東洋医学からみた「病因」とは何か及び病因から見たセルフケアの留意点について説明したいと思います。
「病因」の分類については『中医学版家庭の医学』がわかりやすいので参考にしました。
東洋医学の病因の考え方は、直接的な原因よりも、背景にある生活習慣(飲食、労働、睡眠、運動、休息)、感情、生き方、気候、体質、老化に目を向けているのが特徴です。
1. 内傷
・外からの要因ではなく、身体自体に由来する要因で起こされる病変
①七情内傷
・怒、喜、思、悲/憂、恐/驚という七種類の感情が長期にわたったり、限度を超す場合、臓腑を損なう
・特にストレスによる怒り、イライラ、抑鬱は、肝、腎を損なう。肝の疏泄(そせつ)という働きを損なうことが痛い
・疏泄:全身の気血の流れをスムーズにする
・セルフケアは「肝機能向上」、「腎機能向上」、「心機能向上」、「心の疲れ」を参照してください
②飲食不節
・飢飽、不規則な食事、体を冷やす飲食、高血糖の食事、寒熱の偏り、五味(酸、苦、甘、辛、鹹(塩辛い))の取り過ぎ/偏り
・飢:食べないこと、偏食すること
・飽:満腹になること
③労逸不当
・過度の労働(労苦)、怠けすぎ(安逸)、不十分な睡眠、運動不足
・ストレス→上記の七情内傷に至る。特に怒、恐
・東洋の知恵です。老子は「やわらかく、しなやかに生きること」を教えています。ある意味、逃げることも大事、ストレスに強くなることが解決策ではありません
・悩みを分かち合える人がいること、相談する人がいることも大事。特に家族
④先天不足
⑤老齢化・虚弱化
・安保徹先生曰く「無理せず、楽せず」
・週150時間以上の有酸素運動、週3日以上の筋トレ及びバランス運動
・「志」を持つこと、「理性」で考えること、「深く」考えること
・田中美津先生曰く「大病になる前に何年にもわたって未病の状態がある」
「老齢化・虚弱化」は避けることができない最大の病因であり、その対応については「老齢化・虚弱化への対応」ページをぜひ参照してください。
2. 外感(六淫+α)
・季節、気候、環境等、外来の要因が発生させる病変
・自然界に存在する六種類の異なった気候変化を「六気」という。異常気象、急激な気候変化を「六淫」という。
①風邪(ふうじゃ、外風、本ページでは人工的な風も含める)
・冷房の風を直接体に受けることは絶対に避けること、避けることが困難の場合は衣類で防御のこと。温めるところは項部、下腹部、仙骨部、ふくらはぎ、足。常に夏でも湯船に入ること
・風邪は「百病の長」とも呼ばれ、身体上部を侵襲、衛気を損なう、遊走性がある(病状が動く)
②寒邪(外寒)
・体温の低下は最も避けることの一つ
・外部からの寒邪ではないが、水の飲み過ぎ、体を冷やす飲食物、汗のかきすぎ(汗を流すことは血を流すこと)、年中湯船に入らずシャワーも次の悪影響を受ける
・陽気を損傷(温める機能が落ちる)、凝滞(ぎょうたい、気血の渋滞)→疼痛、収引(気血の収縮)、血脈の攣縮、瘀血の原因(未病の大きな要因)、臓腑を直接損なう
③火邪(熱邪、外熱)
・火邪は内生したもの
・気と津液を損傷、腫れ物(炎症、化膿、腫瘍)をつくる
・人体上部にあらわれやすい
④湿邪(外湿)
・梅雨から秋雨にかけて発生
・外部からの湿邪ではないが、湿邪を作る冷飲食、多飲を止めること、これも避けなければいけない外邪のひとつ
・水湿が停滞→「痰湿」、「湿熱」という体質になりやすい
・脾の機能(運化)を損なう
・運化:飲食を吸収し、エネルギーとなる気と津液を生み出し、肺の力も借りて全身へ運搬する機能
⑤燥邪(外燥)
・肺(鼻咽喉を含む)を損傷しやすい
⑥暑邪
・梅雨から夏、湿を伴うと最悪、気と津液を消耗、65歳以上の人は要注意
⑦ウイルス、細菌、アレルゲン
(参考文献)
・森雄材(1996)『中医学版家庭の医学』伊藤良監修 法研.
・兵頭明(2018)『中医学の仕組みがわかる基礎講義』医道の日本社.
・安保徹(2014)『安保徹のやさしい解体新書 免疫学からわかる病気のしくみと謎』実業之日本社.
・田中美津(1997)『ぼーっとしようよ養生法』毎日新聞社.