ここ数年、コロナ、リモートワーク、成長しない日本経済等ストレスフルな生活に加え、特に今年(2022年)は気候の変動が激しく、眼精疲労、頭痛、頭重、首こり、肩こり、背中のこわばり、腰痛といった症状がまとめて出る人を少なからず見受けます。
この場合のご家庭で行う対処法をまとめました。1週間に数回はご家族に施術していただきたいと思います。
頭鍼療法のツボ、足の太陽膀胱経の経絡等を使います。
1. まず、頭のツボで脳の血流改善をします。
①右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部))
髪の生え際から指幅7本上または7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。
「四神聡」 (百会の前後左右親指の幅1本)
「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。
②次に右図督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(前頭部眉毛中央を上がった線及びその外側の線)という経絡(ツボの経路)を前髪際指2本下から後方に少しずつ上がっていきます。
特に督脈、前髪際指2本下から前髪際までの線(正中線から外側に向けて額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線)を念入りに押してください。脳活性化を狙います。
頭部の押し方には二つあります。
・ひとつは頭皮揉搓法です。人差し指、中指、薬指の腹で軽く押して前後にゆらしながら進みます。くぼみがあればそこをすこし揉捻します。表面を揺らしますと髪が引っ張られますので注意してください。高齢者、体力が弱っている方向けです。
・もうひとつは親指での指圧です。自分でやる場合は中指を使います。経絡に沿って指2本ずつぐらい離して押していきます。押したら3~5秒キープします。できれば、「頭のツボ図解」ページを参照し、督脈、頭頂部の膀胱経、胆経の個々のツボの位置を意識してください。
額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線は1984年WHO西太平洋地域事務局会議で同意が得られた「頭皮鍼穴名称国際標準」のツボです。
「額中線」 (頭の正中線、縦の線は前髪際から指2本下まで(縦の線は以下同様))
「額旁Ⅰ線」 がくぼういっせん (頭の正中線から指1本半外側)
「額旁Ⅱ線」 (まっすぐ前を見た状態で瞳孔を上がった線上)
「額旁Ⅲ線」 (額角から指半分内側)
③頭頂結節の下から側頭に近い後頭部にかけて、縦の線を押していきます。途中、アステリオンも押します。
右図「言語2区」 (頭頂結節の後下方2cmより下3cmの区域)
運動性の失語症(言葉は理解できるが発音がむずかしい)に効果があるといわれています。
「アステリオン(星状点)」 (ラムダ縫合、頭頂乳突縫合及び後頭乳突縫合の合点)
耳尖(耳介の尖がった先)の指1本弱上から指4本ほど後方のくぼみです。耳鳴りや目の養生で使います。
「後頭乳突縫合」 (後頭骨と側頭骨乳突部(側頭骨後方を形成する側頭骨の一部分)の間)
胆経という経絡のツボが並んでいます。側頭部の痛みや耳鳴り、難聴に良く効きます。
④次に右図側頭部の2本の線を押していきます。頭鍼で使用する頂顳前斜線(ちょうしょうぜんしゃせん)と頂顳後斜線という線です。コツは上述と同じです。
頂顳前斜線:「懸釐」(もみあげを上にたどり、眉の高さより少し上)~「前頂」 (「百会」の指2本前)の線
頂顳後斜線:「曲鬢」(もみあげ後縁の垂線と耳尖の水平線の交点)~「百会」(頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部)の線
2. 項部のツボで脳の血流改善をします。
仕事上や日常生活で前かがみの姿勢や首を前に倒す姿勢が多い場合、首から肩甲骨間にかけてこりが出ます。その場合の治療法です。
盆の窪に指を当て、上の方に指をずらしていくと骨の出っ張り(外後頭隆起)にぶつかります。その外後頭隆起の上下の横の線を押します。
目安として、
右図b1外後頭隆起の下の線(2本)、
b2外後頭隆起の上の線、
を中心部から側頭部にかけて押してください。
b1は上45度の方向に押し揉みます。
b2の線上には「脳戸」、「玉枕」、「脳空」というツボが並んでいます。
「脳戸」 (頭部、外後頭隆起上方の陥凹部)
「玉枕」 (「脳戸」の外方指1.5本強の小さなくぼみ)
「脳空」 (「玉枕」の外方指1.5本弱(「脳戸」の外方指3本)のくぼみ)
且つ、耳尖(耳介の尖がった先)の指1本弱上から指4本ほど後方のくぼみ(「星状点(アステリオン)」)も念入りに押して下さい。
「星状点」 (ラムダ縫合、頭頂乳突縫合及び後頭乳突縫合の合点) お勧めです。
3. 慢性的な首のこりに対する定番のツボです。
①右図「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)
次の左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。
「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)
体の正中線より指3本弱外側に位置します。
「健脳」 (風池より指幅1本下)
「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)
人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。
「肩井」 (第七頚椎棘と肩の骨の先端(肩峰角)を結んだ中央)
「天髎」 てんりょう (肩井の斜め内側後ろ親指幅1本)
②次は首の付け根のツボです。
「第六頸椎点」 (第6頸椎棘突起から左右親指幅1本)
指幅1本のみならず、2~4本離れた箇所も押してください。特に、3、4本目は肩を後にそらし首の付け根の筋肉が少しくぼんだところを軽く押し、そのまましばらくキープします。手掌部を当て、キープするのも良い手法です。古い傷による慢性的な痛みに効果があります。
4. 首から肩甲骨の高さのツボを使います。
①第五頸椎から第七頚椎までの棘突起の下縁の指1本弱外側を探り、強い痛みを発する箇所を押します。
② 肩甲骨間の背兪穴を押します。
右図「定喘」 ていぜん (第七頸椎棘突起下のくぼみから外側指1本弱)
「大杼」 だいじょ (第一、第二胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「風門」 (第二、第三胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「肺兪」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。
「厥陰兪」 けついんゆ (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「心兪」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「督兪」 (第六、第七胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」は左右の肩甲骨下縁を結んだ線上を目安にしてください。
③さらに背兪穴の指2本横には次のツボがあります。
「魄戸」 はっこ (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上で肋骨の間を目安にしてください。
「膏肓」 こうこう (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁、最も強い響きのあるところ)
重要なツボです。「魄戸」から「膈関」まで肋骨を一本ずつ下がります。
「神堂」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
「譩譆」 いき (第六、第七胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
「膈関」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
5. 首のこりを取るために補完をします。
胸鎖乳突筋の上、中、下を夾むようにして押します。
頸部のこわばりを取ることが目的です。顔を横にして胸鎖乳突筋を浮き出させて押します。よく効きます。
6. 補完のためにリンパの滞りを改善します。まず、鎖骨下リンパ本管に働きかけます。
①いずれのツボも中指で軽く押圧してください。
右図「欠盆」 けつぼん (乳頭線上(前正中線の外方指5本(鎖骨の中央))で鎖骨上方の陥凹部)
陥凹部の中心を、指を小さめに回して探ってください。
「気戸」 きこ (前胸部、前正中線の外方指5本、鎖骨下縁の陥凹部)
鎖骨の真ん中で鎖骨の下縁にあるくぼみの中の圧痛点に取ります。
「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下)
肋骨に沿って体の奥深く指を入れ込み、ゆっくりと押します。上肢の内側に響きます。
②鎖骨の上下を指で挟み、軽く外から内に向けてマッサージをします。
7. 次に腋下リンパ節に働きかけます。
①右図「肩貞」 (肩関節の後下方、腋下横紋後端の上方親指幅1本)
腋窩横紋端も含めて近辺も押してください。腋窩横紋端には「後腋下(ごえきか)」というツボがあります。
②右側図の矢印の方向にマッサージをします。