不妊の器質的な原因がない場合、東洋医学では体質に起因すると考えます。
本ページでは妊娠しやすい体作りを目指すツボ療法を紹介します。
東洋医学は生体を維持する要素として気血水(きけつすい)があると考えます。気血水が中庸で且つ滞りなく巡っていることを最良としています。
気は生命を生かしているエネルギー、血は血液及び精神を養い安定させるもの、水は体をめぐる水液(血を除く)の総称です。
気血水の観点から原因を次のように分類しています。
①血虚:血が不足しており、血の働きが衰えているタイプ
→体を養う「血」が足りなくて、栄養が全身に回りません。月経の異常や貧血などを引き起こします。
②瘀血:血のめぐりが悪いタイプ
→全体的にまたは部分的に血の循環力が低下し、血が停滞した状態を言います。骨盤内にうっ血が起こり、冷え易くなったり、ホルモンのバランスが乱れたりします。
③痰湿:水が滞っているかまたは過剰なタイプ
→水が体を冷やし、余分な「水」が「気」と「血」の働きを妨害しています。
④瘀血と痰湿が混在するタイプもあります。
⑤胞寒:胞宮(子宮、卵巣、輸卵管)が冷えています。
⑥気虚、特に腎気虚:疲労倦怠感があり、気が不足しているタイプ
→「慢性疲労」の状態で、元気が感じられません。PMS(月経前症候群)があります。
⑦肝気鬱結→肝鬱気滞
→乳房部が張る、抑鬱、怒りっぽい、月経不規則といった症状が出ます。
体質の詳細説明は「体質とツボ」ページを参照してください。
・腎気虚はまず慢性疲労の状態を改善することです。赤ちゃんを産み、育てる体力、気力を作ること、体質改善に取り組むことが最初です。体質改善の方法は「体質とツボ」ページ腎気虚の項目を参照してください。
・肝鬱気滞は今一度ご自分の労働環境/ストレス/過労/生活リズム/冷えの状態について考えてみてください。
東洋の知恵です。老子は「やわらかく、しなやかに生きること」を教えています。ある意味、逃げることも大事だと思います。そして、悩みを分かち合える人がいること、相談する人がいることも大事です。最初にこういったことを考えゆっくり改善してください。「心の疲れ」ページ、「脳の疲れ」ページを参考にしてください。
・そのほかの体質の治し方は同じです。下腹部の気の活性化、血流改善を狙います。
1. 下腹部のツボを使います。
①古来より伝わる療法で、「中条流子はらみの灸」と名付けられています。昭和の名灸師と言われた深谷伊三郎先生が推奨している療法です。温灸を勧めます。
・口の横幅(口角から口角)を一辺とした正三角形を作り、頂点をへそに当て、底辺の左右に角の二穴
・太っている方は、正三角形の一辺を、口角の一端から鼻尖の下へ上がり、さらに反対の口角までの長さにしてください。
いずれの方法にしても圧痛点を探ってください。
肌をきれいにする美容のツボとしても有名です。
②上図「子宮」 (恥骨結合上縁中心から上方に親指幅1本さらに指4本横)
③下腹部を冷やさないように腹巻きを常用してください。
2. 次のツボも必須です。
①右図「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
気血をめぐらせ、瘀血を除きます。
妊娠をしたら、このツボの施灸は止めてください。
②「湧泉」 (五指を屈し足底中央の最もくぼんだところ)
「副腎」 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」 (第二、第三中足骨の近位端でリスフラン関節線の上)
腎虚を改善し、元気を取り戻します。
3. 踵には子宮、卵巣の反射区があります。
次のゾーンをお風呂に入ったときマッサージしてください。
①下左図「子宮ゾーン」(足の内側、内踝と踵骨の後下端を結んだ線の中点)
②下右図「卵巣ゾーン」(足の外側、外踝と踵骨の後下端を結んだ線の中点)
「子宮ゾーン」、「卵巣ゾーン」を含むまわり全体(緑色斜線部分)をマッサージしてください。
③下左図及び下右図「卵管ゾーン」 (内踝と外踝をつないだ線)
④アキレス腱からふくらはぎもしっかりマッサージしてください。特にふくらはぎの中央から外側にある滞り、硬くなっている足首をほぐしてください。
⑤踵、足首を冷やさないように、靴下をはいてください。
4. 食養生にも留意をしてください。
・味噌汁を勧めます。味噌汁はからだを温め、大豆には補血作用があります。具材は妊活をサポートするビタミンやミネラルなどを含む食材を工夫してください。
・瘀血、痰湿の場合は甘いもの・脂っこいものを食べ過ぎたりしないようにしてください。
(参考文献)
・入江靖二(1980) 『図説深谷灸法』 自然社.
・朱江ほか(2006)『[図でわかる]中医針灸治療のプロセス』篠原昭二監訳 和辻直ほか(訳) 東洋学術出版社.
・深谷伊三郎(1977)『名家灸選釈義』刊々堂出版社.
・杉本錬堂(2017)『天城流湯治法エクササイズ2』ビオ・マガジン.