リンパを流す(部位別)

リンパを流す(足の反射区)」ページでは足の反射区を利用して全身のリンパを流すという手法を紹介しました。本ページ「リンパを流す(部位別)」は各リンパ節近くのツボを使ってリンパの流れを促進する方法を紹介します。

考え方は次の通りです。

リンパ液は血液のようにポンプで体内を流れるのではなく、主に骨格筋の収縮によって流れます従って、運動不足やコリなどで筋肉の動きが悪くなることはリンパの流れを妨げます本ページは各リンパ節近くの主要なツボに働きかけ、その筋肉のコリや緊張を取り除くという考え方です

 

1. 鎖骨下リンパ本管

いずれのツボも中指で軽く押圧してください。

右図「欠盆」 けつぼん (乳頭線上(前正中線の外方指5本(鎖骨の中央))で鎖骨上方の陥凹部)

陥凹部の中心を、指を小さめに回して探ってください。

「気戸」 きこ (前胸部、前正中線の外方指5本、鎖骨下縁の陥凹部)

鎖骨の真ん中で鎖骨の下縁にあるくぼみの中の圧痛点に取ります。 

「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下) 

肋骨に沿って体の奥深く指を入れ込み、ゆっくりと押します。上肢の内側に響きます。 

 

「欠盆」は経絡の観点から見ても重要なツボで、緊張を取っておく必要があります。(豆知識参照)

 

《豆知識》

「欠盆」は胃の経絡(胃経)の穴であるが、大腸経、小腸経、三焦経、胆経等も通っており、古書に「五臓六腑の道と為す」とある所以である。

・胃経は目の下から始まり、頬部(、口、頭部)を経て、欠盆を通る。

・経絡に足の陽明経筋というのがあるが、その病症の一つに「欠盆と頬部が引っ張られる」とある。(注:経筋とは関節や筋肉を主体とした運動器系愁訴に対応する経絡)

・つまり、「欠盆」は多様な臓腑病に効果があるだけでなく、顔(特に頬部)の緊張も取る

 

(豆知識の参照文献)

・代田文誌(1978)『針灸治療基礎学』医道の日本社.

・入江正(1982)『経別・経筋・奇経療法』医道の日本社.

・南京中医学院(1976)『中国漢方医学概論』中国漢方.

 

 

2. 後頭リンパ節

右図「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)

体の正中線より指3本弱外側に位置します。

「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)

「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。

「風池」、「天柱」ともに首を後ろに倒し、首の重みを利用して押したほうが効きます。 

 

右図「完骨」 (乳様突起下端より後上方指1本弱(骨がくぼんだところ)または乳様突起下端より後下方、陥凹部) 

3. 頸リンパ節

胸鎖乳突筋の後の縁のツボをマッサージします。お勧めの方法です。

顔を横に向け胸鎖乳突筋を浮き出させた状態で、胸鎖乳突筋の後ろ側の縁を下から上の方へ順に指の腹で軽く回しながら押し揉んでください。3回程度行ってください。コリがある場合は痛みますが、すこし手加減しながら行ってください。

 

4. 顎下リンパ節

右図「頬車」 (下顎角の指1本前上方)  

「大迎」 (下顎角の前方指2本半弱の陥凹部、動脈手に応じるところ) 

5. 耳下腺リンパ節

右図「下関」 (頬骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部)  

耳珠の下の方の前に下顎骨関節突起が触れ、さらにその前の陥凹部にとります。口を開けると下顎骨関節突起が前に移動して陥凹部が持ち上がります。 

「翳風」 えいふう (耳垂後方、乳様突起下端前方の陥凹部)  

耳たぶの後ろにあり、口を開けば陥凹部が現れます。口を軽く開けた状態で押します。

 

6. 腋下リンパ節

極泉 (腋窩中央、腋窩動脈拍動部)

拍動部にこだわらず、数カ所を押してください。 

②右図「肩貞」 (肩関節の後下方、腋下横紋後端の上方親指幅1本)

腋窩横紋端も含めて近辺も押してください。腋窩横紋端には「後腋下(ごえきか)」というツボがあります。

7. 肘リンパ節

右図「尺沢」 (肘前部、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部)  

「曲沢」 (肘前部、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱の尺側の陥凹部)

8. 腹部のリンパ節~乳糜槽~胸管

人差し指、中指、薬指の3本の指を揃えて、中指をメインに軽く押さえます。このエリアは下腹部のツボから上腹部のツボへと行います

 

右図「巨闕」 こけつ (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から指3本分下)

胸骨体下端は、みぞおち下から上方にさすると出っ張り(剣状突起)があり、その上のくぼみになります。 

「中脘」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から臍までの線の中央) 

臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る方法が分かりやすいと思います。

「期門」

このツボの取り方は二通りありますが、本ページでは後者を取ります。

①第6肋間、前正中線の指幅5本外方

WHO(世界保健機関)で定義されている位置で、乳頭中央の下方で上記「巨闕」の指幅5本外方

②第9肋軟骨付着部の下縁 

旧来定義されていた位置で、乳頭線上(正中線より指幅5本外方)で肋骨下縁(第9肋軟骨付着部にあたる)のやや内側のくぼみにとります。このくぼみはみぞおちから肋骨下縁を探っていくと2番目のくぼみになります。 

「天枢」 (臍の両傍指2本半~3本)

「大横」 (臍の両傍指3本+3本、乳頭線上(乳首から真下の線)) 

「大巨」 だいこ (天枢穴の下指3本)

「気海」 (臍の中心から真下に指2本) 

「関元」 (臍の中心から真下に指4本) 

正確には臍から恥骨結合上縁を5等分し、上から3/5に取ります。「丹田」とも呼ばれ、泌尿生殖器、婦人科の症候群に効く名穴で、応用範囲の広いツボです。

「中極」 (「関元」より親指幅1本下)

正確には臍から恥骨結合上縁を5等分し、上から4/5に取ります。「中極」の横も含めて3本の指で押します。

 

《豆知識》

(1) 下肢のリンパをうまく流すには、

下肢のリンパ液を腹部の乳糜槽に流し込むこと

乳糜槽のリンパ液を左静脈角に流し込むこと

 

①を効果的に行うためには、完全にフルフラットの状態か、足先を少し上げた状態で横になること、最低でも6~8時間の睡眠を取ることが重要である。リンパの流れはきわめて遅いのでこれぐらいの睡眠時間は必要である。

②に有効なのが、「リンパ呼吸」である。仰向けで横になった状態で下腹部に手を置いて腹圧をかけ、ゆっくりと息を吐き出す深呼吸(腹式呼吸)を行う。

食事で摂取した脂肪分や、脂肪と結合した物質は全て腹部のリンパ液に流れ込み、乳糜槽にためられる。乳糜槽をリンパ呼吸で圧迫して下肢や腹部のリンパ液を胸管に流すのは、食後2~3時間が最も有効である。人が深い眠りにあるとき、自然に腹式呼吸になり、リンパ呼吸を行っている。

 

(2) リンパ呼吸のやり方

①仰向けになる(枕は使わないか、低い物にする)

②臍の下方に両手を重ねておく

③ゆっくり深く息を吸いながら、お腹をふくらませる

(臍の下方に当てた手でふくらむのを確認するとよい)

④いっぱいに吸った後、ゆっくり口から息を吐きながら、お腹をへこませる

(臍の下方に当てた手でへこむのを手助けするとよい)

 

③と④を交互に1分間に2~3回、これを30分ほど続ける。10~20分でもよい

 

(豆知識の参考文献)

・大橋俊夫ほか(2016)『生きているしくみがわかる生理学』医学書院.Page75~76

 

 

9. 鼠径リンパ節

右図「衝門」 (鼠径部、鼠径溝、大腿動脈拍動部の外方で恥骨結合上縁と同じ高さ)

人差し指、中指、薬指の3本の指を揃えて、中指をメインに軽く押さえます。

10. 膝窩リンパ節

右図「委中」 (膝窩横紋の正中)