尿失禁

加齢とともに出てきて、軽失禁とも呼ばれるこの症状は切実です。

軽症の段階で改善するツボです。重症の場合は、医者にかかる必要があります。

尿失禁は最終的に膀胱で正常に尿を溜めることができなくなってしまう状態(膀胱失約と言います)ですが、東洋医学経絡の観点からみると、腎経膀胱脾経肺経の虚と考えます。腎は水液を主る機能を持ち、膀胱の機能は貯尿と排尿です。脾は肌肉(細胞と解釈してください)を司る機能を持ち、その衰えは内臓やそれを支える筋肉の下垂を引き起こすとしています。肺は水液を全身に運び、調節をする機能を持つと定義されています。

 

本ページでは、泌尿器系の反射区及び腎、膀胱に焦点を絞り、尿失禁に著効のあるツボを選んでいきます。

 

1. まず、泌尿器系の反射区、腎経のツボです。

①右図「湧泉」 (足の五指を屈し足底中央の最も隅なるところ)

「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)

「腎臓」の反射区 (足裏中央付近のへこんだあたり)

「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)

「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)

これらは頻尿でも使うツボ、反射区で、軽い症状の場合はこれだけで改善されるはずです。

 

②右図「然谷」 (内踝の前、舟状骨結節(黒い点線の丸)の下の陥中にとる)

内踝の斜め前下に丸い骨があり、その下の前のほうの端にとります。足の母指内側第一中足指節関節の後陥中から踵に向かいほぼ指3本強のところにあります。

2. 次に泌尿器系トラブルの代表的な必須穴です。

①右図「曲骨」 (下腹部、前正中線上、恥骨結合上縁)

「横骨」 (曲骨の隣)

さらに「横骨」の隣も押します。

「気衝」 (鼠径部、恥骨結合上縁と同じ高さで、前正中線の外方指3本)

曲骨の外方指3本になります。

 

②右図「関元」 (臍の中心から真下に指4本)

「丹田」とも呼ばれ、応用範囲の広いツボです。

骨盤の中心に向けて押し込み、斜め下に流します。

「中極」 (「関元」より親指幅1本下)

この二つのツボは頻尿でも使う名穴です。正確には臍から恥骨結合上縁を5等分し、「関元」は上から3/5、「中極」は4/5に取ります。

 

《豆知識》

尿失禁は5つに分類できます。

・腹圧性尿失禁…咳やくしゃみなどの反動等おなかに力を入ったときに尿が漏れてしまう

・切迫性尿失禁…急に強い尿意を感じてトイレに行くまでに我慢できずに漏らしてしまう。過活動膀胱の症状の一つ

・混合性尿失禁…以上の2種の症状をあわせもつ

・溢流(いつりゅうせい)性尿失禁…排尿時にしっかり尿を出すことができず、残った尿(残尿)が少しずつだらだらと漏れ出してしまう

・機能性尿失禁…運動機能や認知機能の低下によって正常な排泄行為ができないときに起こる

 

3. 軽症の腹圧性尿失禁を改善するために次の方法で外尿道括約筋や骨盤底筋群を鍛えます。

・仰向けに寝て、軽く足を広げて膝を立てます。腰は落としておきます。骨盤底筋が弱まっている状態だと、腹圧がかかり支えきれないため、この場合は腰を上げません。

・腰を上げても体勢を支えることができる方は、仰向けに寝て、軽く足を広げて膝を立てます。足裏同士を合わせる方法もあります。より強度が増します。

・次に肛門や尿道をしめながら、骨盤底筋を上に引き上げます。骨盤内の臓器を上に持ち上げることをイメージします。その際、息を口から細く吐きながら上記項番2のツボを5~10秒間長めに押していきます。そして緩めます。これを3~5回繰り返します。

 

4.軽症の切迫性尿失禁を改善するために「膀胱」を訓練(機能回復)します。排尿習慣を見直し、膀胱の中にたくさんの尿をためることができるようにすることが目的です。

 

読者の皆さんは昼間、夜間それぞれ排尿のため何回トイレに行っていますか?

 

医学本には昼間8回以上、夜間1回以上が頻尿と書かれています。ドクターによっては昼間11回以上、夜間3回以上を頻尿としている方もいます。いずれの数値を目標にするにしても、私が強調したいのは「勢いのある、気持ちの良い、自然に出る排尿」です。

そのために、

・ためて出すこと←排尿間隔を守ること:2時間(日中8回ペース)~4時間(日中4回ペース)→排尿間隔が短いと、排尿までの時間がかかる、勢いがない、途中で止まってしまう、残尿感があるといった症状が出やすい。

・トイレに行きたくなってもすぐには行かず、少しだけ我慢をする。最初は5分がまんをするところから始める。無理なくがまんができるようなら、さらに10分、15分と少しずつがまんする時間を延ばす。

・立って前かがみの姿勢を取らない。

・「今のうちに」、「念のため」、「とりあえず」トイレに行く⇒こういう出し方をしない。

・出すことを意図しないこと→自然に任せる、出すのは自律神経の役割→運動神経の役割ではない。

・自然に出るままに任せる。

・顔の力を抜く。