1. はじめに
糖尿病(特にタイプ2)は、インスリンの分泌が不足する、またはインスリンの血糖を下げる作用が弱くなっていることで血糖が高くなる病気です。
境界型の段階であれば、 生活習慣の改善と体の働きを整えることで、元の状態に戻せる可能性があります。
ただし、血糖が高い状態が続くと、 AGE(終末糖化産物)という物質が体に蓄積し、神経・腎臓・目などの合併症の原因になります。
このページでは、 東洋医学(脾・肝・腎の調整)と西洋医学(代謝・インスリン感受性)の両面から、 糖尿病改善に役立つツボ・反射区・気功・運動をまとめています。
2. 糖尿病改善の「4本柱」
まずは全体像をつかんでください。糖尿病は「血糖を上げる力」と「下げる力」のバランスが崩れた状態であり、この4本柱はその両方を整えるための最短ルートです。
① 食事(糖質管理)
• 糖質のとり過ぎを避ける
• 食後高血糖を抑える
• 腸内環境を整える
② 運動(有酸素+下半身筋トレ)
• 週150分の有酸素運動(やや強め)
• 下半身の筋トレ(特に踵落とし)
③ 東洋医学的アプローチ(脾・肝・腎の調整)
• 足の反射区
• 中脘・章門・期門などのツボ
• 按腹(お腹のマッサージ)
• 気功(撼天柱)
④ 合併症予防(神経・腎・眼)
• 指先・足先の神経
• 腎機能
• 眼の血流改善
3. 糖尿病を東西医学から理解する
3-1. 西洋医学の視点
糖尿病の背景には次のような問題があります。
• 膵臓β細胞の疲弊 → インスリン不足
• 肝臓のインスリン抵抗性 → 血糖が下がりにくい
• 腸内環境の悪化 → 慢性炎症・代謝低下
• AGEの蓄積 → 合併症の原因
特にAGEは 「血糖値 × 高い状態が続いた時間」 で増え、一度できると長く残ります。
3-2. 東洋医学の視点
東洋医学では、糖代謝に関わる臓腑として 脾・肝・腎を重視します。
● 脾(消化吸収・運化)
• 消化吸収のエンジン(エネルギーを作る)
• 食べ物を消化し、気血を作る
• 脾が弱ると代謝が落ちる
● 肝(疏泄(:気の流れを整える)・自律神経(のバランスを整える))
• 代謝と自律神経の司令塔(エネルギーを使う)
• 気の巡りを整える
• ストレスで肝が乱れる → 自律神経が乱れる → インスリンの効きが悪くなる
● 腎(ホルモン・水分代謝)
• ホルモンと生命力の土台(エネルギーを支える)
• 代謝の土台
• 副腎の働きとも関係
● なぜ「肝の経絡に脾の募穴(章門)」があるのか
古代の人は、 脾の異常は肝の異常と連動することを経験的に理解していました。
現代医学でも 肝機能低下=インスリン抵抗性の増加が確認されており、東洋医学の考えと一致します。
4. 改善のための実践(脾・肝・腎の調整)
ここからは、実際に行う手法を紹介します。 「目的 → 効果 → 方法」の順でまとめています。
4-1. 足の反射区(脾・肝・胆・腎の強化)
● 目的
• 消化吸収の改善
• 肝臓の代謝向上
• インスリン感受性の改善
• 副腎の炎症抑制
● 主な反射区
右図「膵臓ゾーン」 (拇指球の3cmぐらい下のリスフラン関節上、斜線部分)
膵臓の働きを強化します。
「胃、十二指腸ゾーン」(足裏第一中足骨の基部)
消化吸収を正常化します。双方のゾーンとも指圧棒を使って押し揉みます。方向としては内側から外側に向けて押し込みます。
「肝臓ゾーン」 (右足裏にあり、第二中足骨より第五中足骨のほとんどをカバー)
このゾーンは右足のみです。外側に向けて押します。特に、薬指から4センチほど下に圧痛を感じると思いますので、念入りに押してください。
「胆嚢ゾーン」(右足の甲及び裏の第三、第四中足骨間隙の基部(足首に近い部分))
胆嚢反射区は右の足のみで、足の甲側、裏側双方にあり、特に甲側に圧痛が出ます。右足の第三指と第四指の指の股から5センチほど下になります。
胆汁酸は糖尿病に効果があるホルモン、インクレチンのGLP-1の分泌を促します。
「湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)
「副腎ゾーン」 (「腎臓ゾーン」の真上)
炎症を抑えます。
「腎臓ゾーン」 (「副腎」の下で第二、第三中足骨の近位端でリスフラン関節線の上)
「脳下垂体ゾーン」 (足の親指の腹の中央)
「甲状腺ゾーン」 (足の親指の付け根の下にある膨らんだ部分)
親指の付け根、親指と人差し指の間も押し揉んでください。
4-2. 按腹(腸内環境の改善)
腸内で発生する腐敗ガスや毒素は、 免疫システムを乱し、糖代謝にも悪影響を与えます。按腹は 腸の動きを整え、代謝を改善する基本手法です。「腎陽虚を改善する(按腹)」ページを参照してください。
この「按腹」ができない方は、次のツボを使ってください。
4-3. 脾を強化するツボ
お腹の定番のツボを使って、「脾」を強化します。
右図「中脘」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から臍までの線の中央)
臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る方法が分かりやすいと思います。少し前かがみの姿勢で押します。
「章門」(第十一肋骨尖端の下際)
肘関節を屈して肘尖の当たるところに圧痛を求めます。肘を90度に曲げ、さらに少しうしろに引いた方が第十一肋骨尖端に当たります。脾の募穴であり、脾の異常を現わす重要なツボです。
消化吸収を整え、脾の運化を助けます。
4-4. 「肝」を強化します。肝臓は糖代謝(糖新生と糖取り込み)に重要な役割を持っています。
右図「期門」
このツボの取り方は二通りあります。
a1 (第6肋間、前正中線の指幅5本外方(乳頭中央の下方)
WHO(世界保健機関)で定義されている位置で、「巨闕」(胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から指3本分下)というツボの指幅5本外方
a2 (第9肋軟骨付着部の下縁)
旧来定義されていた位置で、乳頭線上(正中線より指幅5本外方)で肋骨下縁(第9肋軟骨付着部にあたる)のやや内側のくぼみにとります。このくぼみはみぞおちから肋骨下縁を探っていくと2番目のくぼみになります。肝の募穴であり、肝の異常を現わす重要なつぼです。
糖尿病(境界型)の改善は、a1、a2の両方を押します。
さらに、右肋骨下縁(オレンジ色の位置)に少し深めに指を入れ、下にスライドします。
肝臓の代謝・インスリン感受性を高めます。
4-5 膵臓の養生
前項の図の左肋骨下縁(茶色の位置)に少し深めに指を入れ、下にスライドします。膵臓は体の中央〜やや左寄りに位置し、左肋骨下縁からのアプローチが最も効果的です。
4-6. 太もも内側(肝経・脾経)の押し揉み
右図太もも内側の肝と碑の経絡を押し揉みます。
4-7 高麗手指鍼の手法より「肝臓」、「膵臓」を爪で揉みます。
(本項の参考文献)
・滝村修(2014)『指ヨガで健康になる』河出書房新社.
5. 合併症の予防(神経・腎・眼)
5-1. 神経障害の予防
これらは糖尿病の改善のツボとしても勧めます。
右図「隠白」(足の母指内側、爪体の角を去ること2mm弱)
手の拇指の爪先で押します。
右図左側「小指尖」 (手の小指の先端)
右図右側「小趾尖」 (足の小指の先端)
双方とも爪で押し揉みます。
手軽にできる糖尿病改善法及び合併症予防のひとつです。手の各指を1本ずつ片方の手で握り、根元から先端に向けて、斜めの方向に回しながら押し揉んでいきます。各指5回ぐらい揉みます。一日何セット回行っても結構です。捏五指法という気功法です。
5-2. 自律神経の改善
右図の「腹腔神経叢」 (「湧泉」(足の五本の指を内側に曲げた時にできるくぼんだところ)というツボを中心に第一中足骨と第二中足骨の間から、第三中足骨と第四中足骨の間までの範囲)も押しもんでください。
太陽神経叢ともいいます。
5-3 腎症の予防
項番1の「湧泉」、「副腎」、「腎臓」が該当します。
5-4. 眼の合併症予防
3秒程度押し、1秒休み、これを2~3回程度繰り返します。このセットを一日数回行います。「晴明」と「承泣」は強く押さないでください。軽く抑える程度です。
右図「攅竹」 さんちく (眉毛内端の陥中)
親指か中指で上45度の方向に押し上げます。他の指は必ず支えに回してください。このツボの面白い効用としてしゃっくり止めがあります。
「下攅竹」 しもさんちく (「攅竹」の下の小さなくぼみ)
「上晴明」 かみせいめい (「下攅竹」の下の小さなくぼみ)
「陽白」 (前頭部眉毛中央より親指幅1本上)
眉間と前髪際間の下から1/3で、小さなくぼみがあります。
「魚腰」 ぎょよう (眉の中央部分の少しまぶたに下りた眼窩のきわ)
親指で上45度の方向に押し上げます。
「絲竹空」 しちくくう (眉毛外端の陥中)
小刻みに押します。
「瞳子髎」 どうしりょう (外眼角の外方指1本弱、骨が少し陥凹するところ)
「承泣」 しょうきゅう (眼窩下縁瞳子の直下6~7mm、縦に線上のものがある)
抑える程度です。
「晴明」 (顔面部、内眼角の内上方と眼下内側壁の間の陥凹部)
目頭より内側やや上(3~4mm)の鼻根部の小さなくぼみで、鼻に向かって抑える程度です。
右図「太陽」 (目じりから髪の生え際に向かう間にあるこめかみの大きなくぼみ)
老眼予防にも効果のあるツボです。「眼医者ごろし」という異名があるぐらいの名穴です。まゆ尻と目尻の中央から、やや後ろにあり、正確にはこめかみからやや目尻寄りにあります。
「和髎」 わりょう (もみあげの後方、耳介の付け根の前方)
「太陽」、「和髎」とも押した後、目がすっきりします。
6. 食欲コントロール(耳ツボ)
食事の10~15分ぐらい前に、2~3分押し続けます。
右図「飢点」 (耳珠の前のやや下) 一番のお勧めのツボです。
「やや下」 の目安は、耳珠の中心を通る水平線と耳の穴の下にある切れ込みの水平線の間を3等分し、上の1/3の中心としてください。食欲を抑えます。「飢点」には二つ説があります。その1は「外鼻」(耳珠の膨らみの中央よりやや頬によったところ)、その2は耳珠の前のやや下です。本サイトでは後者を採用しています。依存症治療の代表的なツボです。と言っても、1~2mmしか離れていません。
7. 気功:撼天柱(かんてんちゅう)
気功家中健次郎先生が推奨している簡単で効果が高い気功法です。
・床に座る(あぐら)か、椅子に座ります。腰が痛い方は正座か椅子にしてください。
・背中の正中線上で、おへその後ろ側に「命門」というツボがありますが、このツボを大きく回すことを意識して、背骨を回します。
・左に9周、右に9周回します。
・横~後ろに回すときに吐き、後~横~前に回すときに吸います。
注意点は次の通りです。
・力を抜いて行ってください。
・急に終わらず、静けさを保ってください。
・食後一時間くらいは避けてください。
8. 運動療法(必須)
有酸素運動及び下半身の筋トレは必須です。下半身の筋トレとして、特に「つま先立ちをし、踵を床に100回打ちつける」運動を勧めます。つま先立ちが困難な方は、枕元に木槌を置いておき、寝る前と朝起きたときに左右の足の踵中央の「失眠」というツボを木槌で少し強めに100回毎日叩いてください。
9. 豆知識(読み物)
次の語句に興味がある方はお読みください。実践とは直接関係しません。
「AGE (終末糖化産物)」
「肝と脾の関係から読み解く糖尿病の東西医学的アプローチ」
「オステオカルシン」
《豆知識》………「AGE (終末糖化産物)」
・AGE(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)が糖尿病合併症の真犯人である。血液中の過剰なブトウ糖がタンパク質と結合することによって産出される。
・AGEは一度作られると、その後長く体内に残る。そのために、今血糖値が低く抑えられていても、過去に血糖値が高ければ20年後に合併症が出るということが起きる。
・一度糖尿病になった方はその糖尿病の記憶の一部分が「ほぼ一生つきまとう」ために「カラダの中に過去の高血糖とその期間が記憶されていて、治療を始めた後も糖尿合併症の進展が止まらない可能性」があることがわかってきた。
・体内でできるAGEの量は、「血糖値×持続時間」で表すことができる。血糖値が高いほど、体の中で糖とタンパク質が結びついて多くのAGEが発生する。そして糖にさらされる時間が5年、10年と長くなればなるほどAGEは溜まり続ける。
・血糖値を下げれば、糖尿病の合併症が減るわけではないという最初の研究が1970年に報告されている。
・血糖値を下げたからといって、全ての合併症が予防できるわけではなく、血糖値だけを指標にしていては糖尿病の治療はうまくいかない。コレステロールや血圧、禁煙、体重など多くの指標が重要である。
・AGEを減らす食材としては、ブロッコリースプラウト、マイタケ、ほうれん草、モロヘイヤ、カボチャ、小松菜、パプリカ、タマネギ、春菊、カテキンを含んだ緑茶やポリフェノールが挙げられる。
(豆知識の参考文献)
・牧田善二(2016)『日本人の9割が誤解している糖質制限』ベスト新書.
・伊賀瀬道也(2016)『「血管力革命」健康寿命を延ばす46の知恵』冬樹舎.
・AGE測定推進協会ホームページ『AGEとは』、 閲覧日 2019-10-01、http://www.age-sokutei.jp/about/
・名郷直樹(2017)『病気と薬ウソ・ホントの見分け方』さくら舎.
《豆知識》………肝と脾の関係から読み解く糖尿病の東西医学的アプローチ
●肝の経絡に「章門」という脾の募穴があり、脾の異常を現わす重要なつぼがあります。つまり、脾の異常は肝の経絡の異常と連動すると捉えました。「脾の異常を改善するには肝の異常も改善する必要がある」という考え方です。
募穴というのは六臓六腑に1つずつ、臓腑の異常を見る、臓腑の治療点、臓腑との結びつきが強いツボです。
なぜ、古代の人は肝の経絡に脾の墓穴を配置したのでしょう?
●東西医学の観点から糖代謝を見てみましょう。
① 膵臓(脾)の異常
• 西洋医学では、東洋医学の脾の異常は消化吸収・膵臓の機能低下を意味し、膵臓のβ細胞の疲弊(→機能が落ちる→インスリンが足りなくなる)やインスリン分泌の低下が糖尿病の直接的な原因とされる。
• 東洋医学では、脾の運化機能が落ちると「気血」が作れず、全身の代謝が落ちるとされる。
• 両者とも、「エネルギーをうまく作れない・使えない」状態を問題視している。
• なお、「運化機能」とは脾が担っている働きで、体の中で「飲食物を消化・吸収して、必要な栄養や水分を全身に運ぶ機能
② 肝の異常(=肝臓の代謝機能・インスリン感受性の低下)
•西洋医学では、肝臓は血糖の貯蔵・放出・糖新生の中枢であり、肝臓の異常は肝臓の代謝機能・インスリン感受性の低下であり、インスリン抵抗性が高まると、血糖が下がりにくくなる。
•東洋医学では、肝は「疏泄(そせつ)」=気の流れを整える役割。これが滞ると、脾の働きも落ちるとしている。
•ストレスや睡眠不足で肝の機能が乱れると、自律神経のバランスが崩れ、インスリンの効きも悪くなる。
•なお、「疏泄(そせつ)機能」とは
-気の流れを調整する → イライラしたり、ストレスがたまることが無いよう、気がスーッと流れて、心も体も軽やかになる。
-消化を助ける → 胃腸の動きにも関わってて、食べ物の消化・吸収・排泄をスムーズにする。
-感情の調整 → 肝は「怒り」と関係が深くて、疏泄がうまくいかないとイライラしたり、気分が落ち込んだりしやすくなる。
●古代の人は上記東洋医学の観点で、経験的に肝と脾の関係を把握したのだと推測します。
《豆知識》………オステオカルシン
・健康な骨からはオステオカルシンというホルモンが分泌される。オステオカルシンは、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を高める。骨粗鬆症の方は、オステオカルシンの分泌が減って、インスリンの分泌も減ってしまい、血糖も上がる。
(豆知識の参考文献)
・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.