肘の痛み

肘が痛くなった部位を、腕の前面(親指側)、内側(手掌側)、外側(手背側)、後面(小指側)に分けて、その対応を説明します。さらに、なかなか痛みが取れない場合、背中で治す方法についても説明します。

 

《親指側が痛い場合のツボ》

1. まず、腕の前面(親指側)を酷使して、肘が痛くなった場合の対応です。外側上顆炎で、テニス肘が典型的な例です。考え方としては、各部位を経路としている経絡の郄穴(急性疾患によく効くツボ)、滎穴(熱を取るツボ)、兪穴(関節の痛みを取るツボ)、特効穴を使います。以下、同じです。

右図上廉」 じょうれん(次の「曲池」より前腕橈側指4本下)

前腕外側の大きな筋肉の一番盛り上がったところで著明な圧痛点を狙います。手のひらで前腕部を下から支え、親指で押し込みます。

手三里」 (次の「曲池」より前腕橈側指3本下)

曲池」 (肘を十分屈曲して、肘窩横紋外端のくぼみ)

肘頭に向けて押し込みます。

 

②右図「魚際」(手掌、第一中手骨中点の橈側中央、赤白肉際陥凹部)

ここでの赤白肉際とは手掌と手背の境目です。以下同様です。その境目にくぼみがあります。

③右図「二間」(示指、第二中手指節関節橈側遠位(指先側)陥凹部、赤白肉際)

「三間」(手背、第二中指節関節橈側の近位(手首側)陥凹部)

ここでの遠位とは指先側、近位とは逆に手首側です。②、③ともにお灸(せんねん灸)を勧めます。 

 

《手掌側または手背側が痛い場合のツボ》

2. 次に腕の内側(手掌側)、外側(手背側)を酷使し、肘が痛くなった場合の対応です。 

①右図「郄門」(腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指5本)

腕関節と肘関節間の中央より、指1本手首側になります。腕関節と肘関節間の中央も探り、押します。

「内関」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指2本)

 

右図「労宮」(中指、薬指を折り曲げて双方の先端の当たるところの中間)

中指、薬指双方の先端の中間ではなく、中指の先端という説もありますが、ここでは中間とします。

「大陵」 (腕関節掌側横紋の正中にとる、多少橈側)

お灸(せんねん灸)を勧めます。

 

③右図「会宗」 えそう (腕関節から指4本弱離れたところの尺骨の橈側縁)

圧痛を探し、強めに押します。

「外関」 (腕関節背側横紋の中心(やや小指側)から上方指2本、橈骨と尺骨の骨陥)

腕関節横紋から指で滑らせていくと皮膚のたるみで指が止まるところです。前腕を回外した状態で押します。風熱(関節の腫れ、痛み、熱感)を除く名穴です。

 

④右図「液門」 (手背、薬指と小指の間、水かきの近位陥凹部)

手背部第四と第五中手関節白肉際にとります。水かき中央より薬指側の陥凹部にかけて押してください。

お灸の場合、やりにくい位置にあります。輻射熱で近くの皮膚がやけどをしないように十分注意をしてください。

「中渚」 ちゅうしょ(第四、第五の中手指節関節の後ろ陥みの間にある)

「中渚」の前後も探ってみてください。双方ともお灸(せんねん灸)を勧めます。

 

《小指側が痛い場合のツボ》

3. 次に腕の後面(小指側)を酷使して、肘が痛くなった場合の対応です。内側上顆炎で、ゴルフ肘が典型的な例です。

①右図「養老」 (指で尺側茎状突起の頂点を押さえて手掌を回外すると指が滑り込む骨の割れ目)

②右図「前谷」 (小指尺側第五中手指節関節の前陥中(遠位)、赤白肉際) 

「後渓」 こうけい (手背、第五中指節関節尺側の近位陥凹部、赤白肉際)

「後渓」の手首側も探ってください。

 

 

③「神門」(腕横紋上で尺側手根屈筋腱の橈側(親指側)にとる)

空いている側の手の親指で次指の付け根のほうに押します。

②、③ともにお灸(せんねん灸)を勧めます。 

《肘が痛い場合の背中で治すツボ》

4. 肘が痛い場合、背中のツボがよく効きます。上記の3つのケース全般に渡って、共通です。2つ、手法を紹介します。

肩甲骨間のツボ「肺兪」から「膈兪」を押してみてください。圧痛ある箇所を選び、ピップエレキバンを貼るかお灸(せんねん灸)を勧めます。特に「心兪」に著明な圧痛があります。

右図「肺兪」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。

「厥陰兪」 けついんゆ (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「心兪」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本) 

「膈兪」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)

「膈兪」は左右の肩甲骨下縁を結んだ線上を目安にしてください。 

 

②痛みがなかなか取れない場合は、上記の手法に加え、次の手法を加えてください。特に肘の内側、上腕骨内側上顆に痛みがあるケースです。肘の内側には「小腸経」という経絡が走っており、肩甲棘の上下を通っています。筋肉で言えば、棘下筋、棘上筋、小円筋があります。これらの筋肉の圧痛点に指を差し込み、筋肉を引きはがすようにスライドします。(下図の赤字矢印参考) 

右図「臑兪」 じゅゆ (肩周囲部、腋窩横紋後端の上方、肩甲棘の下方陥凹部)

「天宗」 (肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部)

「天宗」を含む肩甲棘の下縁のエリア、棘下筋を押圧してください。強く押すと痛いところですが、よく効きます。

「秉風」 へいふう (肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方)

「曲垣」 (肩甲部、肩甲棘内端の上方陥凹部)

「秉風」、「曲垣」を含む肩甲棘の上縁も押してください。