首の痛み

慢性的な首の痛みやこりに対する治療法です。

 

慢性的な痛みに対しては、その要因を取り除くことが大事です。

医者に診断してもらい、器質的な原因がなければ、生活習慣的なものが考えられます。生活習慣上の留意点です。

・特にPCやスマホを良く使われる方は首の痛み、腰痛になりがちです。猫背のまま、顎を突き出す姿勢は厳禁です。

・下に記述したようなストレッチを一定時間ごとに行ってください。

炎症を起こしていて首が痛いとき、首をマッサージしたり、叩いたり、押したりすることも厳禁です。余計悪くなり、治りが遅くなります。次項にあるストレッチや手、足のツボがお勧めです。

 

1. 予防法です。すこし痛みがあるときにそれ以上悪化させないために有効です。

①左右の前腕を回外し、前腕全体をくっつけるようにして、胸に肘をつけます。その際、回外したまま、小指を上にして手背を合わせます。肩は前に出るはずです。

 

②次に円を描いて、頭上に手を挙げていきます。肘から先導しながら、手のひらを返し(回内し)、回内したまま手の甲を頭上で合わせます。肩は後に引かれるはずです。

 

③次の動作は、円を描いて前腕を下げ、①の形に戻します。

 

②の動作で息を吸い、③の動作で息を吐きます。

 

①~③を3~5回繰り返します。4~5セット/日行います。

 

[注]

・回内:腕を内側に回すこと

・回外:腕を外側に回すこと

 

2. 手軽にできる手の甲のツボです。

①右図のツボを押します。「頸項点」、「落枕」が基本ですが、「咽頭点」、aに圧痛が出る場合はこちらも押し揉んでください。

「頸項点」 (手をグーにして、人差し指と中指の骨の出っ張りの間)

「落枕」 (上記頸項点から約1センチ下がったところ)

寝違いの特効穴です。

「咽頭点」 (手をグーにして、中指と薬指の骨の出っ張りの間)

a (上記「咽頭点」から約1センチ下がったところ)

 

②簡便法として、次の手法でも結構です。

・中指の第一関節から付け根まで(右図青色部分)

・中指と人差し指の中手骨の間、中指と薬指の中手骨の間(右図オレンジ色部分)

・中指付け根一帯(右図緑色部分)

揉みほぐすか、シャープペンシルの先(芯を出していない状態)または片方の手の爪でチクチクと刺激をします

 

3. 足の親指の次の反射区も有効です。

右図左側「頸・項部」 (足裏の親指の基節骨全体)

足の親指の根元をぐるりともんでください。または痛い箇所にピップエレキバンを貼ってください。

右図右側「頸椎」 (足底の親指の基節骨の内側)

以下は、長期にわたり痛みが取れない場合の療法です》 

4. 盆の窪に指を当て、上の方に指をずらしていくと骨の出っ張り(外後頭隆起)にぶつかります。その外後頭隆起の上の線(1本)、下の線(2本)を横に中心部から乳様突起まで押し揉みます。下の線は上45度の方向に押し揉みます。

 

5. 次に慢性的な首こりに対する定番のツボです。

右図「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)

次の左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。

「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)

体の正中線より指3本弱外側に位置します。

「健脳」 (風池より指幅1本下)

「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)

人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。

「肩井」 (第七頸椎棘と肩の骨の先端(肩峰角)を結んだ中央)

 

第七頸椎棘という言葉が出てきましたので、ここで説明しておきます。

第七椎棘は、首を前に曲げると首と背中の付け根に飛び出る椎骨で、丸く一番大きく見える骨です。棘は椎骨の後端が隆起し、突出したもの (突起)を意味します。第七頸椎は頸椎(首の骨)の一番下で、次の胸椎(背骨)の一番上との違いは首を縦横振ってみると動くのが頸椎、動かないので胸椎です。動く椎骨と動かない椎骨の間のくぼみが他に比べて一番大きいのでわかると思います。簡便法として次の方法で判別してください。髪の生え際から指4本下の大きな椎骨です

 

 

6. 次は首の付け根のツボです。

「第六頸椎点」 (第6頸椎棘突起から左右親指幅1本)

指幅1本のみならず、2~4本離れた箇所も押してください。特に、3、4本目は肩を後にそらし首の付け根の筋肉が少しくぼんだところを押してください。古い傷による慢性的な痛みに効果があります。

 

7. 肩甲骨間のツボを押します。

この手法は他の人に押してもらうことを前提にしています。手当を受ける方は肘を少し曲げ、腕を体の前側にもっていき、肩甲骨を開いておきます。

手当をする方は、右図脊柱の傍ら指2本と4本の線上です。脊柱の傍ら4本の線上は肋骨の間を探ります。寝違えの場合は脊柱の傍ら4本の線上(肩甲骨の内側縁)がよく効きます。

 

8. 胸鎖乳突筋の上、中、下を夾むようにして押します。顔を横にして胸鎖乳突筋を浮き出させて押します。頸部のこわばりを取ります。よく効きます。

右図「天容」 (前頸部、下顎角と同じ高さ、胸鎖乳突筋前方の陥凹部)

「天牖」 (前頸部、下顎角と同じ高さ、胸鎖乳突筋後方の陥凹部)

「人迎」 (前頸部、甲状軟骨上縁(のどぼとけ)と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁、総頸動脈上)

「天窓」 (のどぼとけと同じ高さで胸鎖乳突筋の後縁) 

「水突」 (前頸部、輪状軟骨と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁)

「天鼎」 (前頸部、輪状軟骨と同じ高さ、胸鎖乳突筋の後縁(「水突」と同じ高さ))

「水突」、「天鼎」は「人迎」、「天窓」より指2本下のラインになります。

 

これらのツボは、顔を横に向け胸鎖乳突筋を浮き出させた状態で、軽く夾むようにして押します。胸鎖乳突筋近くのツボは刺激が強いので長押しは避けてください。3~5秒押しを3回程度繰り返してください。 

 

9. 前かがみの姿勢が多い生活で、首にこりが出る場合の対応です。前胸部のこりが首の筋肉を引っ張ります。中指で押圧してください。

右図「欠盆」 (乳頭線上(前正中線の外方指5本(鎖骨の中央))で鎖骨上方の陥凹部)

陥凹部の中心を、指を小さめに回して探ってください。 

「気戸」(前胸部、前正中線の外方指5本、鎖骨下縁の陥凹部)

鎖骨の真ん中で鎖骨の下縁にあるくぼみの中の圧痛点に取ります。

「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下) 

肋骨に沿って体の奥深く指を入れ込み、ゆっくりと押します。上肢の内側に響きます。

 

10. 運動法です。

①首を横の方向に8の字を5~10回、次に逆方向に5~10回描きます。これを3セット/1日行います。8の字は大きくする必要はありません。短期間のうちに効果が出ます。筆者お勧めの手法です。

 

 

 

 

②壁に後頭部を押し付け、首から下は壁から離します。顎は引きます。踵は壁より20cm離します。顎を引き、後頭部を壁に押しつけるという動作は重要です。ストレートネックになりがちな頸椎にストレッチをかけます。「軽め」に押し付け、そのまま5~10秒じっとします。これを一日何回か行います。「軽め」の目安は全力の半分くらいの力です。慢性の期間により、完治するまでかなりの期間がかかるかもしれませんが、必ず治ります。

 

③ベッドやふとんにあおむけになり、後頭部に力を入れて枕を押す方法もあります。力を入れたまま5秒間、その姿勢を保ちます。力を入れた時、顎が上がらないように気をつけてください。この方法は2007/05/23NHKためしてガッテンで放送されました。

 

11. 僧帽筋起始部に働きかける方法です。

楊枝を10本ぐらい束ねて輪ゴムで止め、僧帽筋起始部(外後頭隆起から第6頸椎)を楊枝の先でチクチクと刺激をします。

対象の箇所は次のエリアを目安としてください。

・右図の外後頭隆起の近辺4cm×6cm

 

(本項の参考文献)

・長田裕(2015)『チクチク療法』三和書籍.

 

12. 上記の方法で痛みが取れない場合の手法です。

首、肩上部には複数の経絡が走っています。それらの経絡の首や肩上部と離れたところの、特に手のツボを使います。

①大腸経の経絡を使います。どの面の痛みでも有効ですが、特に側面の痛みに効きます。

右図 「列缺」 れっけつ(両手の拇指と示指のまたを交差させ、示指の先端が当たるところのくぼみ)

このツボは肺経のツボですが、古来「頭項は列缺に尋ねる」と言われる有名なツボで、大腸経と直接つながりがある「絡穴」(注参照)です。慢性の痛みの場合、拇指の爪先で切り裂くように差し込み、内側に筋肉を剥がすように引きます。

さらに右図の「列缺」を含む緑色の線(経絡)に対しても内側に筋肉を剥がすように引きます。

 

[注]:経絡にはそれぞれ表裏をなす対があり、その表裏を直接結ぶ経穴を「絡穴」といいます。例えば、肺経は大腸経と表裏の関係にあり、「列缺」でつながっています。

 

②小腸経の経絡を使います。特に後面の痛みに効きます。

右図「前谷」(小指尺側第五中手指節関節の前陥中(遠位)、赤白肉際) 

「後渓」 こうけい (小指尺側第五中手指節関節の後陥中(近位側))

軽く握り、手掌横紋(感情線)の尺側端になります。頭と首の緊張をほぐし、むちうち症、頭項強痛を治すツボとして有効です。

「前谷」、「後渓」とも拇指の爪先で切り裂くように差し込み、内側に筋肉を剥がすように引きます。

 

右図「後谿」を含む緑色の線(経絡)に対しても内側に筋肉を剥がすように引きます。

この経絡には次のようなツボが並んでいます。

「腕骨」 (後谿穴より第五中手骨の外縁に沿い、圧上して指の止まるところ)

「陽谷」 (手関節後内側、三角骨と尺骨形状突起に間の陥凹部)

「養老」 (指で尺側茎状突起の頂点を押さえて手掌を回外すると指が滑り込む骨の割れ目)

 

③三焦経の経絡を使います。特に側面の痛みに効きます。

右図「外関」 (腕関節背側横紋の中心(やや小指側)から上方指2本、橈骨と尺骨の骨陥)

腕関節横紋から指で滑らせていくと皮膚のたるみで指が止まるところです。反対側の「内関」というツボと親指、中指で挟み、こねるようにして押します。前腕を回外した状態で押します。寝違えに有効です。そのほか、頭痛、肩関節周囲炎、坐骨神経痛にも良く効く万能穴です。

加えて、右図「外関」を含む緑色のエリア全体に爪を立て、えぐるように押し込んでください。

ここには次のようなツボがあります。

「支溝」 (前腕後面、腕関節から指4本分離れたところの中央)

「会宗」 えそう (前腕後面、腕関節から指4本弱離れたところの尺骨の橈側縁)