棘と大転子を結んだ線の中点から指2本弱下)

近辺も含めて圧痛点を探ります。 

加えて、上の図のピンクの線に沿って押します。

 

《いかに最後まで治しきるか》

8. かなり良くなってきているものの、ある動きをした時、またある姿勢をした時に痛みが残っている場合があります。その場合の対処法です。治療後に残る動作時の痛みは、鍼灸では「経筋」の病といわれています。この場合、痛みのあるところを流れている経絡(ツボの経路)の熱を取るツボ「滎穴」、関節の痛みを取るツボ「兪穴」と呼ばれているツボが有効です。ピップエレキバンを貼るか、お灸(せんねん灸)をします。お灸をするとその熱さでツボの有効性がよくわかります。熱くない場合、そのツボが効いている証拠です。

①体幹後面を伸展したときに腰痛が出る場合です。足太陽膀胱経のツボを使います。

右図「足通谷」 (足外側、第五中足指節関節の遠位、赤白肉際)   

「束骨」 (足外側、第五中足指節関節の近位、赤白肉際)

 

②体幹前面を伸展したときに腰痛が出る場合です。足陽明胃経のツボを使います。

右図「内庭」 (足背、第二、第三足指間、みずかきの後縁、赤白肉際(第二、第三中足指節関節の前、外側陥凹部))

「陥谷」 (足背、第二、第三中足骨間、第二中足指節関節の近位陥凹部)

 

「内庭」、「陥谷」で効かない場合は次の「外内庭」、「外陥谷」を追加してください。篠原昭二先生が勧めているツボです。

「外内庭」 (足背、第三、第四足指間、みずかきの後縁、赤白肉際)

「外陥谷」 (足背、第三、第四中足骨間、第三中足指節関節の近位陥凹部) 

 

 

同じく、体幹前面を伸展したときに腰痛が出る場合です。足太陰脾経のツボを使います。

右図「大都」 (足内側、第一中足指節関節の遠位陥凹部、赤白肉際)

「太白」 (足内側、第一中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際) 

 

③体幹を側屈するか、回旋したときに腰痛が出る場合です。足少陽胆経のツボを使います。

上項右図「侠𧮾」 (足背、第四、第五足指間、みずかきの近位、赤白肉際) 

「足臨泣」 (第四、第五中足骨接合部の前、足の薬指と小指の間を押し上げて止まるところ)

同じく体幹を側屈するか、回旋(ひねる)したときに腰痛が出る場合です。足厥陰肝経のツボを使います。

右図「行間」 (足背、第一、第二足指間、みずかきの近位、赤白肉際)   

「太衝」 (第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)