よく年配になっても若いときの体重を維持しなさいと言われますが、年をとるにつれて代謝が衰え、運動量も少なくなりますから、体重を維持するためには日常的な努力が必要です。基本的には有酸素運動及び筋肉トレーニングを合わせた形での運動で維持することだと思います。さらにインナーマッスルを鍛えるトレーニングを加えると理想的です。
それともうひとつおすすめは咀嚼です。一口30回程度を心がけてください。とはいっても数えていては食事が楽しめなくなります。のみこむ前にもう少しかみましょうという意識で良いと言われるドクターもいます。咀嚼は代謝を促進します。その効用はそれのみではなく、下顎の開閉、唾液の分泌、舌で食べ物と唾液の混ぜ合わせ、大脳への刺激等、筋・骨・神経系を総動員します。中国古典の医学書によれば、咀嚼は長生きの大きな要素の一つとしています。
ツボ療法は上記を補完し、体質を変えていきます。
肥満のタイプを内臓脂肪によるもの、皮下脂肪によるもの、水分によるものに分け、それぞれの代謝を促進するツボを使います。さらに、おなか周りのむくみや脂肪を取る手法、運動療法も紹介していきます。
《豆知識:ダイエットとホルモンの関係》
・「いやいや運動すると、コルチゾールの影響で、脂肪がたまりやすくなります」
:コルチゾールは副腎皮質から出るホルモンで、ストレスに対抗します。このホルモンは、筋肉を減らし、脂肪をため込む性質があります。ダイエットにストレスは厳禁です。
・「空腹を紛らわすため、ちょこっと食べを繰り返すとそのたびにインスリンが分泌され、体に余分な栄養をため込みます」
:インスリンは膵臓から出るホルモンで、血液中の糖をキャッチし、肝臓や筋肉にエネルギー、グリコーゲン、脂肪としてためます。
・「スナック菓子や揚げ物などの油っぽいものは、ドーパミンを刺激し歯止めが利かなくなります」
:ドーパミンは脳から出され、快楽ホルモンと呼ばれています。気をつけないと快楽から抜け出せなくなります。
(豆知識の参考文献)
・伊藤裕(2017)『ココロとカラダを元気にする ホルモンのちから』高橋書店.
・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.
三段腹というよりぽっこりと突き出たおなかへの対応です。皮下脂肪より内臓脂肪がついていると考えられます。下のツボと反射区で、消化器系の働きを高め、内臓脂肪の蓄積防止及び代謝を促進します。何としてでも改善したい肥満です。
①右図「天枢」 (臍の両傍指2本半~3本)
「大横」 (臍の両傍指3本+3本、乳頭線上(乳首から真下の線))
「帯脈」 (第十一肋骨端下方、臍と同じ高さ)
臍と同じ高さで圧痛点を探ります。真横より後の場合もあります。
「大巨」 (天枢穴の下指3本)
これらのツボは肌つやも良くします。効果が出るためには時間が必要です。毎日押すことを勧めます。そして、時々、ピップエレキバンを貼り、刺激を持続させてください。
②右図「胆嚢反射区」(右足の甲及び裏の第三、第四中足骨間隙の基部(足首に近い部分))
胆嚢反射区は右の足のみで、足の甲側、裏側双方にあり、特に甲側に圧痛が出ます。右足の第三指と第四指の指の股から5センチほど下になります。
胆汁酸は血液の中にも分泌され、脂肪細胞や筋肉細胞に作用して、代謝を促進し脂肪を燃やすホルモンであるインクレチンのGLP-1の分泌を促します。
③「肝臓ゾーン」 (右足裏にあり、第二中足骨より第五中足骨のほとんどをカバー)
このゾーンも右足のみです。足の裏側で外側(第四中足骨)4センチほど下にも圧痛を感じると思いますので、念入りに押してください。この箇所は外側に向けて押します。
④次に「鼠径部リンパ腺ゾーン」 (内踝と外踝をつないだ線)です。
押し揉むか、指圧棒でこすり上げてください。特に内踝と外踝の下を念入りに押し込んでください。
⑤さらに右図「解谿」 (長拇指伸筋腱と長指伸筋腱の間で、内踝尖と外踝尖を結ぶ線上に取る)も押し揉んでください。
足関節の前面に指を当て関節を屈伸させると、内から前脛骨筋腱、長拇指伸筋腱、長指伸筋腱が触れます。
《豆知識》
・メタボリックシンドロームの診断基準のひとつに腹囲があり、男性は85cm以上、女性は90cm以上となっています。この基準は日本だけのもので他の国にはありません。CTの断面図を元に内臓脂肪の面積が100cm2を越すと糖尿病、高血圧などの発病率が高くなることが疫学調査からわかっています。この100cm2が男性では腹囲85cm、女性は90cmに相当するというわけです。女性は皮下脂肪が厚い分だけ腹囲が大きくなります。
・内臓脂肪と皮下脂肪の違いは次の点にあります。
-皮下脂肪から出る脂肪は、静脈を通って全身を巡りますが、内臓脂肪から出る脂肪は、門脈を通って肝臓へ流れます。脂肪肝や代謝上の変化を及ぼします。
-脂肪組織から分泌される生理活性物質をアディポサイトカインと言います。このサイトカインには善玉と悪玉があります。内臓脂肪が増加すると悪玉アディポサイトカイン(TNFα、PAI-1、アンジオテンシノーゲン)の血中濃度が増加し、反対に善玉サイトカイン(レプチン、アディポネクチン)の血中濃度が低下し、糖や脂質の代謝異常、血圧の調節、動脈硬化の発症等に影響を与えます。
(豆知識の参考文献)
・中屋豊(2009)『よくわかる栄養学の基本としくみ』秀和システム.
体脂肪率が高く、運動不足気味で、全体的に太っています。ここでは特に脂肪の新陳代謝を促進し、ホルモンバランスをとることを主眼とします。
①右図「脳ゾーン」(足の親指の腹全体)
手の拇指の腹または示指の横で押し揉みます。力が入らない方は指圧棒で押し込んでください。特に中心点の「脳下垂体ゾーン」を重点的に揉んでください。
「甲状腺、副甲状腺ゾーン」 (足の親指の付け根の下にある膨らんだ部分)
②右図「湧泉」(五指を屈し足底中央の最もくぼんだところ)
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」の反射区 (副腎の下のエリア、足裏中央付近のへこんだあたり)
「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)
「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)
③右図「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
「血海」 (大腿骨内側膝蓋骨内上角の上方指3本)
④右図「養老」 (指で尺側茎状突起の頂点を押さえて手掌を回外すると指が滑り込む骨の割れ目)
《豆知識》
・「体脂肪は、少ない方が良い」この常識は女性には当てはまらない。
更年期以降は女性ホルモンが次第に減っていくため、女性もさまざまな病気にかかりやすくなってくる。更年期を過ぎると、女性ホルモンを作る卵巣が萎縮していくのだが、その代わりに副腎皮質で作られた男性ホルモンが女性ホルモンに変わる。その作業が脂肪組織で行われる。中年を過ぎた女性はあまり痩せすぎない方が良い。
(豆知識の参考文献)
・三石巌(2014)『健康常識100のウソ』幻冬舎.
全身がぷよっと柔らかく、特に下半身が太っています。水分の代謝を促進するツボを使います。
①項番2「脂肪太り(皮下脂肪型)」でも紹介した水の排泄系を促進するツボや反射区が有効です。お勧めです。
右図「湧泉」(五指を屈し足底中央の最もくぼんだところ)
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」の反射区 (副腎の下のエリア、足裏中央付近のへこんだあたり)
「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)
「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)
②
特効穴です。
右図「水分」(臍の上指1本)
右図「復溜」(内踝の上指3本アキレス腱の前縁)
天城流湯治法で有名な杉本錬堂先生の著書から、おなか周りのむくみや脂肪をとる手法を紹介します。皮下脂肪にある水分の代謝を促進し、おなかにある皮下脂肪の体積を減らすという狙いです。
手法については、一般の方がセルフでやりやすいように少しアレンジしています。
即効性はありますが、続けることが大事です。何もしないでいると数日で元へ戻ってしまいます。
①おへその周りのむくみや脂肪
・肋骨弓、腸骨、恥骨の縁に(骨の内側に向けて)指を入れ、剥がす(引く)ようにほぐします。
・その後、おへその周りの脂肪をつかみ(つまみ)、絞ります。
②脇腹のむくみや脂肪
・仰向けに寝て、仙腸関節に拳を当て、上から体を押し込みます。
・その後、脇腹の脂肪をつかみ(つまみ)、絞ります。
③所要時間(①+②)
・一日2セット、3~5分/1セット
(本項の参考文献)
・杉本錬堂(2015)『天城流湯治法エクササイズ』ビオ・マガジン.
本ページのダイエットは東洋医学でいう後天の気のひとつである大地からの穀気 (食物の栄養)を養いながら、代謝促進を基本としています。しかし、人によっては過食でお悩みの方もいらっしゃると思います。そのような方向けへのツボの紹介です。特にストレスによる過食防止です。
食事の10~15分ぐらい前に、2~3分押し続けます。
右図「飢点」 (耳珠の前のやや下) 一番のお勧めのツボです。
「やや下」 の目安は、耳珠の中心を通る水平線と耳の穴の下にある切れ込みの水平線の間を3等分し、上の1/3の中心としてください。食欲を抑えます。「飢点」には二つ説があります。その1は「外鼻」(耳珠の膨らみの中央よりやや頬によったところ)、その2は耳珠の前のやや下です。本ホームページでは後者を採用しています。依存症治療の代表的なツボです。と言っても、1~2mmしか離れていません。
「上肺」、「下肺(かはい)」(耳甲介腔(耳の穴につながる大きなくぼみ)の中央の上下)
このツボは 新陳代謝、血行、排泄を促進し、ダイエットのほか、風邪、便秘、肌のかゆみ等への幅広い効果があります。
「神門」 (対輪上脚と対輪下脚によってできる角の上、対輪上脚寄り)
気持ちを落ち着かせます。「飢点」とともにお勧めのツボです。
仰向けに寝て膝を立て、おなかの筋肉をゆるませます。左右の親指と中指及び薬指で二つのツボを含む緑色のエリア(皮下脂肪)をつかみ、20~50回ぐらい押し揉みます。少なくとも朝起きたときと夜寝るときに寝床で行って下さい。それ以上行った方がより効果があります。
即効性はありますが、続けることが大事です。何もしないでいると数日で元へ戻ってしまいます。
「府舎」 (鼠径溝の中央から指1本上方)
「腹哀」 (上腹部、臍中央の指4本上方、前正中線の指3+3本外方)
おなかのまわりを絞るための運動療法として、簡単で毎日できる横回転の「スワイショウ」という気功法がお勧めです。
①左右の肩の線や上腹部を横にねじります。できるだけウエストのひねりは抑え、胸部や上腹部を横に向けることを意識します。これが次項のでんでん太鼓のようなねじりとの大きな違いです。
・腕は横に振りますが、体の前、後に振り分けます。
・足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。
・両手は肩の位置に横に伸ばしておきます。どちらでも良いですが、仮に右腕を体の前でふるとしたらとしたら、左手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を左横に向けます。
・次に両手は肩の位置に横に伸ばす姿勢に戻します。今度は左腕を体の前でふり、右手は体の後ろ側にふります。同時に胸部や上腹部を右横に向けます。
・これを繰り返します。
②でんでん太鼓のように、ねじりを入れ回転します。
・立った姿勢で、足を肩幅ぐらいに広げて立ちます。その際、つま先は広げず、正面を向けます。
・腕の力を抜いて、腕を垂らしたまま、頭頂から背骨、尾骨の縦の線を軸にして、ウエストをひねって回転運動をします。ウエストを横に向けることを意識します。足の床への接着面はそのままです。
・腕と肩の力を十分に抜き、腕は体に巻きつくように任せる感じです。
・首もあわせて回しますが、めまい防止のため回しすぎないでください。
・首は正面を向いたまま、回さない方法もあります。
・猫背で首が前に出る姿勢の方は首を前向きに固定したまま、腰をひねる方法を勧めます。
・左右に巻きつくとき口からふっと息を吐きます。吸うときは自然に任せます。但し、無理をする必要はありません。自然に任せてください。