・東洋医学は生命を生かしていくいろいろなエネルギーを「気」という概念で表します。「気」は一つではありません。運動、成長、免疫、防御、代謝、維持、治癒、思考、感情、記憶等、肉体的に、精神的に、いろいろな活動している「気」があります。
・個々の「気」は、相互に影響し合います。心の「気」と身体の「気」もしかりです。「気」は本来流れるのが良いのです。例えば、感情を自分の中にため込むと、「気」が滞り、「身体」にも負の作用をもたらします。
・東洋医学では臓腑を六臓六腑に分類していますが、その分類の中に「脳」というものがありません。「こころ」は六臓六腑全般にあると考え、「こころ」の不調は六臓六腑の経絡(ツボの経路)の全般に且つ相互に影響を与えるとしています。従って、「こころ」の不調は体にいろいろな症状が出てきます。
・中国古代の思想に五行思想があり、いろいろな事象を5つに分類しています。臓を「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」に分類し、それぞれの臓に影響を与える「こころ」の動きをそれぞれ「怒(いらいら)」、「喜」、「思(考えすぎる)」、「悲(沈む)」、「恐」と当てはめています。「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」の経絡を整えることで、それぞれの「こころ」の動きを中庸に戻し、体の不調も整えます。心身一如です。
最も中心となるのは、「心」です。神志(精神作用)を司るとし、いっさいの精神・意識・思惟は「心」の機能に帰するとされています。
本ページのツボ療法では、「こころ」の疲れに合わせた代表的な名穴を選んでいきます。
1. ツボ療法の話の前に
・東洋の知恵です。老子は「やわらかく、しなやかに生きること」を教えています。ある意味、逃げることも大事だと思います。
・そして、悩みを分かち合える人がいること、相談する人がいることも大事です。
《豆知識》
・ ほとんどの人は、プレッシャーの掛かる状態ではリラックスするのが一番良いと思っているが、本当は逆である。
・ ストレスを受け入れることは、勇気を振り絞って自分の力を信じる行為である。
・ 体はありったけの力や手段を利用できるように準備をして、あなたが目の前の困難にうまく対処できるように応援している。
・自分に問いかけよう⇒「目標にふさわしい行動を取るために、今この瞬間、私は何をすれば良いだろう、どんな選択ができるだろうか」
・ ストレスについての考え方を変えることは、あくまで変化を起こすためのものであり、治療法ではない。従って、苦しみがすっかり消え去ったり、問題がなくなったりするわけではない。けれども、あなたが積極的にストレス反応の受け止め方を変えれば、自分の持っている力に気づき、勇気を出すことができる。
・ いじめ、虐待、暴力、ブラック企業の場合は逃走すること、しかるべき機関に助けを求めること
(豆知識の参考文献)
・ケリー・マクゴニガル(2015) 『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』 神崎朗子/訳 大和書房.
2. それぞれの心の状態への対応です。
①不安、心配、憂いといった心情に対応します。「心」に関わるツボを使います。「こころ」の疲れで最も基本的なツボです。
右図「膻中」 (胸骨体の中央、両乳中穴を結び正中線と交わるところ、胸骨の正中で少し窪んだくぼんだところで按じて痛むところ、または、左右の脇の下を結んだ線の中点から真下の指4本)
古来、邪気を取り除くツボとして有名です。拇指の下のふくらみで、まるく揉みます。または、中指の先で静かに押さえます。
右図「神門」 (腕横紋上で尺側手根屈筋腱の橈側(親指側)にとる)
不安(パニック)を取り除き、気持ちを安定させます。片方の手の拇指で皮膚に直角に押し、示指の根元の方向に押しこんで脱力します。そのほうがひびきがあると思います。下右図の「三陰交」との組み合わせで心身症治療に使います。
「内関」 (腕関節掌側横紋の正中から指2本)
心窩部の痛みに効き、不安や動揺を抑えます。
右図手の「心包区」(中指を下がった手のひらの中央)
右図「合谷」 (第一、第二中手骨の基底部の前陥凹部にとる。やや人差し指側)
2020/2/5 NHKで放送された『東洋医学ホントのチカラ』で、「うつ病」治療の選択肢のひとつ、期待が高まっているツボとして、「百会」とともに紹介されていました。
《豆知識》
● なぜ人は不安やパニックを感じるのか
・脳の最も重要な任務は生き延びること
・不安・パニック発作・うつは危険から身を守るための脳の防御メカニズムである。
・脳は生き延びるために重要だと思う記憶を優先して保存する。とりわけ脅威や危険に関連した記憶を保存する。
・記憶は変化する。安全だと感じられる状況で恐ろしい記憶を取り出すと、時間をかけて記憶が変化していき、脅威が減っていく。
(豆知識の参考文献)
アンデシュ・ハンセン(2022) 『ストレス脳』 久山葉子/訳 新潮社.
《豆知識》
●運動によって慢性的なストレスを感じにくくなる
・慢性的にストレスを抱え続けている人の脳は2つの器官(海馬、前頭葉)が萎縮してしまっている。こうなるとストレス状態が続き、さらに海馬と前頭葉がむしばまれ、負のループが始まる。
・そこで運動が大事になってくる。
・運動をすると海馬の働きが活性化し、さらに前頭葉の機能も向上する。
・海馬は記憶を司る器官として有名だが、感情を暴走させないためのブレーキの役割も担っている。
・前頭葉は抽象的思考や分析的思考を行う。理性を司る。
●運動することで生成される脳内最強物質を紹介する
・BDNF(脳由来神経栄養物質因子)という脳内の細胞が傷ついたり、死滅したりしないように保護してくれる物質(タンパク質)である。
・BDNFは頭を打ったときにも分泌される「脳の救助隊」でもある。
・BDNFは新しく生まれた細胞の成長を促したり、脳の細胞間のつながりを強化したり、細胞の老化を遅らせたりする効果まである。
・うつ病の原因はセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンが不足することだと考えられてきた。しかし、実はうつ病の症状を最終的に取り除いてくれるのはセロトニンやドーパミンそのものではなく「そこから生成される別の何か」だった。それがBDNFである。
・BDNFは口から取り入れたり、血管に注射をしても、血液脳関門というバリアを通過することができず、脳まで到達しない。脳内で作り出す必要がある。それが有酸素運動である。
●1つの目安として30分間のウォーキングである。
・週に3回40分間早足で歩く。この運動をすることでBDNFが生成され、海馬の成長が促される。
(豆知識の参考文献)
・アンデシュ・ハンセン(2022) 『運動脳』 御舩由美子/訳 サンマーク出版.
・アンダース・ハンセン(2018) 『一流の頭脳』 御舩由美子/訳 サンマーク出版.
②思い悩み、考えすぎによる落ち込み、沈み込みを和らげます。胃腸系の経絡「胃」、「脾」のツボを使います。
右図「中脘」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から臍までの線の中央)
臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る方法が分かりやすいと思います。
右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下)
消化器系を整えます。次項の「湧泉」、「足三里」とも慢性疲労から回復させ、気力を取り戻します。気力を取り戻すことは打開策を生むためにも必要です。
右図 「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
③おそれやくじけそうになる気持ち、落ち込みへの対応です。「腎」のツボを使います。
右図「湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)
「副腎ゾーン」 (「湧泉」の真下)
特に「副腎ゾーン」は大事です。
次のツボも腎の虚を改善する名穴です。
「照海」 (内踝の直下の陥中)
内踝の直下、指幅半分または指1本強と二つ説がありますが、割れ目を狙い、圧痛点を探ります。親指で上向きに押します。
「復溜」(内踝の上指3本アキレス腱の前縁)
《豆知識》
パワハラへの対処の参考となる文章を下記の参考文献から抜粋しました。()内は筆者が加えました。
・(相手の)怒りのスタイル:爆発的な怒りのスタイルである。危険で、強力で(まわりを)不安にさせる。これらのスタイルの人は、非常に怒って制御不能になる。
-突然の怒り:彼ら(相手)を怒らせる手がかりを認識して、怒っていく過程を減速させることを学ばなければならない
-恥に基づく怒り:(相手は)自尊心が低く、批判に過敏である、自分のことを人が過小評価していると捉えるようになる
-意図的な怒り:(相手は)故意で、人を怖がらせて自分の思ったとおりにことを運ぶのにこの意図的な怒りを使う。しばしば裏目に出る手荒な方法だが、時に効果があるのであきらめにくい
-興奮するための怒り:(相手は)興奮すること、自分が生きている、強いと感じることを求めている
・いずれも(相手は)過去に生きていて、人生を楽しめていない。
・目標とするのは、問題を解決することにあって、単に自らの気持ちを示すことではない。
・(こちら側も)必要なときには行動に出るが、それは、その状況について慎重に考えてからである。
・適切な距離感を取ることは、人間関係でのストレスを小さくするのに大切である。
(豆知識の参考文献)
・ロナルド T.ポッターエフロン、パトリシア S.ポッターエフロン(2016)『アンガーマネジメント11の方法』 監訳 藤野京子 金剛出版.Page170~171
・安藤俊介(2017)『誰にでもできるアンガーマネジメント』KKベストセラーズ.
④悲しみや切なさによる気分の落ち込みを和らげます。「肺」のツボを使います。
右図「中府」 (鎖骨の外端の下方の陥凹部から指1本半下)
肋骨に沿って体の奥深く指を入れ込み、ゆっくりと押します。上肢の内側に響きます。
右図「太淵」 たいえん (手関節掌側横紋の橈側端、陷中)
⑤イライラ、怒りを鎮めます。「肝」のツボを使います。
イライラして気分が鬱屈したときのツボです。
右図「行間」 こうかん (足背、第一、第二足指間、みずかきの近位、赤白肉際)
経絡の熱を取るツボ「滎穴」と呼ばれ、イライラを取る名穴です。
「太衝」 (第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)
肝の経絡の異常の有無がもっともよくあらわれる「原穴」という重要なツボです。
イライラには、上記項番2①の「神門」、「内関」、次項の「百会」も有効です。
次のような事例があります。
・中性脂肪の値が異常に高い場合、次がどうなるかを考察してみます。
中性脂肪は肝臓に蓄えられ、肝臓の負荷が大となり、機能低下となります。時に脂肪肝となります。もともとイライラ感がありますが、肝が弱まると気血の流れが滞って、さらに抑鬱やイライラ感が増します。これを「肝気鬱結(かんきうっけつ)」といいます。
・肝気鬱結の状態が長く続くと腎にも影響を与え、腎の水分代謝の機能も落ちます。この状態を肝腎陰虚証といいます。
・また、肝の相克関係(相互抑制、相互制約)にある脾胃(消化器系)にも影響を与え(肝脾不和)、飲食の不摂生につながります。そうなるとますます水分代謝の力が低下し、処理できない水分(湿邪)がたまり、「湿熱」という状態になります。
・湿熱は高脂血症、痛風、糖尿病、動脈硬化等を引き起こす要因にもなります。
・要注意のパターンです。早めにこの連鎖を断ち切る必要があります。
《豆知識》
・安保徹先生の著書より抜粋です。
「イライラが続いてうまく頭が冷やせないという人は、気分転換も兼ねて、とにかく歩くことを心がけてください。歩くことで下半身が刺激されるため、上半身(脳)への血液の偏りが解消され、自然と冷静さが取り戻せるようになるからです。」 177ページ
(豆知識の参考文献)
・安保徹(2010)『人が病気になるたった2つの原因』講談社.
3. 心の疲れに加え、頭が重い、頭痛が出やすいと言った症状の対応です。下記のどの方法でも結構です。
①右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部))
髪の生え際から指幅7本上または7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。
「四神聡」 (百会の前後左右親指の幅1本)
「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。
②次に右図督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(前頭部眉毛中央を上がった線及びその外側の線)という経絡(ツボの経路)を前髪際指2本下から後方に少しずつ上がっていきます。
特に督脈、前髪際指2本下から前髪際までの線(正中線から外側に向けて額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線)を念入りに押してください。脳活性化を狙います。
頭部の押し方には二つあります。
・ひとつは頭皮揉搓法です。人差し指、中指、薬指の腹で軽く押して前後にゆらしながら進みます。くぼみがあればそこをすこし揉捻します。表面を揺らしますと髪が引っ張られますので注意してください。高齢者、体力が弱っている方向けです。
・もうひとつは親指での指圧です。自分でやる場合は中指を使います。経絡に沿って指2本ずつぐらい離して押していきます。押したら3~5秒キープします。できれば、「頭のツボ図解」ページを参照し、督脈、頭頂部の膀胱経、胆経の個々のツボの位置を意識してください。
③額(ひたい)にある頭鍼療法のツボです。押していただくとわかりますが、気持ちが和らぎます。
・まず、1984年WHO西太平洋地域事務局会議で同意が得られた「頭皮鍼穴名称国際標準」のツボです。
「額中線」 (頭の正中線、縦の線は前髪際から指2本下まで(縦の線は以下同様))
「額旁Ⅰ線」 (頭の正中線から指1本半外側)
「額旁Ⅱ線」 (まっすぐ前を見た状態で瞳孔を上がった線上)
「額旁Ⅲ線」 (額角から指半分内側)
・次は宮崎県日南市から山元敏勝先生が世界に発信している山元式頭鍼療法のひとつです。
「眼」、「鼻」、「口」 (正中線から1cmの両側、生え際から2cm下、1cmごとに眼、鼻、口を配置)
「耳」 (鼻点の両側約2cm)
「頭部/頸部」 (生え際の位置で正中線から1cm両側、生え際上から下に向けて2cm)
「胸部」 (眉頭より1cm上、上方外側15度の角度で2cm)
(本項の参考文献)
・王暁明 (2015) 『頭鍼臨床解剖マップ』 医歯薬出版.
・加藤直哉・冨田祥史 (2019)『山元式新頭鍼療法の実践』山元敏勝監修 三和書籍.
④次に外後頭隆起の上下の横の線を押します。
目安として、
右図b1外後頭隆起の下の線(2本)、
b2外後頭隆起の上の線
です。
b1のラインから少し下の次項「風池」、「天柱」にかけては、頭が重い、頭痛が出やすいといった症状に加え、「落ち込む」、「やる気が起きない」といった時に有効です。第一頸椎、第二頸椎近辺から乳様突起までをやわらかくするのが狙いです。
b2の線上には「脳戸」、「玉枕」(ぎょくちん)、「脳空」というツボが並んでいます。
且つ、後頭部、側頭部を指で探るとあちこちに凹凸があります。くぼんでいて、少し痛いところを押します。これも効果的です。
「脳戸」 (頭部、外後頭隆起上方の陥凹部)
「玉枕」 (「脳戸」の外方指1.5本強の小さなくぼみ)
「脳空」 (「玉枕」の外方指1.5本弱(「脳戸」の外方指3本)のくぼみ)
⑤右図「天柱」(盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)
次の左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。
「風池」(僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)
体の正中線より指3本弱外側に位置します。
「健脳」 (風池より指幅1.5本下)
指幅1本下という説もありますが、本サイトでは1.5本下とします。
「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)
人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。
「肩井」 (第七頚椎棘と肩の骨の先端(肩峰角)を結んだ中央)
第二、第三、第四指を揃えて肩上に当て、第三指(中指)が当たるところで、押すとズンとひびきます。皮膚に対して垂直に押します。
「天髎」 てんりょう (肩井の斜め内側後ろ親指幅1本)
内側への斜め後ろのほうが響きます。
「第六頸椎点」 (第6頸椎棘突起から左右親指幅1本)
指幅1本のみならず、2~4本離れた箇所も押してください。特に、3、4本目は肩を後にそらし頸の付け根の筋肉が少しくぼんだところを押してください。古い傷による頸部や肩の慢性的な痛みに効果があります。
「肩中兪」(大椎穴の外方指3本離れたところ)
「肩外兪」(陶道穴の外方指4本離れたところ)
肩甲骨内側の上の角のわき(背骨側)にとります。「肩井」、「大椎」、「肩中兪」はほぼ横に並びます。
4. 心の疲れに加え、背中が重い、特に肩甲骨間が凝るといった症状への対応です。
右図「肺兪」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。
「厥陰兪」 けついんゆ (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「心兪」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」は左右の肩甲骨下縁を結んだ線上を目安にしてください。
「魄戸」 はっこ (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁)
「膏肓」 こうこう (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁、最も強い響きのあるところ)
「神堂」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁)
「譩譆」 いき (第六、第七胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁)
肩甲骨の間のツボは人に押してもらうことが一番効果的ですが、それができない場合は右図の足裏の第1中足骨のアーチ部分から少し外側の線を押していきます。棒状にかたくなっているところを念入りに押していきます。
5. 次は心の疲れ全般に関し、手の中指先端を使う手法です。
右図手の中指第一関節までの腹側、背側全体を揉みます。特に右側図の爪の生え際中央で第一関節寄り(ストレスポイント)、左側図のその真裏の腹側(脳下垂体)に対してチクチクと刺激をします。刺激をする道具として、片方の手指の爪か、シャープペンシル(芯を出していない状態)の先を使います。著名な鍼灸家松岡佳余子先生が著書で勧めている箇所です。
(本項の参考文献)
・松岡佳余子(2014)『指をもむと病気が治る!痛みが消える!』マキノ出版.
6. 同じく心の疲れ全般に関し、耳ツボを使う手法です。
次の図はノジェ式による三角窩(耳の上部、三角形をした浅いくぼみ)、耳垂(耳たぶ)のツボです。
各耳ツボは個別に爪等を使って軽く押さえます。
次の方法も勧めます。三角窩全体、耳垂全体の前側を人差し指の腹で、その後側を親指の腹で挟み、押しもみます。その後、三角窩はほんの少し上方に、耳垂はほんの少し後下方にひっぱります。気持ちを落ち着かせる効果が期待できます。
[注]
①「神門」 (耳の上部、三角形をした浅いくぼみ(三角窩)、正確には対輪上脚と対輪下脚によってできる角の上、対輪上脚寄り。三角窩を3等分し、後方1/3の区域の上方対輪上脚寄り)
精神安定、自律神経のバランス改善に著効のある最も重要なツボ
②「交感」 (対輪下脚と耳輪の交差部)
自律神経のバランス改善、安定に重要なツボ
③「攻撃性抑制点」 (珠間切痕縁の下、顔より)
依存症、重要な精神作用点
④「不安及び心配点」 (攻撃性抑制点の下)
不安、心配
⑤「抗鬱点」 (攻撃性抑制点と同じ高さ、耳輪の内側)
憂鬱な気分
⑥「悲しみ及び喜び点」 (耳垂の後頭部、不安及び心配点と同じ高さ)
生きる喜びの喪失、悲しみ
⑦「マスター・オメガ・ポイント」 (耳垂の下部(尾側部))
自律神経系の調和、重要な精神作用点
(本項の参考文献)
・ハンス‐ウルリッヒ・ヘッカーほか (2011)『鍼療法図鑑』兵頭明監修 東出顕子訳 ガイアブックス.