自分でできる運動療法

未病を治し、健康を維持するために運動療法は欠かせません。運動療法の基本は有酸素運動、筋肉トレーニング、バランス運動、ストレッチから構成されます。ここでは自分でできる運動療法や筋肉トレーニングを紹介していきます。日頃運動をしない中高年の方を対象としています。認知症予防にも効果的と言われています。自分に合った方法を組み合わせてください5~10回を1セットとし、一日最低1セット、できれば2~3セット、ゆっくり行ってください。特に日常的に運動していない方は徐々に行ってください。関節に痛みが出た場合は1週間ほど休んでください。

 

ここでの運動療法は次のことを目的としています。

90歳で自分の2本の足で歩くこと

生活習慣病の予防

←有酸素運動はあらゆる生活習慣病に有効です。厚生労働省のe-ヘルスネットのサイトでは糖尿病を改善する運動として、週に3日以上、150分の有酸素運動を勧めています。

転倒予防、関節の保護

←年配になっての骨折は絶対に避ける必要があります。関節を保護するためには筋肉の強化が必須です。

東洋医学で定義している気、血、水の滞りの改善

←リンパ、血流の流れ、特に静脈の流れの促進、冷えの改善、基礎代謝のUPが必須です。

 

《豆知識》

 

東京大学高齢社会総合研究機構教授飯島勝矢先生によると

 

・「栄養や社会参加には興味がないけれど、1回30分以上の汗をかく運動を週2回以上、1年以上行っている」人と、「栄養に気をつけ、社会参加はしているが、運動はやっていない」人では、サルコペアを発症する確率はさほど変わらない。運動、栄養、社会参加の3つの活動を行っている人のリスクを1とすると、上記の前者のリスクは1.6、後者のリスクは1.77である。なお、何もやっていない人のリスクは3.47である。

・サルコペニア:年を取ったり、病気を患うなどして、筋肉の量が減少し、全身の筋力が低下した状態

・「栄養(食、口腔)」、「運動」、「社会参加」が健康長寿の3つの柱である。

 

(豆知識の参考文献)

・飯島勝矢(2018)『東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣』KADOKAWA.

 

 

《目次》

本ページは次の項目について記載してあります。項目名をクリックしていただければ本文にジャンプします。

 

《下半身の強化》

中高年になって、一番鍛えなければならない筋肉として、大臀筋、中臀筋、大腿四頭筋、ハムストリング、下腿三頭筋が挙げられます。腰痛、坐骨神経痛、膝痛、骨粗鬆症等の予防になります。もっとも重要なのが転倒予防です何としてでも避けなければいけないのが高齢になっての転倒による骨折です。筋肉が弱い方や日頃筋肉トレーニングを行っていない方向けの足腰のトレーニング方法を下の「筋肉が弱い方向けの下半身強化」という項目で記述しました。お勧めします。

なお、各自治体では介護予防としてオリジナルの体操を推奨しています。例えば、東京都板橋区の「元気おとせん!体操」です。ぜひ、参考にしてください。特に「筋力づくり」です。 

①スクワット

・大腿四頭筋、ハムストリング、大臀筋、中臀筋、前脛骨筋を鍛えます。

・椅子を用意します。

・椅子の前に立ち、椅子に腰かけるように腰を落とし、椅子に座る寸前で止め、立ち上がります。

・右上の絵では手は前に伸ばしたままにしていますが、落としたままでも結構です。

・足は肩幅、またはそれより少し広めにとります。

・つま先は左右平行にして立ちます。腰を落とすとき、つま先と膝の方向は同じにします。膝の先端が人差し指の方向に向けます。つま先を外向きにすると腰を落としたとき、膝が内向きになりがちで膝を痛めやすくなります。

・コツは腰を落としたとき、膝が足より前にいかないことです。腰を後ろに突き出すとうまくいきます。腰を無理に落とすと膝が足より前にいく場合があります。その場合は無理に腰を落とさず、できるところで止めます。

・中高年の方は大腿部が床と平行になるまで腰を落とす必要はありません。膝を痛めやすくなります。目安は膝が120度ぐらいの角度になるまで腰を落とします。

・目線はやや下に向けます。

・曲げる時に息を吐きながら5秒、伸ばすときに5秒かけます。ゆっくり行うことがコツです。膝を痛めることを防ぎます。ゆっくり行うことでハムストリングも鍛えられます。

②つま先立ち(カーフレイズ)

・主に下腿三頭筋を鍛えます。

・踵を上げ、ゆっくりと踵を下ろす動作を繰り返します。

・目安として2秒で上げ、3秒で下ろします。

・壁に手をかけて安定させ、行います。

・足の親指で支えるイメージです。

・慣れてきたら、壁に手をかけないで行うとより強度が増します。

・1回ごとに踵をつけないことで強度が増します。

・20回を1セットとします。

③お尻上げ

・骨盤底筋、大転筋、中臀筋を鍛えます。

・下腹部の内臓下垂、尿失禁(尿漏れ)に効果があります。

・仰向けになり、足を90度に曲げます。

・お尻を上げ、膝から肩までを一直線にします。足裏同士を合わせる方法もあります。より強度が増します。そしてその状態を数秒キープします。

・コツは腰を上に突き出さないこと、踵を手前に引っ張るような感覚でいることです。

骨盤底筋が弱まっている状態だと、腹圧がかかり支えきれません。その場合は「お尻上げ」運動は止めてください

 

《バランス運動と下半身の筋肉トレーニングの組み合わせ》

④片足立ち

・骨粗鬆症や転倒による骨折防止に有効です。昭和大学の阪本桂造先生によると1分間の片足立ちの負荷は53分の歩行に匹敵するそうです。下肢筋力だけではなく、脳のトレーニング効果もあると言われています。

・バランスをとるとき、足の指を意識してください。

・腰の左右に手を当ててください。 

・左右それぞれ1分ずつ、出来れば2分ずつ、1日1~3回行ってください。

⑤足上げ

・大臀筋、中臀筋、ハムストリングを鍛えます。

・まっすぐ立ち、片足立ちのまま、もう一方の片足を前、横及び斜め後ろ(中臀筋を鍛える)、後ろ(大臀筋、ハムストリングを鍛える)に上げ、キープします。上げる高さは踵が床から20~30cmぐらいです。なお、片足立ちをしてもふらつかないようにバランスがとれるのは中臀筋のおかげです。

・安定しない場合は壁に手をついてください。

・認知症予防として、上げる時、声を出しながら、1から5まで数え、下ろす時も同様にします。10回行います。

⑥太もも上げ

・腸腰筋を鍛えます。

・腸腰筋は腸骨筋、大腰筋及び小腰筋から構成され、股関節を屈曲する筋肉です。小腰筋はほとんど退化しており、実質腸骨筋、大腰筋で構成しています。

・この筋肉が衰えると猫背姿勢になり、足が上がりにくく、つまずきやすくなります。

・まっすぐ立ち、太ももを前方に上げます。股関節の角度は慣れてきたら90度ぐらいです。 

・加えて、太ももの先、膝から10cmぐらい上を両手でつかみ抵抗を与えます。抵抗を与えることがポイントです。

 

《筋肉が弱い方向けの下半身の強化》

項番⑦~⑪は膝痛予防に適しています。

⑦椅子から立ちがる

・スクワットと同じ効果を狙います。毎回椅子に座りますので、スクワットの正しい姿勢が自然にでき、膝の故障を避けることができます。

・腕を胸の前で組みます。

・立ち上がる前に、いったん体を後ろに倒し、背中を背もたれにつけます。この姿勢から立ち上がることで腹筋を鍛えます。

・5カウントでゆっくり立ち上がります。

・8カウントでゆっくり座ります。お尻を後ろに突き出すイメージで座ります。できるだけ、座る直前でこらえます。

・この一連の動作を5~10回繰り返します。 

⑧上記⑦の方法でも膝に負担がかかる方向けのスクワットです。「コーナー・スクワット」と呼ばれている方法です。

・部屋のコーナの隅に立ちます。

・足は壁に沿わせます。従って、膝、足先は壁際に沿うことになります。

・足の広げる範囲は、腰を落としたときに膝が足先より出ないような広さになります。

・腰をコーナーに沿わせたまま、落としていきます。

 

⑨膝伸ばし(レッグエクステンション)

・大腿四頭筋を鍛えます。

・座ったまま、片方の膝をまっすぐ伸ばします。伸ばした後、足首をそらします。

・この動作を片方ずつ繰り返します。10回行います。

・足を広げて、片方の足を斜め方向に伸ばすと、大腿四頭筋の内側広筋に効きます。

 

⑩膝曲げ(レッグカール)

・ハムストリングを鍛えます。

・立ったまま、脚をいったん前方に出し、次に後方に引き寄せながら、膝を曲げます。その際、手の先に触るように意識します。

・この動作を片方ずつ繰り返します。10回行います。バランスが取りにくい場合は、何かにつかまります。

⑪内転筋

・椅子にすわり、膝頭のあたりに少し大きめ(10~15cm)のボールをはさみ、内ももに力を入れて3秒間キープします。これを5回繰り返します。

 

《自律神経を整える》

2. お勧めは中国に古くから伝わる気功法「スワイショウ(甩手)」です。いくつかやり方ありますが、ここでは4つ記述します。それぞれの方法につき1~2分程度、1日1~2回行ってください。4つまとめてやると4~8分です。毎日の実施をぜひ勧めます。

①前後に腕を振る方法です。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手を前後に腕や肩の力は抜いて振ります。前に上がった時は胸の高さぐらいまで、後ろは前に持ち上げられた腕の重力の反動にまかせます。

 

横に腕を振る方法です。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手を横に、腕や肩の力を抜いて振ります。

 

③左右の肩の線や上腹部を横にねじります。できるだけウエストのひねりは抑え、胸部や上腹部を横に向けることを意識します。これが次項のでんでん太鼓のようなねじりとの大きな違いです。

・腕は横に振りますが、体の前、後に振り分けます。

・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・両手は肩の位置に横に伸ばしておきます。どちらでも良いですが、仮に右腕を体の前でふるとしたらとしたら、左手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を左横に向けます。

・次に両手は肩の位置に横に伸ばす姿勢に戻します。今度は左腕を体の前でふり、右手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を右横に向けます。

・これを繰り返します。

 

④でんでん太鼓のように、ねじりを入れ回転します。ウエスト及び下腹部を横に向けることを意識します。

・立った姿勢で、足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。

・腕の力を抜いて、腕を垂らしたまま、頭頂から背骨、尾骨の縦の線を軸にして、ウエストをひねって回転運動をします。ウエスト、下腹部を横に向けます。足の床への接着面はそのままです。

・腕と肩の力を十分に抜き、腕は体に巻きつくようにまかせる感じです。

・首もあわせて回しますが、めまい防止のため回しすぎないでください。

・首は正面を向いたまま、回さない方法もあります。片頭痛の予防の場合は、顔は正面を向いたまま、首を回しません。これは重要なポイントです。

・猫背で首が前に出る姿勢の方は首を前向きに固定したまま、腰をひねる方法を勧めます。

・左右に巻きつくとき口からふっと息を吐きます。吸うときは自然に任せます。但し、無理をする必要はありません。自然に任せてください。 

 

 

《ゆがみの是正》

3. 全身のひねり運動です。いろいろな症状に効く、橋本敬三先生の操体法の基本系です。全身が伸びるような気持ちよさを感じると思います。

①仰向けに寝て、膝を90度ぐらいに立てます。膝頭をつけたまま左右に交互にゆっくり倒します。気持ちよいところで止め、3~4秒後脱力します。左右差がある場合、気持ちよい方を多めにします。5セットぐらいで結構です。仰向けに寝たときに首に負担がかかる場合は枕をしてください。脱力した後、気持ち良さが余韻として残ります。

②上記①に次のことを加えると全身のひねりになります。首を膝がしらと逆の方向に回し、上腕も同様に回します。例えば、膝を左に倒す場合、首は右側、左腕は回内、右腕は回外します。

 

《下腿のストレッチ》

4. 踵伸ばしです。これも操体法の基本系の一つです。

・仰向けに寝て、踵を直角にして踵そのものを突き出すようなイメージで片方ずつに交互にゆっくり伸ばします。仰向けに寝ていますから、腰も伸びる感じになると思います。気持が良いところで止め、3~4秒後脱力します。左右に違いがあれば、痛くない方を多めにします。

・踵を伸ばすときに、膝裏、股関節、腰も連動させながら(一緒に伸ばしながら)、手を上方に伸ばすことを加えると全身がリラックスします。

 

5. 下腿三頭筋のストレッチの方法です。

・こむらかえりを頻繁におこす方にお勧めです。

・段差にあるものに足をかけ、膝を伸ばします。

・そのまま、腰を前に押しだし、ふくらはぎを伸ばします。

 

《首こり、肩こりの予防》

6. 首、肩、背中(特に肩甲骨の高さ)のコリの改善、また、円背(えんぱい、猫背)矯正の体操です。慢性的な首こり、肩こり、腰痛がある方にはぜひ勧めたい体操です。

①立つか、椅子に座った状態で、肘を曲げたまま上肢を挙上し、先に肘を前に出し、次に背中をそらすように上肢を後ろに回します。肘を前に出したときはできるだけ肩甲骨間を広げ、肘を横に回したときはできるだけ肩甲骨間を狭めます。肘を前に出したときは小指を手前に手背を合わせ、肘を横に回したときは手のひらを外向けにした方が肩甲骨の可動域が広がります。これを5~10回行います。

 

②同じように立つか、椅子に座った状態で、肩を後屈し肘を曲げたまま、上肢を挙上し、次に下ろします。この動作を繰り返します。肩の後屈がポイントです。頸の痛みも取ります。上肢を挙上したときは手のひらを内側に向け、下ろしたときは手のひらを外に向けた方が肩甲骨の可動域が広がります。これを5~10回行います。

 

③肩の先端に手指を当て、肩を後方に、左右交互にぐるぐる回します。回数は20回程度です。鵜沼宏樹先生が推奨している仰泳法という気功法です。

次に左右一緒に前方に20回程度回します。次は後方に20回程度回します。 

 

《首が慢性的に痛い時の対処》

7. 首が慢性的に痛い時の運動療法です。

・壁に後頭部を押し付け、首から下は壁から離します。顎は引きます。「軽め」に押し付け、そのまま5~10秒じっとします。これを一日何回か行います。「軽め」の目安は全力の半分くらいの力です。またはベッドやふとんにあおむけになり、後頭部に力を入れて枕を押し、力を入れたまま5秒間、その姿勢を保ちます。力を入れた時、顎が上がらないように気をつけてください。

 

8. 次のストレッチも首の痛みを取ります。もともと呼吸を楽にする目的で、自分で開発したストレッチです。

①左右の前腕を回外し、前腕全体をくっつけるようにして、胸に肘をつけます。その際、回外したまま、小指を上にして手背を合わせます。肩は前に出るはずです。

 

②次に円を描いて、頭上に手を挙げていきます。肘から先導しながら、手のひらを返し(回内し)、回内したまま手の甲を頭上で合わせます。肩は後に引かれるはずです。

 

③次の動作は、円を描いて前腕を下げ、①の形に戻します。

 

②の動作で息を吸い、③の動作で息を吐きます。

 

①~③を3~5回繰り返します。4~5セット/日行います。

 

[注]

・回内:腕を内側に回すこと

・回外:腕を外側に回すこと

 

《腰痛予防》

9. 腰痛予防のストレッチです。

①東京大学医学部付属病院特任教授の松平浩先生が推奨している方法です。

・足を軽く開き、膝を伸ばしたまま、手のひらを腰に当て、上体をゆっくり反らします。

・1、2回3秒間息を吐きながらキープします。

・コツは後に反らしすぎないことです。ほんの少しで結構です。

・前かがみの姿勢が続いた後有効です。

但し、脊柱管狭窄症の人は除きます

 

(本項の参考文献)

・松平浩(2016)『腰痛は「動かして」治しなさい 』講談社.

・松平浩(2016)『文藝春秋2016年11月号』文藝春秋.

・松平浩(2013)『「腰痛持ち」をやめる本』マキノ出版.

 

②次に孫維良先生が推奨している「腰眼押しまわし」という方法です。 脊柱管狭窄症にも有効です。

・右図「腰眼」というツボを親指で押しながら、腰を左右に15回ずつ回します。

・「腰眼」というツボを親指で押しながら、上体をゆっくり前に倒します。そして、ゆっくり戻します。10回繰り返します。前に倒すことで痛みが増す場合は、止めて下さい。

 

「腰眼」 (第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指4本強、腸骨の上端の高さ)

 

(本項の参考文献)

・孫維良(2018)『脊柱管狭窄症の痛みは指1本で消す!』宝島社.

 

《背筋を鍛える》

10. 背筋を鍛える運動です。

加齢に伴い、背筋は弱くなります。背筋が弱いと腰痛を生じやすく、また背骨の圧迫骨折を来たしやすくなります。

・布団かベッドの上で、おなかの下にクッションか枕を入れ、手は腰に当てます。

・上体を持ち上げ、5秒間制止します。これを5~10回繰り返します。

 

注意点として

・出来る範囲で止めること

←無理をすると腰を痛めます。

・首を後ろに反らさず、背骨と一直線にすること←無理をすると首を痛めます。コツは目を閉じて顎を引くことです。

 

《腹筋を鍛える》

11. 腹筋を鍛えます。

いろいろなやり方がありますが、比較的腰に負担がかからないやり方です。

・椅子に浅く腰掛け、上体を後ろに、膝を上に挙げ、腹筋が緊張していることを意識します。膝から下は無理に挙げません。

・すこし前かがみになり、腰はそらさないようにしてください。

・そのまま、5~10秒キープします。

・これを5~10回繰り返します。

 

《リラックスする》

12. 親指と人差し指で耳の上、下、横を挟み、それぞれ上方、下方、横方向にそれぞれ3回ずつひっぱります。

 

13. 首をゆっくりゆっくり痛くない範囲で回します。交互に3回ずつ行います。

 

14. あくびは疲れを取るのには有効です。やり方は簡単です。

・椅子にすわり、首を後ろに倒し、顔の筋肉を全て緩め、口をぽかんとあけます。自然にあくびが出ます。

《呼吸法》

15. お勧めの呼吸法です。

・中国唐の時代の有名な医書「千金方」に書かれている呼吸法です。

「常に鼻から清気を引き入れ、口より濁気を吐き出す。入るること多く出すこと少なくす。出すときは口をほそくひらきて少しずつ吐くべし」

・貝原益軒の養生訓には次のようにあります。「これを行うときは、姿勢を正しく仰向けになり、足を伸ばし、目を閉じ、手を強く握り、両足の間は五寸開き、両肘と体の間をそれぞれ五寸ほど離すようにする。一日一夜の間に、一、二度行うべきである。」

 

16 気功法のひとつで「聴息法」です。呼吸法と言うより、呼吸を意識します。

・夜寝床の中で、体、特に顔をリラックスします。目は閉じます。

椅子に座った状態でも結構です。背筋を軽く伸ばし、背もたれから離します。

・吐く息を意識します(聴きます)。

・時間にして5分ぐらいです。

・最初は腹式呼吸、胸式呼吸、鼻で吐く等はどちらでも構いませんが、自然に腹式呼吸で、口を小さく空けて吐くようになり、吐く息が長くなります。

・雑念が浮かんできたら、注意を呼吸に戻します。雑念が生じて当然です。

・腹式呼吸をする際、おへその上と下に左右の手掌をそれぞれ横に当て、おなかの膨らみとへこみを感じると、より腹式呼吸が実感できると思います。

 

 

(本項の参考文献)

・鵜沼宏樹(2008)『元気になれるとっておきのツボ療法』婦人之友社.

・ジョン・カバットジン(2007)『マインドフルネスストレス低減法』春木豊訳 北大路書房.

 

17. 糖尿病にお勧めの気功法です。「撼天柱(かんてんちゅう)」という気功法です。

気功家中健次郎先生が推奨している簡単で効果が高い気功法です。

・床に座る(あぐら)か、椅子に座ります。腰が痛い方は正座か椅子にしてください。

・背中の正中線上で、おへその後ろ側に「命門」というツボがありますが、このツボを大きく回すことを意識して、背骨を回します。

・左に9周、右に9周回します。

・横~後ろに回すときに吐き、後~横~前に回すときに吸います。

 

注意点は次の通りです。

・力を抜いて行ってください。

・急に終わらず、静けさを保ってください。

・食後一時間くらいは避けてください。

 

《老人性難聴、耳鳴り》

18. 「鳴天鼓」という気功法です。

①手掌で耳をふさぎ、後頭部に指を当てます。

②中指の上に、人差し指を重ねます。

③反動をつけて人差し指を中指から滑りおろし、後頭部をはじきます。

④上記②と③を15~20回程度繰り返します。

⑤この手法を一日2~3セット行います。

 

19. 「耳透摩擦法」という気功法です。

両手の人差し指と中指でV字の形をして両方の耳を挟み、指の腹で耳の付け根の前後を上下に摩擦します。15~20回程度繰り返し、一日2~3セット行います。