疲労感に対するツボ療法です。早めの手当てが肝要です。
手法の狙いは次の通りです。
・項番1~3は頭、項、肩、背中、腰における気(全身を回る生命エネルギー)の滞りをなくして疲労を回復する方法です。
・項番3の「腎兪」、「志室」及び項番4~5は気を補填し、疲労を回復する方法です。体質的には「気虚」、「腎気虚」の改善です。
心の疲れについては「心の疲れ」のページをご参照ください。
1. まず、頭から疲労を取ります。
①右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部))
髪の生え際から指幅7本上または7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。
「四神聡」 (百会の前後左右親指の幅1本)
「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。
②次に右図督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(前頭部眉毛中央を上がった線及びその外側の線)という経絡(ツボの経路)を前髪際指2本下から後方に少しずつ上がっていきます。
特に督脈、前髪際指2本下から前髪際までの線(正中線から外側に向けて額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線)を念入りに押してください。脳活性化を狙います。
頭部の押し方には二つあります。
・ひとつは頭皮揉搓法です。人差し指、中指、薬指の腹で軽く押して前後にゆらしながら進みます。くぼみがあればそこをすこし揉捻します。表面を揺らしますと髪が引っ張られますので注意してください。高齢者、体力が弱っている方向けです。
・もうひとつは親指での指圧です。自分でやる場合は中指を使います。経絡に沿って指2本ずつぐらい離して押していきます。押したら3~5秒キープします。できれば、「頭のツボ図解」ページを参照し、督脈、頭頂部の膀胱経、胆経の個々のツボの位置を意識してください。
③次に後頭部です。
目安として、
右図b1外後頭隆起の下の線(2本)、
b2外後頭隆起の上の線
を中心部から側頭部に向けて探ってみてください。b2の線上には「脳戸」、「玉枕」、「脳空」というツボが並んでいます。少し痛いですが、終わった後はすっきりし、思考力が増大し、頭がさわやかになります。
「脳戸」 (頭部、外後頭隆起上方の陥凹部)
「玉枕」 (「脳戸」の外方指1.5本強の小さなくぼみ)
「脳空」 (「玉枕」の外方指1.5本弱(「脳戸」の外方指3本)のくぼみ)
且つ、後頭部、側頭部を指で探るとあちこちに凹凸があります。くぼんでいて、少し痛いところを押します。頭がぼんやりする、考えたくない、重だるいといった症状を緩和します。不眠症にも効果があります。
2. 項、肩から疲労を取ります。
①右図「天柱」(盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)
次の左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。
「風池」(僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)
体の正中線より指3本弱外側に位置します。
「健脳」 (風池より指幅1.5本下)
指幅1本下という説もありますが、本サイトでは1.5本下とします。
「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)
人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。
「肩井」 (第七頚椎棘と肩の骨の先端(肩峰角)を結んだ中央)
第二、第三、第四指を揃えて肩上に当て、第三指(中指)が当たるところで、押すとズンとひびきます。皮膚に対して垂直に押します。
「天髎」 てんりょう (肩井の斜め内側後ろ親指幅1本)
内側への斜め後ろのほうが響きます。
「第六頸椎点」 (第6頸椎棘突起から左右親指幅1本)
指幅1本のみならず、2~4本離れた箇所も押してください。特に、3、4本目は肩を後にそらし頸の付け根の筋肉が少しくぼんだところを押してください。古い傷による頸部や肩の慢性的な痛みに効果があります。
「肩中兪」(大椎穴の外方指3本離れたところ)
「肩外兪」(陶道穴の外方指4本離れたところ)
肩甲骨内側の上の角のわき(背骨側)にとります。「肩井」、「大椎」、「肩中兪」はほぼ横に並びます。
②右図「完骨」 (乳様突起下端より後上方指1本弱(骨がくぼんだところ)または乳様突起下端より後下方、陥凹部)
3. 次に背中と腰から疲労を取ります。
①右図「魄戸」 はっこ (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。
「膏肓」 こうこう (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本、肩甲骨内縁、最も強い響きのあるところ)
わかりやすいとり方は、たとえば右側は、左腕を右肩から背中へ深くかけ、第三指(中指)の先で右の肩甲骨内側のふちを探りズンとひびくところです。
「神堂」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
「譩譆」 いき (第六、第七胸椎棘突起間脊柱の傍、指4本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線と肩甲骨下角(下縁)を結んだ線を4等分し、上から「魄戸」、「膏肓」、「神堂」、「譩譆」 と割り当てていくとわかりやすいと思います。肩甲骨の際の少し筋肉が盛り上がったところに取った方が効き目があります。その際、右ひじを少し上げ、前側にもっていき、肩甲骨を開いておくと取りやすくなります。
「肺兪」 (第三、第四胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
左右の肩甲棘突起内端を結んだ線上を目安にしてください。
「厥陰兪」 けついんゆ (第四、第五胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「心兪」 (第五、第六胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」 (第七、第八胸椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
「膈兪」は左右の肩甲骨下縁を結んだ線上を目安にしてください。
②右図「腎兪」 (第二、第三腰椎棘突起間脊柱の傍、指2本)
背中から触れる第十二肋骨の先端を結んだ線になります。
「志室」 (腎兪の傍、指2本)
押し方としては次の方法がお勧めです。
仰向けに寝て、小さなボールを2個タオルに巻いて腰に当てます。小さなボールとしてバウンドボール(直径56mm)がお勧めです。
4. 次に足のツボで疲労を取ります。
①右図「脳ゾーン」(足の親指腹全体)
手の拇指の腹または示指の横で押し揉みます。力が入らない方は指圧棒で押し込んでください。
「湧泉」 (足の五指を屈し足底中央の最も隅なるところ)
指圧するときは一番反応のある箇所を選んでください。指圧棒を使い、皮膚に直角に押し、最後に足先のほうに押しこんで脱力します。先天の気の回復を狙います。
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
②右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下)
③肩甲骨の脇のツボを自分で押すのは困難です。その場合の対応として、右図の足裏の第1中足骨のアーチ部分から少し外側の線を押していきます。棒状にかたくなっているはずです。踵の方まで探ってください。
5. 手のツボで疲労を取ります。
①慢性的な疲労感を回復します。気持ちも和らぎます。
右図「労宮(ろうきゅう)」 (中指、薬指を折り曲げて双方の先端の当たるところの中間、てのひらの真ん中)
中指、薬指双方の先端の中間ではなく、中指の先端という説もありますが、ここでは中間とします。手のひらの中心は「手心」と呼ばれるゾーンで、「労宮」のまわりも含めてゆっくり押してください。
→気ぜわしい気持ちを抑え、落ち着きを取り戻します。
「副腎(ふくじん)」 (手のひら、人差し指と中指の間で、知能線の下部)
→活力を取り戻します。慢性疲労に効きます。
「腎臓(じんぞう)」 (「副腎」の下)
→元気、精力を取り戻します。
《参考文献》
・森雄材 (1996)『中医学版家庭の医学』伊藤良監修 法研.