不眠症

不眠症に対し、ここで紹介するツボ療法もなかなかの効果を発揮します。薬物依存のことを考慮し、できるだけ薬物以外の方法も併用していただきたいと思います。

 

東洋医学的な観点からみると、不眠は「陰陽」のサイクルがくずれ、夜になっても「陰」が盛んでないためととらえています。わかりやすく言うと夜になってもリラックスが完全にできていない状態です。東洋医学は深く眠るためにも気(エネルギー)、陰の気が必要と考えています。

 

本サイトのツボ療法は、副交感神経を優位にするツボを使います。

 

いくつか留意点です。

・コツは、ツボをやさしく、少し長めに押さえることです。 

・そのツボが効いているかどうかは、ツボを押したときにあくびが出るかどうかを目安としてください。

・生活習慣として、朝起きたらすぐカーテンを開け、(太陽が照っていなくても)日の光を浴びてください。

・日中は活動をしてください。

 

1. 不眠には定番のツボです。筆者が一番にお勧めするツボです。

右図「失眠」(踵の中央)

このツボはげんこつまたは木槌で軽く叩いて刺激をします。50回叩きます。

中国では「失眠」の位置を足裏の縦の中心線と内・外踝を結ぶ線との交差点としています。踵の中央より前になります。たたく場合は、少し広めに刺激をしたほうがよいと思います。叩くと自然にあくびが出ます。

2. 後頸部のツボです。

①右図「完骨」 (乳様突起下端より後上方指1本弱(骨がくぼんだところ)または乳様突起下端より後下方、陥凹部)

下から上の方向に押します。

 

②定番の「安眠」というツボです。 

右図「安眠」 (耳たぶのうしろに触れる乳様突起という骨(頭蓋骨の一部の尖ったところ)の後ろ側の少しくぼんだところ、もうひとつ、乳様突起の指1本下)
二か所あります。押して気持ちが良いところに探ります。乳様突起の後ろのほうが気持ちが良いと思います。

 

③さらに耳輪の後ろのエリア及び乳様突起下のエリア3箇所(右図参照)を下から上に押すと効果的です。お勧めします。

3. 前頭部、頭頂部のツボです。

①右図「頭維」 (額角髪際から指1本弱入ったところ)

 鍼の治療家が「精神的熱っぽさ」の治療点として使用するツボです。

②右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部)

少しくぼんでいるところを探ります。

四神聡」 ししんそう (百会の前後左右親指の幅1本) 

「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスを是正させる効果があるツボです。

前頂」 (「百会」の指2本前) 

後頂」 (「百会」の指2本後) 

 

《豆知識》

・体温(深部体温)は、日中から夕方にかけて高くなり、その後は休息に向かって徐々に下がる。

・不眠に悩む人の中には脳の温度が下がりにくくなっていることが少なくない。

 

(豆知識の参考文献)

・内山真総監修(2011)『睡眠の病気』NHK出版.

 

《豆知識》

・不眠症は、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠問題がある。

・加齢とともに、睡眠力が落ちてしまう。

・75歳を過ぎると人が眠れる時間は、平均して6時間半以下になる。

・その一方で、床に入っている時間は75歳を過ぎると、平均して8時間以上になる。

・差し引き2時間は何をしているのだろうか? 布団の中で「眠れない……」と悶々している。

・薬を飲まずに眠れないなら、薬を飲んで眠った方が良い。

・「ノンレム睡眠」:深い睡眠。体や脳の休憩、身体の成長。成長ホルモンの分泌。1~4の段階がある。番号の大きいほど睡眠が深い。寝てから3時間の間に多く出現する。高齢者の場合、入眠までの時間が長く、睡眠の段階は4まで進まずに段階2あたりでとどまり、深い睡眠が減少することが知られている。

・老年期には深い睡眠が出現しにくくなる。つまり、長くぐっすり眠れなくなる。すぐ目が覚めてしまう。

・死亡率が一番低いのは7時間睡眠である。睡眠時間が短いのは、あまり気にする必要はない。

・睡眠の質は「日中の活動」によって決まる。

・中高年の睡眠を考える上で、「成長ホルモンの分泌量をいかに増やすか」がゴールである。

・成長ホルモンとは、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種で、骨や筋肉、各組織の成長を促進し、身体を作ったり、健康的な身体を維持したりするのに必要なホルモンである。特に、成長ホルモンが最も分泌されるのは、睡眠開始からの3時間程度の間に深いノンレム睡眠に入ったときである。

・成長ホルモンの分泌量は、思春期をピークに迎えて、20代で半分、30代で3分の1、40代で4分の1と、どんどん分泌量が減っていくと言われている。 

・睡眠の質を高めるためには「メラトニン」、「コルチゾール」というホルモンを活用する。これらのホルモンは毎日決まった時間に分泌される。

・高齢者の場合、若者と比較すると、昼間にメラトニンがより多く分泌され逆に夜間の分泌量が少ない。

・体温が高いところから低いところに急激に下がる(1度ぐらい)と、人は眠くなるようになっている。

・体温を下げるには身体のどこかで血液を冷やす。身体のどこか、それが手足である。手足がラジエーターのような役割を果たす。

・高齢者は1日の体温が変化しにくくなる。

 

(豆知識の参考文献)

・遠藤拓郎(2021) 『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』  横浜タイガ出版.