呼吸困難

通常の呼吸がつらく、浅くなりがちで、たまに大きく息を吸わなければ酸素不足と感じる症状です。病院でX線写真や心電図をとり、血液検査をしても異常値が見つからない場合の対応です。原因として、呼吸筋の機能、東洋医学の臓腑論、筆者の経験から『呼吸に関連する筋肉が凝ることで呼吸に必要な「胸の膨らみ不足」』具体的には3つ考えられます。 

 

①第一は横隔膜に疲労がたまっています。水泳、おなかの周りのインナーマッスルを鍛える運動、筋トレ、有酸素運動が過負荷になっていることでこの症状になります。

②第二は吸息筋、特に肋間筋の衰えです。年配になると息が浅くなり、特に吸気が弱くなります。現代医学では呼吸は肺の機能ですが、中医学では、呼気や浅い呼吸は「肺」によって、吸気は「腎」によって行われているとされています。加齢とともに、腎が衰え、吸息筋が衰えます。

③第三は首の筋肉の疲労による硬化です。スマホ、本を読む姿勢の悪さが呼吸を浅くし、酸素不足となります。②と③は複合的に生じます。

 

治す上での留意点です。

横隔膜(上記①のケース)、肋間筋(上記②のケース)、首の筋肉(上記③のケース)に的を絞ります。

・運動によるものであれば呼吸筋の疲労となる運動がどれなのかを見極め、該当する運動の負荷を少なくします。全く運動を止める必要はありません。運動することの効果はすこしでも維持させます。

・吸気を円滑に行うためには「腎」を補います。

・スマホ、本を読む姿勢を改めます。首の筋肉を柔らかくするように努めます。

加齢とともに、呼吸困難の治療は長丁場になります。波を打ちながら薄皮を剥がすような感じで改善していきます。筆者の経験からいろいろな手法を下記に紹介しています。自分に合った手法を取り入れてください。

 

 

《豆知識》

・呼吸に関わる筋肉(呼吸筋)には、肋間筋、横隔膜、大胸筋等20種類以上ある。息を吸うときの筋肉(吸息筋)と息を吐くときの筋肉(呼息筋)とに分かれる。

・呼吸筋の中でも中心的な役割を果たしているのが肋間筋と横隔膜である。

・両者の内でも呼吸運動の主役として働いているのが肋間筋である。

・横隔膜は、呼吸筋の中で最も強い力を持つ。

起始部は第7~12肋軟骨内面、剣状突起後面、第1-3腰椎椎体の前面、停止部は横隔膜中央部の腱膜(腱中心)

・これらの筋肉が硬くなると呼吸が浅くなる。

・加齢とともに筋力も落ち、うまく吐き出すことができず、肺の中に多く残ってしまう。すると、次に吸うときに強い力が必要となり、呼吸筋に余計な負担がかかり、呼吸が苦しくなる。

 

(豆知識の参考文献)

・本間生夫(2014)『心と体をラクにする呼吸スイッチ健康法』大泉書店.

・本間生夫(2018)『すべての不調は呼吸が原因』幻冬舎.

 

1. 足の横隔膜の反射区を使い、呼吸筋、特に横隔膜の疲労を取ります

①右図足の裏側「横隔膜」 (親指~薬指の中足骨の中程からリスフラン関節の間)

特に拇指球の下部(青く塗るつぶしてあるところ)がよく効きます。一日3~4回この箇所を強めに深く押しこみます。

ピップエレキバンは張らないでください。かえってつらくなります。

 

右図足の甲側「横隔膜」 (リスフラン関節上)

横隔膜の反射区はいくつか説がありますが、本ページでは甲側の横隔膜はリスフラン関節上に取ります。

2. 肋骨弓やのどを温めます。よく効きます。胸全体、背中の上部も温めるとさらに効果的です。上記横隔膜、肋間筋のケースに有効です

①温める箇所は次の通りです。

・右図肋骨弓

・喉;右図「天突」(胸骨脛切痕の上縁陥中)の近辺

・背中、第12肋骨あたり

・胸全体、背中の上部

②温める方法はドライヤーか使い捨てカイロを使います。

・ドライヤーで1日数回温めます。環境が可能ならば、2~3時間おきに温めます。時間は2~3分です。皮膚が熱くなったら終わりです。

・胸全体、背中の上部へは衣類の上下からドライヤーの熱風を送り、その後着ている衣類で保温します。

・頻繁にドライヤーを使う環境でなければ(例えば勤務先)、肋骨弓と背中第12肋骨あたりのところを使い捨てカイロで温めてください。常時同じ箇所に張り続けるのではなく、温まったら場所を変えてください。

 

お風呂は必ず湯船に入ってください。すごく楽になります。

 

3. 特に吸息筋の疲労を取ります。上記肋間筋、首の筋肉のケースに有効です。

①肺経という経絡のツボを使って、小胸筋、大胸筋に働きかけます。

「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下) 

「雲門」 (鎖骨下縁を外方になぞると硬い骨(烏口突起)に当たる、その内側の陥凹部)

烏口突起に沿って2本の指をゆっくりと深く入れ込み、その後内側に向かって筋肉をはがすように引きます。ピップエレキバンを貼っても結構です。

その後、少し胸を反らした姿勢を続けると楽になります。注意点としては揉まないでください。

 

②胸鎖乳突筋の上、中、下を夾むようにして押します。 

頸部のこわばりを取ることが目的です。顔を横にして胸鎖乳突筋を浮き出させて押します。よく効きます。

③古来「頭項は列缺に尋ねる」と言われる首や肩甲骨上部の痛みやコリを取る有名なツボを使います。

右図 「列缺」(両手の拇指と示指のまたを交差させ、示指の先端が当たるところのくぼみ)

長押し(20~30秒ぐらい)することがコツです。ピップエレキバンを貼っても結構です。

 

4. 腎を強化します。上記吸息筋のケースに有効です。

右図「太渓」(内踝の後方、アキレス腱の前のくぼみ)

腎陰虚を補う名穴です。お灸かピップエレキバンがお勧めです。長い目で手当てをしてください。

5. 吸息筋を養生し、呼吸を楽にします。お勧めします。上記吸息筋、首の筋肉のケースに有効です。

①次の方法は簡単で確実に改善します。

痛みのある首の箇所に使い捨てカイロを当てます。一日数時間貼ります。低温やけどに要注意です。

数年にわたる慢性の場合は2~3週間かかりますが、症状が気にならなくなるぐらいまで楽になります。良くなっても数週間は継続してください。ぶり返すことがあります。

 

②立った姿勢で腕は下ろしておきます。まず、肩を後屈します。肩を後屈したまま、腕を挙げていきます。肘を伸ばしたまま、両手が重なるまで腕を挙げていきます。痛みがある場合はそこで止めます。そして、肩を後屈したまま下げます。この動作を4~5回繰り返します。一日4~5セット行います。

腕を挙げるとき、鼻から息を吸います。お腹をへこませます。下げるとき、鼻から息を吐きます。お腹をふくらませます。肩を後屈したまま動かすのがポイントです。肩を前屈したままの姿勢が生活習慣になっていることに気がつきましょう。 

症状がなくなってもこの運動法(呼吸法)は日常的に続けてください。 

 

③肋間筋を直接養生します。

各肋骨の間に指をゆっくりと深く入れ込み、その後筋肉をはがすように引きます。内側(身体の正中)から外側に向かって少しずつ肋間を移動していきます

少し吸息がつらいと感じたときに1日何度でも行います。筆者のお勧めの手法です。背中は手が届きにくいので届く範囲で結構です。

あくびをするのも有効です。やり方は簡単です。

・椅子にすわり、首を後ろに倒し、顔の筋肉を全て緩め、口をぽかんとあけます。自然にあくびが出ます。

 ・親指と人差し指で耳の上、下、横を挟み、それぞれ上方、下方、横方向にそれぞれ3回ずつひっぱるとなおリラックスします。

 

6. 枕を低くするのもすごく有効です。筆者は低い枕にタオルを乗せて枕の高さを調整しています。その調整を低めにします。寝た直後は首が痛いですが、朝にはストレッチされて痛みが取れます。翌日呼吸困難にならない高さを見つけるのに何回(何日)か試行錯誤をする必要があります。筆者はこの方法を勧めます。首の筋肉の疲労による硬化のケースに有効です。

 

 

7. 注意点です。呼吸困難な状態のときには無理して深呼吸や腹式呼吸をする必要はありません。筆者の経験からいくと、普段は使わない筋肉や鎖骨を使って強引に呼吸をしようとし、かえって呼吸困難が増します。

 

項番5②のストレッチの際の呼吸法や5④のあくびで十分です。