パーキンソン病の運動法

本ページは運動機能の改善や活性化、平衡機能の改善のための日常的に行う運動法を紹介します。

パーキンソン病の患者に直接タッチしている理学療法士の方の著書にもありますが、パーキンソン病の方の悪循環のパターンは、「動作が小さくゆっくりになる→それに気づかない→筋力や体力が低下する→動きにくくなる→さらに動作が小さくなる」です。これには、下半身や体幹を強化し、バランス感覚を養う運動法が日常的に必要になります。

 

《スワイショウ》

1. まず、最初のお勧めは中国に古くから伝わる気功法「スワイショウ(甩手)」です。いくつかやり方ありますが、ここでは4つ記述します。それぞれの方法につき1~2分程度、1日1~2回行ってください。4つまとめてやると4~8分です。毎日の実施をぜひ勧めます。

①前後に腕を振る方法です。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手を前後に腕や肩の力は抜いて振ります。前に上がった時は胸の高さぐらいまで、後ろは前に持ち上げられた腕の重力の反動にまかせます。

 

横に腕を振る方法です。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手を横に、腕や肩の力を抜いて振ります。

 

③左右の肩の線や上腹部を横にねじります。できるだけウエストのひねりは抑え、胸部や上腹部を横に向けることを意識します。これが次項のでんでん太鼓のようなねじりとの大きな違いです。

・腕は横に振りますが、体の前、後に振り分けます。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手は肩の位置に横に伸ばしておきます。どちらでも良いですが、仮に右腕を体の前でふるとしたらとしたら、左手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を左横に向けます。

・次に両手は肩の位置に横に伸ばす姿勢に戻します。今度は左腕を体の前でふり、右手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を右横に向けます。

・これを繰り返します。

 

④でんでん太鼓のように、ねじりを入れ回転します。ウエスト及び下腹部を横に向けることを意識します。

・立った姿勢で、足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・腕の力を抜いて、腕を垂らしたまま、頭頂から背骨、尾骨の縦の線を軸にして、ウエストをひねって回転運動をします。ウエスト、下腹部を横に向けます。足の床への接着面はそのままです。

・腕と肩の力を十分に抜き、腕は体に巻きつくようにまかせる感じです。勢いをつけて回さないでください。

・首もあわせて回しますが、めまい防止のため回しすぎないでください。

・首は正面を向いたまま、回さない方法もあります。片頭痛の予防の場合は、顔は正面を向いたまま、首を回しません。これは重要なポイントです。

・猫背で首が前に出る姿勢の方は首を前向きに固定したまま、腰をひねる方法を勧めます。

・左右に巻きつくとき口からふっと息を吐きます。吸うときは自然に任せます。但し、無理をする必要はありません。自然に任せてください。 

 

《片足立ち》

2. 骨粗鬆症や転倒による骨折防止に有効です。昭和大学の阪本桂造先生によると1分間の片足立ちの負荷は53分の歩行に匹敵するそうです。下肢筋力だけではなく、脳のトレーニング効果もあると言われています。

転倒防止のため、壁に手をついてください

・バランスをとるとき、足の指を意識してください。

・腰の左右に手を当ててください。 

・左右それぞれ1分ずつ、出来れば2分ずつ、1日1~3回行ってください。

 

 

 

《大腿四頭筋を鍛える》

3. 大腿四頭筋を鍛えます。

・座ったまま、片方の膝をまっすぐ伸ばします。伸ばした後、足首をそらします。

・この動作を片方ずつ繰り返します。10回行います。

・足を広げて、片方の足を斜め方向に伸ばすと、大腿四頭筋の内側広筋に効きます。

 

《腸腰筋を鍛える》

4. 歩幅が短くなることを防ぎます

・椅子に座り、右図のように膝を胸に近づけます。これを5~10回程度繰り返します。

・足の付け根、前面にある縦に長い筋肉に効いていれば正解です。 

 

《軽いスクワット》

5. 余力があれば、次の軽いスクワットを行ってください。下半身、腹筋に効きます。

・スクワットと同じ効果を狙います。毎回椅子に座りますので、スクワットの正しい姿勢が自然にでき、膝の故障を避けることができます。

・腕を胸の前で組みます。

・立ち上がる前に、いったん体を後ろに倒し、背中を背もたれにつけます。この姿勢から立ち上がることで腹筋を鍛えます。

・5カウントでゆっくり立ち上がります。

・8カウントでゆっくり座ります。お尻を後ろに突き出すイメージで座ります。できるだけ、座る直前でこらえます。

・この一連の動作を5~10回繰り返します。 

 

《嚥下をするときの筋肉強化》

6. 嚥下をするときの筋力を鍛えるお勧めの体操です。福岡のみらいクリニック院長で内科医・東洋医学会漢方専門医の今井一彰先生が提唱する口呼吸を鼻呼吸に改善していく口の体操「あいうべ体操」です。簡単ですが、いろいろな動作が含まれています。

先生のサイトでは次のように説明しています。

(1) 「あー」と口を大きく開く

(2) 「いー」と口を大きく横に広げる

(3) 「うー」と口を強く前に突き出す

(4) 「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす

(1)~(4)を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けます。

 

(参考文献)

・小川順也(2021)『パーキンソン病と診断されたら最初に読む運動の本』 日東書院本社. 

・服部信孝(2019)『順天堂大学が教えるパーキンソン病の自宅療法』主婦の友社.