脊柱管狭窄症

次の2つの観点から腰部脊柱管狭窄症の対処をします。

①腰部脊柱管狭窄症の痛みやしびれを取るために足の薬指から脚の外側、腰にかけて胆経という経絡を使います。

臀部の血流を良くし、養生をします

 

《痛みやしびれを取る》

1. 足の薬指の指節骨、中足骨骨間にしっかり手当をしてください。

①薬指を足先且つ外側に向けて揉みながら伸ばしてください

 

②次のツボを押し揉んでください。且つツボを結ぶ線の中足骨間を広げるように押し揉んでください。 

「侠𧮾」 きょうけい (足背、第四、第五指間、みずかきの近位、赤白肉際)

「足臨泣」 (第四、第五中足骨底接合部の前、足の薬指と小指の間を押し上げて止まるところ)

 

2. 脚の外側のツボ及び経絡を押し揉んでください。

①「環跳」 (大腿骨大転子の頂点と仙骨裂孔を結ぶ線の大転子から1/3)

大転子から指4本後方の圧痛点に取ります。坐骨神経痛、股関節痛にも必須で、腰部と臀部を強くするツボです。

「居髎」 きょりょう (臀部、上前腸骨棘と大転子の頂点の中点)

上前腸骨棘は手を腰に当てたときの人差し指に当たるでっぱりです。股関節痛には必須のツボです。

「風市」 (大腿部外側、直立して腕を下垂し、手掌を大腿部につけたとき、中指の先端が当たる腸脛靱帯の後方部、圧痛点にとる)

大腿部の外側は相当痛いので、軽く押しながら圧痛点を探ります。

「陽陵泉」 (腓骨小頭(膝の外側、斜め下の小さな骨)の前下際)

古来、「筋会」と呼ばれ、筋の病に使います。

「陽交」 (下腿外側、腓骨の方、外踝の頂点と膝下横紋外側とを結ぶ線上の中点から指1本強下方)

「外丘」 (下腿外側、腓骨の方、外踝の頂点と膝下横紋外側とを結ぶ線上の中点から指1本強下方、陽光の前) 

「光明」 (外踝の上、指4本+3本弱且つ腓骨の前方)

「陽輔」 ようほ (外踝の上、指5本(片手)且つ5mm前方で腓骨の前のくぼみ)

このツボは腓骨の前縁になりますが、腓骨上も押して圧痛のある方を取ってください。

「懸鐘」 けんしょう (外踝の上指4本、腓骨前縁に取る) 

古来、骨髄の精気が集まるツボとして有名です。腓骨後縁も押して圧痛のある方を取ってください。  

 

②上記「風市」から下の経絡(腸脛靭帯)に指を当て、後方にスライドしてください

上記「外丘」から下の経絡(腓骨)に指を当て、後方及び前方にスライドしてください

双方とも上の図の緑色の線になります。

 

3. 次に踵全体、外踝の下、腓骨に沿った線が対象です。

右図「骨盤部ゾーン」 (外側の踵の大部分)

斜線部分全体を揉んでください。特に外踝の下、斜め下をしっかり施術してください。痛いですが…。 手法としては、踝の際(赤丸)に親指の先を入れ、斜め下の方に引きはがします。または、近辺も含めて3カ所ぐらいピップエレキバンを貼ります。よく効きます。

右図「大腿部(外側)ゾーン」 (腓骨上)

腓骨上の圧痛点を探り、お灸をするかピップエレキバンを貼ります。

 

  

《臀部の血流を良くし、養生をする》

4. 仙骨、臀筋のツボに働きかけます。

①仙骨孔にあるツボを2箇所押します。臀裂(いわゆるおしりの割れ目)から指1本強横です。仙骨孔は神経の通り道であるため、やさしく押します

「上髎」 じょうりょう (仙骨部第一後仙骨孔)

第一後仙骨孔は次の「次髎」から擦上すると陥凹部を触れます。

「次髎」 (仙骨部第二後仙骨孔)

上後腸骨棘(じょうこうちょうこつきょく)の内側斜め下に孔があり、押すとさしこむような痛みがあります。鼠径部中央の線の真後ろで臀裂から指1本強横に陥凹部があります。

 

②臀裂から指2本横を上から2箇所押します。

小腸兪 (第一後仙骨孔と同じ高さ、正中線の外方指2)

「上髎」と同じ高さです。

膀胱兪 (第二後仙骨孔と同じ高さ、正中線の外方指2本)

「次髎」と同じ高さです。

 

③臀裂から指4本横を上から4箇所押します。

次のようなツボがあります。

「胞肓」 ほうこう (臀部、第二後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方指4(次髎の外方指3))

「秩辺」 ちっぺん (第四後仙骨孔と同じ高さ、仙骨裂孔(仙骨の下端)の外方、指4本)

 

④臀部の応用範囲の広いツボを押します。 

「臀中」 でんちゅう (大転子から坐骨結節の線を底辺とした一辺で三角形を作り、その頂点)

上記の「秩辺」の下で少し外側の圧痛点に取ります。

「環跳」 (大腿骨大転子の頂点と仙骨裂孔を結ぶ線の大転子から1/3)

大転子から指4本内側の圧痛点に取ります。

「承扶」 (臀部、殿溝の中点)

 

⑤側臥位で施術します。

「坐骨神経点」 (上後腸骨棘と大転子を結んだ線の中点から指2本弱下)

近辺も含めて圧痛点を探ります。 

加えて、上の図のピンクの線に沿って押します。 

 

この項番のツボを自分で施術する場合は、ボールを使います。ボールはバウンドボール、テニスボール、ソフトボールどれでも結構です。床の上にボールを置き、おしりをその上に置き体重を乗せます。

 

 

《豆知識》

男性ホルモン、すなわちタンパク質合成ホルモン(テストステロン)の分泌量が低下してくると、太ももだけでなく、体全体の筋肉が萎縮してきます。なかでも、目に見えないながら重大な影響を及ぼすのが、骨盤内の筋肉です。この筋肉は、排便のときに下腹部に力を入れたり、背筋をのばして腰を支えるときなどに重要な役割を果たしています。また、臀部を支えるお尻の筋肉も著しく衰えます。

そのため、60歳を過ぎた男性は、便秘になったり、脊柱管が狭くなって神経を圧迫したり(脊柱管狭窄症)、脊髄から飛び出た椎間板が脊髄を圧迫したり(座骨神経痛)するなど、さまざまな原因で腰痛が起こりやすくなるのです。

 

(豆知識の参考文献)

・大橋俊夫ほか(2016)『生きているしくみがわかる生理学』医学書院.

 

次のような考え方も参考にしてください。(和歌山市内で整形外科の開業医をしていらっしゃる坂井先生の著書より)

 

《豆知識》

患者さんが訴える痛みやしびれは、本当に「脊柱管が狭くなっている」という、検査画像に写し出される「かたち」の異常が原因なのでしょうか。

 

脊柱管狭窄症の最も特徴的な症状は、間欠性跛行です。これは歩いていると足腰に痛みやしびれが出て、しゃがんで休むと症状が和らぎ、また歩ける症状です。

背中側の黄色靱帯が脊柱管の中へ張り出し、脊柱管を狭くして馬尾神経を圧迫していると考えると、しゃがんで腰を丸めたら症状がやわらぐというのは納得できます。

黄色靱帯は、背中を反らすとさらに縮まって前に飛び出し、脊柱管を狭くするのに対し、背中を丸めると黄色靱帯が伸びて、一時的に神経の圧迫が緩むからです。

 

逆に言えば、背中を丸めたからといって、決して楽にはならない場合は脊柱管狭窄症ではなく、閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行と考えられます。

 

それでも「かたち」の異常が痛みの主な原因ではない、と私が考えている理由は脊柱管狭窄症と診断された患者さんの症状の出かたに、大きな矛盾があるからです。

日によって、時間帯によって、痛みの有無や、その強さが違うというのです。

「かたち」が変わらないのに、症状は一定でない。いろいろに変わるというのはおかしな話だとは思いませんか?

 

体は細胞どうしが連携をとりながら、自律神経やホルモンなどによって、ひとつの統合体として調整し、生命活動を維持しています。

要は、一つひとつの細胞がきちんと生存していること、そしてそれらが調和の取れた状態で働いていることが、私たちが元気に生きていられる基本的な条件なのです。

逆に考えると、不調は細胞のダメージと捉えることが出来ます。

脊柱管狭窄症の場合は、お尻や足の筋肉の細胞がダメージを受けているということです。

 

痛みなどの不調が起こる原因は、細胞のダメージです。

痛みとは、体の治癒反応のひとつとして起こっている「炎症」という現象によるものです。

自然治癒力を活用できるようにする方が、細胞の修復はスムーズに進みます。

さらに、待つだけではなく細胞の修復を手助けしてあげれば、痛みはより早く消えていきます。

つまり、血液循環を高めてやればいいのです。

具体的には、温めることです。

 

(豆知識の参考文献)

・坂井学(2019)『「脊柱管狭窄症」を自分で治す本』マキノ出版.