脾機能向上

脾の機能を向上させる定番の反射区とツボです。

 

東洋医学では、臓器という観点から見ると胃、膵臓、十二指腸あたりを脾と称しています。あたりと書いたのはその機能はこれらの臓器の機能だけにとどまらないからです。

 

脾には次のような働きがあるとしています。

・「運化をつかさどる→食べ物の輸送、消化、吸収、栄養物の供給」

・「昇清をつかさどる→栄養物を人体の上部に持ち上げる、内臓下垂の防止」

・「統血する→血が血管の外に漏れ出すのを防ぐ」

・「生血=栄養物から血を生化する→血液の中に栄養物を構成要素にするという意味」

・「思い悩み、考えすぎによる落ち込み、沈み込み⇔脾の特徴」

・「肌肉、四肢を維持し、支える

 

本ページは次のような症状の改善を狙います。元はといえば、体質、生活習慣から出てくる症状です。

 

腹部膨満、もたれ、食欲不振、軟便

内臓下垂(注4)、めまい/ふらつき(←体の上部まで栄養がまわらない)

血虚(注1)、貧血

必要以上に思い悩む、くよくよする、結論が出ないことにあれこれ考える

四肢無力、やせ

生まれつき消化器系弱い気虚・痰湿(注2)になりやすい→これに冷えが加わると肺に影響→皮膚に影響→ジクジクした湿疹ができやすい

イライラ、怒りが肝の働きを乱し、脾に悪影響を与える(注3)。例えば、脾の陽気の過剰(偽性:本当は過剰ではない)に見えてしまう→食べ過ぎを消化できる許容量はないのに食べてしまい、脾胃に負担がかかる→脾胃の虚弱、食欲不振 

 

 

[注1]

血虚:体を養う「血」が足りなくて、栄養が全身に回らない体質です。だるい、疲れやすい、感情も不安定で、イライラ感や不安におそわれるという症状が出やすくなります。 

 

[注2]

気虚:気が不足しているタイプ→疲労倦怠感、消化器系の機能低下があります。

上記したように脾は栄養物を気、血に転化させる機能を持つため、脾の異常は気虚や血虚をもたらします。

痰湿:水が滞っているかまたは過剰なタイプ→水が体を冷やし、余分な「水」が「気」と「血」の働きを妨害しています。水滞、水毒、痰飲とも言います。冷水やビールを多飲する場合もこの体質になりやすくなります。

 

このような体質の場合、脾はもちろんのこと腎の機能も強化する必要があります。且つ冷えも取る必要があります。 

 

[注3]

・肝と脾は相克の関係にあります。「相克」とは要素間の相互抑制、相互制約をいいます。このような場合、まず肝を治すことが先になります。

 

[注4]

・気虚のなかで臓器の下垂、子宮脱、脱肛が現われる場合を特に「気陥」といいます。加齢に伴う内臓下垂を脾と腎の衰えと見ます。

 

1. 定番の足の反射療法です。

胃、十二指腸の機能を正常化し、後天の気(大地からの穀気(食物の栄養))を十分に養い、代謝を促進します。また、貧血改善、老廃物排出促進につながります。

右図「胃、十二指腸ゾーン」(足裏第一中足骨の基部)

膵臓ゾーン」 (拇指球の3cmぐらい下のリスフラン関節上)

双方のゾーンとも指圧棒を使って押し揉みます。方向としては内側から外側に向けて押し込みます。

 

2. これも定番のツボ療法です。項番1と2を合わせて施術してください。

右図「中脘」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から臍までの線の中央)

臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る方法が分かりやすいと思います。

巨闕」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から指3本分下)

胸骨体下端は、みぞおち下から上方にさすると出っ張り(剣状突起)があり、その上のくぼみになります。

「中脘」、「巨闕」とも少し前かがみの姿勢または仰向けに寝て押します。または、ピップエレキバンを貼るかお灸(せんねん灸)を勧めます。

「梁門」 (「中脘」の両傍指3本)

「中脘」、「巨闕」で効かないときにこのツボを加えます。

章門」(第十一肋骨尖端の下際)

肘関節を屈して肘尖の当たるところに圧痛を求めます。肘を90度に曲げ、さらに少しうしろに引いた方が第十一肋骨尖端に当たります。

 

 

3. 手軽に施術できる手、足のツボです。

①右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下 )

ひびく感じがなければ前脛骨筋を上下左右四方の角度から押してみてください。健脚、長寿、免疫力強化のツボです。

但し、胃酸過多の場合は施術しないでください。

②右図「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)

脛骨の後縁を足首側から擦上すると少しくぼんだ感触があると思います。血流をアップし、ホルモンバランスを取ります。女性には必須のツボです

③右図「胃腸点」 (手のひらの中央部と手首の付け根の中間点)

手首側より探ってみると、手の腹のふくらみを超えて少し平らになったあたりです。

内関」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指2本)

「内関」は、むかつきを治します。自律神経の安定、不安や動揺の調和、胸部、心窩部の痛みや疾患に効く名穴です。お勧めのツボです。

胃ゾーン(手)」 (手のひらの中央から中指の付け根)

胃のむかつき、胃痛にお勧めの高麗手指鍼のツボです。

 

4. 生まれつき消化器系が弱く、気虚・痰湿になりやすい方は「腎機能向上」も施術してください。脾腎両虚の治療が必要です。特に「爪の井穴は頻繁に」、「足裏の施術は毎日」、「下腹部にホッカイロまたは腹巻き」です。

 

 

5. イライラ、怒りがあり、脾の調子を落としている方は、まず「肝機能向上」を施術してください。

 

(参考文献)

・篠原昭二(2014)『補完・代替医療鍼灸改訂2版』金芳堂.

・寺澤捷年(1990)『症例から学ぶ和漢診療学』医学書院.

・南京中医学院(1976)『中国漢方医学概論』中国漢方.

・松岡佳余子(2014)『指をもむと病気が治る!痛みが消える!』マキノ出版.

・大村恵昭(2015)『「手の刺激」健康・長寿術』マキノ出版.