更年期障害

更年期障害を東洋医学的に言えば、先天的なエネルギーを司る腎の衰え、生殖腺の機能を整える脾の衰え、血の貯蔵を管轄する肝の衰えとみます。

・先天的なエネルギーの衰え、ここでは先天的にあった若い時の旺盛なホルモンの減少と考えます。

・生殖腺から供給されるホルモンバランスの崩れがさまざまな不定愁訴を引き起こします。

・血の貯蔵の調整がうまくいかず、感情が不安定になります。(「血が余りあれば怒り、不足すれば恐れる」(中国最古の医学書「黄帝内経」より))

 

従って、これらの観点から治していきます

 

1. 基本的なツボです。先天的なエネルギーである先天の気を補い、生殖腺機能を整え、ホルモンバランスの崩れを防ぎ、緊張を取り除きます。 「湧泉」、「副腎」、「三陰交」、「血海」、「帯脈」がお勧めです

右図「湧泉」 (五指を屈し足底中央の最も隅なるところ)

先天の気を補い、ホルモンバランスを整え、冷えのぼせも改善します。更年期障害のみならず、養生のための必須のツボです。

「副腎」 (湧泉の下のエリア)

生殖腺からのホルモン減少を代替します。

「腹腔神経叢」 (「湧泉」(足の五本の指を内側に曲げた時にできるくぼんだところ)というツボを中心に第一中足骨と第二中足骨の間から、第三中足骨と第四中足骨の間までの範囲(斜線で囲んだところ))

太陽神経叢ともいいます。特に、親指と人差し指のまたから踵方向に4cm下がったふくらみの稜線上、そして、そこから拇指球の下のくぼみまでの箇所が効きます。神経の緊張状態を取り除く有名なゾーンです。

「脳下垂体ゾーン」 (足の親指の腹の中心点)

ホルモンバランスを整えるとともに、イライラを解消します。力が入らない方は指圧棒で押し込んでください。

 

右図「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)

「血海」(大腿骨内側膝蓋骨内上角の上方指3本)

「三陰交」、「血海」ともに更年期障害には定評のあるツボです。

右図「帯脈」 (第十一肋骨端下方、臍と同じ高さ)

臍と同じ高さで圧痛点を探ります。真横より後の場合もあります。婦人科系疾患の必須穴と言われています。

2. 手軽に押せる手のツボです。 

右図「関衝」 (第四指尺側爪体の角を去ること一分(2mm)にとる)

右図「腎穴」 (手掌側で小指の指先側、第一関節の横しわ中央)

右図「生殖ゾーン」 (手のひら側、小指の下)

ホルモンバランスを整えます。

3. お風呂の中で取り組んでほしい足の反射区です。お勧めです。

下左図「子宮ゾーン」(足の内側、内踝と踵骨の後下端を結んだ線の中点)

下右図「卵巣ゾーン」(足の外側、外踝と踵骨の後下端を結んだ線の中点)

上記の中点を中心に斜線部分全体を揉んでください。ホルモンの急激な機能の低下を緩和します。

「大腿部のリンパ腺ゾーン」 (アキレス腱に沿った線)

「鼠径部リンパ腺ゾーン」 (内踝と外踝をつないだ線)

生殖器系のホルモンは次のような重要な役割も持っています。

女性ホルモン(エストロゲン)は高コレステロール、脂質異常、動脈硬化、骨粗鬆症などのリスクから守る働きをし、男性ホルモン(テストステロン)は中性脂肪やコレステロールの代謝の衰えを防ぎ、内臓脂肪や皮下脂肪の増加を抑制すると言われています。

4. 血の貯蔵の調整を行い、ストレスを抑えます。

右図「太衝」 (第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)

足の中心に向かい、押します。ストレスがある場合、「太衝」を押さえると痛くて飛び上がります。

5. 冷えのぼせへの対処と自律神経のバランス改善をはかります。どの方法でも結構です。

①頭のツボで冷えのぼせに対処します。

右図「百会」(頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部)

髪際から指幅7本上か7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。「百会」、次の「四神聡」の押し方は首筋を立て脊髄の真ん中めがけて気を送りこむことをイメージします。弱いと感じる方は、拳を使い、中指の第2関節で、片方の手を拳にかぶせるように押してください。

「四神聡」(百会の前後左右親指の幅1本)

「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。

 

②項のツボで冷えのぼせに対処します。

右図「風池」(僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)

体の正中線より指3本弱外側に位置します。頭の中心に向かって、親指で骨を押し上げるイメージで押します。

「天柱」(盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)

左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。

首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。

「健脳」 (風池より指幅1本下)

ツボの名前通り健脳を狙います。

「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)

人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。

 

項をマッサージする手法もお勧めです。ストレスを開放し、気持ちが落ち着きます。

これらのツボを含む項全体(生え際~項の下まで)を上下に36回やわらかくマッサージします。

 

③耳のツボで自律神経を整えます。

右図「神門」 (耳の上部、三角形をした浅いくぼみ(三角窩)、正確には対輪上脚と対輪下脚によってできる角の上、対輪上脚寄り。三角窩を3等分し、後方1/3の区域の上方対輪上脚寄り)

精神安定、自律神経のバランス改善に著効のある最も重要なツボです。

「交感」 (対輪下脚と耳輪の交差部)

自律神経のバランス改善、安定に重要なツボです。

 

各耳ツボは個別に爪等を使って軽く押さえますが、次の方法も勧めます。三角窩全体前側を人差し指の腹で、その後側を親指の腹で挟み、押しもみます。その後、三角窩をほんの少し上方にひっぱります。