●快楽、集中、戦闘
●ストレス、成長(すこやか)、燃焼
●愛情、幸せ、睡眠
まずホルモンの基礎知識からです。
・ホルモンの定義には狭義と広義があります。
・狭義の「ホルモン」は「ある臓器の細胞から分泌され、血液中を流れ、全身を循環し、目的の細胞に到着すると指令を伝える物質」と定義されています。
・血液中に放たれたホルモンは全身を巡りますが、自分をキャッチする受容体を持った細胞に反応し、それ以外は素通りします。
・一方、「細胞が分泌する細胞でも、血管の中に入ることなくごく近くにいる細胞に作用する物質」を「サイトカイン」と呼びます。
・また、神経の細胞(ニューロン)から分泌されて他の神経細胞に働く物質は「神経伝達物質」と呼びます。
・研究が進むにつれ、上記の「ホルモン」、「サイトカイン」、「神経伝達物質」をあわせて広義の「ホルモン」と定義するようになりました。
・体中のほとんどの臓器からホルモンが分泌されます。
・ホルモンはアミノ酸から作られるものとコレステロールから作られるものがあります。アミノ酸系にはドーパミン、セロトニン、成長ホルモン等があり、すぐに反応するのに対し、コレステロール系にはコルチゾール、エストロゲン、テストステロン等があり、ゆっくり反応します。
・通称:快楽ホルモン
・分泌部位:脳
・分泌のタイミング:
-楽しい経験やうれしい経験をしたとき
-欲しいものをゲットしたいとき/したとき
-好きな人に会うときのワクワク感
-(有酸素)運動をした直後にドーパミンの分泌量が増え、数時間はその状態が続く
・役割:
-興味を持ったものを手に入れたいと思わせる
-目標を達成したとき、喜びや幸せを感じさせる
-ノルアドレナリンをつくる
(ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンの順番で生成)
-運動してドーパミンを増やせば、(脳内)報酬系と前頭葉、二つの「集中力を左右する部位」に一気にアプローチできる
・分泌が過剰に放出されると:
-その快楽に依存してしまい、抜け出せなくなる
・ドーパミンの分泌がうまくいかずに減少すると:
-パーキンソン病
・活性化するためには:
-日常的に目標を立て、こなしていく
・通称:集中ホルモン
・分泌部位:脳、交感神経(←闘争モード←緊張)
・分泌のタイミング:
-不安や恐怖など、ストレスを感じたとき(→不快なことを避ける)
・役割:
-集中力や判断力を高める
-記憶力や学習能力を高める
-ストレスに対抗する
-心拍数や血圧を上げる
-アドレナリンをつくる
・注意
-緊張や不安が続くとイライラ
・通称:戦闘ホルモン
・分泌部位:副腎(髄質)
・分泌のタイミング:
-交感神経が刺激されたとき、戦闘モードになったとき
-強いストレスを感じたとき
-アドレナリン分泌のピークは、怒りを発してから「6秒後」、アドレナリンの半減期は「40秒後」→怒りをコントロールするヒントになる
・役割:
-さまざまな臓器へ、緊急時に備えるようサインを送る
-筋肉の収縮率を高めるなど、身体的機能を向上
-心拍数や血圧を上げる
・注意
-体への負担は大きい
・通称:ストレスホルモン
-慢性的なストレスによって、海馬だけでなく、前頭葉も萎縮する
・分泌部位:副腎(皮質)
-刺激→視床下部→下垂体→副腎
・分泌のタイミング:
-起床時
-ストレスを感じたとき
・役割:
-ストレスに対抗する
-血糖を上げる
-強力に炎症を抑える
-免疫機能を抑える
-成長ホルモン、甲状腺ホルモンの働きを強める
・運動の効果
-定期的に(有酸素)運動を続けていると、運動以外のことが原因のストレスを抱えているときでも、コルチゾールの分泌量はわずかしか上がらなくなっていく⇒運動はストレス反応を鎮める
・通称:すこやかホルモン
-体の成長を調節するホルモンは、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンの3つがあり、成長ホルモンは主役
-”頑張らせるホルモン”ではあるが、過剰になると、かえって体を疲れさせてしまう
・分泌部位:下垂体
・分泌のタイミング:
-眠っているとき(寝る子は育つ)
⇒寝ない子は太る(睡眠時間が短くなり成長ホルモンが足りなくなると脂肪が燃焼しにくくなる)
-強度の高い運動
・役割:
-骨や筋肉の成長促進
-新陳代謝の促進
-血糖を上げる
・日常的に自分でできるこのホルモンの活性化:
-睡眠時間の確保
-夜ブルーライトを浴びない
-眠るときは部屋を真っ暗にする
・通称:燃焼系ホルモン
-ミトコンドリアの量と活動を増やし、エネルギー代謝を回してエネルギー(ATP)を産生して、体内の新陳代謝を促進
・分泌部位:甲状腺
・分泌のタイミング:随時
・役割:
-栄養素(糖分や脂肪)を燃やしてエネルギーに換える
-体温を上げる
-元気よく成長させる
-成長ホルモンの働きを助ける
・通称:愛情ホルモン
・分泌部位:下垂体
・分泌のタイミング:
-育児、スキンシップ、心地よいおしゃべり(SNSは該当しない)
-ペットとのふれあい
-愛おしいという気持ち、ペア・ボンドの気持ちを高める
-親切、社会貢献、ボランティア活動
・役割:
-パートナーとの絆を強める
-幸福感をもたらす
-母乳を出しやすくする
-コルチゾールの分泌を抑える
-セロトニンの分泌を増やす
・通称:幸せホルモン
・分泌部位:腸(に多い)、脳(脳幹)
・分泌のタイミング:
-朝、太陽の光を浴びる
-規則正しい生活や軽い運動
-やすらぐ、癒やされる、ポジティブで前向きな気分になる
-魚や肉、大豆、緑黄色野菜、ナッツ類、乳製品などに含まれる「トリプトファン」(必須アミノ酸)から作られる
・役割:
-心のバランス(平常心)を整える/保つ
-ストレスを緩和する
-生体時計をリセットする
-腸内環境を整える
-ド-パミンやノルアドレナリンの働きを抑える
・活性化するためには:
-リズムのある生活、運動、太陽の光を浴びる
・通称:睡眠ホルモン
・分泌部位:脳
・分泌のタイミング:
-夜、眠くなると分泌が高まる→夜間にしか分泌されない。
-セロトニンから作られる
→昼間セロトニンをたっぷり合成・分泌されておく必要がある
・役割:
-質の高い睡眠
-生体時計のリズムを調整⇒生活リズムの調節
-活性酸素の除去(強力な抗酸化作用)
-免疫力を高める
・注意
-LEDの光はメラトニンの分泌を強力に抑える
・日常的に自分でできるこのホルモンの活性化:昼間十分に光を浴びる
-昼間の覚醒を演出するセロトニン
-夜の睡眠を演出するメラトニン
(参考文献)
・有田秀穂(2020)『医者が教える疲れない人の脳』三笠書房.
・アンダース・ハンセン(2018)『一流の頭脳』サンマーク出版.
・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.
・伊藤裕(2018)『ホルモンのちから』高橋書店.
・樺沢紫苑(2020)『精神科医が教えるストレスフリー超大全』ダイヤモンド社.