めまいの原因を大別すると次のように分かれます。
・内耳のトラブルによるもの:グルグル回る(回転性)めまい
・脳の酸素不足によるもの :立ちくらみのようなクラクラするめまい
・自律神経の乱れによるもの:フワフワと体が揺れ動くめまい
・上記の分類に属さないもの:頭のふらつき、浮動感
めまいの要因を東洋医学的にみると
①気のめぐりが悪い(気の偏り・不足・停滞、自律神経の乱れ)
特に、耳に関連する経絡(ツボの経路)の気の流れです。
東洋医学は生命を生かしていくいろいろなエネルギーを「気」という概念で表します。「気」は一つではありません。運動、成長、免疫、防御、代謝、維持、治癒、思考、感情、記憶等、肉体的に、精神的に、いろいろな活動している「気」があります。
②血のめぐりが悪い(血流の悪さ)
特に、脳の血流のわるさ、特に首のこりです。めまいには首のこりを取ることが大事です。
③水のめぐりが悪い(水の代謝の衰え)
冷え、特に胃の冷え、水が頭や耳(三半規管)にたまるとめまいという症状にもあらわれます。なお、東洋医学の水は血液以外のリンパ液等を含む体内の水分を言います。水が滞っているかまたは過剰なタイプ「痰湿(水毒)」という体質の方は要注意です。
治療にあたって、これらの観点からツボを選んでいきます。めまいを起こす前に兆候が現れるはずです。項番1~3のなかからその兆候の段階で施術する自分に合った療法を見つけてください。
1. まず、耳に関連する気及び水のめぐりの悪さを耳に関連する経絡で治していきます。胆経、三焦経という経絡を使います。回転性のめまいへの対処です。注意点ですが、水のめぐりが悪いと言って、水を控えることは止めてください。適度な水分補給は必須です。
①右図「中渚」(第四、第五の中手指節関節の後ろ陥みの間にある)
耳疾患の重要経穴です。すこし、強めに押したほうが効果があります。反応がなければ、より近位側(手首側)を探ってみてください。
②「耳」(中指のはらの中央側面)
爪でチクチクと刺激をしてください。予防の意味でこのツボを平生からチクチクと刺激することを勧めます。
③右図「外関」 (腕関節背側横紋の中心(やや小指側)から上方指2本、橈骨と尺骨の骨陥)
腕関節横紋から指で滑らせていくと皮膚のたるみで指が止まるところです。反対側の「内関」というツボと親指、中指で挟み、こねるようにして押します。前腕を回外した状態で押します。
④右図「太衝」(第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)
このツボの持つ意味は重要です。回転性のめまいは、東洋医学では肝胆の異常と言われています。肝の機能を調整する最適なツボです。予防の意味で日常的に押すことを勧めます。
「足臨泣」(第四、第五中足骨を圧上して指の止まるところ)
古来、めまいの名穴です。片頭痛にもよく効くツボです。
「太衝」、「足臨泣」とも足の中心に向かい、押します。
「平衡器官帯」(第四、第五指の股の間から中足骨が交わるまでの陥凹部)
⑤右図「翳風」 えいふう (耳垂後方、乳様突起下端前方の陥凹部)
口を開くと陥凹部が現れます。自律神経を整えます。
「翳明」 えいめい (乳様突起の直下で、耳垂と同じ高さにある陥凹部)
「翳風」の指1本強後方に位置します。
「瘈脈」けいみゃく (耳の上角と翳風の耳の輪郭に沿って結ぶ曲線上、翳風から1/3で乳様突起中央の陥中)
圧痛点を選んで押します。
「翳風」、「翳明」、「瘈脈」とも平衡感覚を正常化します。
2. 次に項部、後頭部及び頭頂部の血流を改善し、こりを取ります。また、むくみも取ります。立ちくらみのめまいへの対処です。
①右図「玉枕」 (外後頭隆起直上陥中の傍ら指2本弱外側)
盆のくぼの中央より指3本上の横の線上になります。「玉枕」を含む下も2、3箇所押して下さい。この箇所を「枕下旁線」といいます。
「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)
体の正中線より指3本弱外側に位置します。
「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)
次の左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。
「健脳」 (風池より指幅1本下)
「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)
人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。
②右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下)
立ちくらみがするめまいの場合、東洋医学では消化器系の機能が落ちていると考えています。このツボはこの場合の最適なツボです。
この場合のめまいには首のコリを取ることが大事です。「首の痛み」ページも参照してください。蒸しタオルも有効です。お勧めします。
3. 自律神経を落ち着かせます。東洋医学の観点からは、気、水のめぐりを改善します。
①右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部)
髪の生え際から指幅7本上か7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。
「四神聡」 (百会の前後左右親指の幅1本)
「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。
「通天」 (「百会」の大体指2本強斜め前)
四神聡の前のツボと並びます。
「前頂」 (「百会」の指2本前)
「百会」と次の「顖会」との中間にとります。
「顖会」 しんえ (「上星(手関節横紋を鼻の先端に当て、中指先端の当たるところ)より指1本強後ろ、または髪の生え際から指幅3本上、押してくぼみを探す)
冠状縫合(左右頭頂骨と前頭骨との三骨の縫合)の中央にあたるところで、陥凹部を探ります。
「後頂」 (「百会」の指2本後)
②右図「腹腔神経叢」 (「湧泉」(足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)というツボを中心に第一中足骨と第二中足骨の間から、第三中足骨と第四中足骨の間までの範囲)
太陽神経叢ともいいます。自律神経を落ち着けます。特に、親指と人差し指のまたから踵方向に4cm下がったふくらみの稜線上、そして、そこから拇指球の下のくぼみまでの箇所が効きます。
「湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)
留意点です。
・頭頂部がむくんでいるときはめまいの前兆ととらえ、予防の意味でも「百会」のライン(督脈)のツボを押すことを勧めます。
・どのめまいでも発作時は「百会」、「顖会」が最もお勧めです。
・「通天」の縦のライン(膀胱経)も有効です。