痛風のツボ療法の説明の前にお願いしたいことがあります。
●痛風になりやすい体質の改善を最優先してください。
・高尿酸血症の約8割の方は、高血圧、肥満、耐糖能異常(糖尿病予備軍、境界型糖尿病)、脂質異常症といった生活習慣病が合併することが知られています。
・痛風になりやすい体質として、東洋医学の観点からみると「湿熱」という体質が考えられます。
・過剰な「水」と「熱」が体の中で結ばれ充満することで、「気」、「血」の働きを邪魔しています。より詳細は「体質とツボ」ページの「湿熱」をお読みください。
・体内の病的な湿邪の滞りが結石や痛風を起こす大きな病因です。
・食事によるプリン体摂取は全体の10~20%で、残りは体内で作られます。食品に含まれるプリン体より、如何に代謝を促進するか、具体的には「湿熱」からの脱却、肥満(特に内臓脂肪過多肥満)の解消、高温(暑邪)、湿気(湿邪)、水分の摂りすぎに要注意です。
・「湿熱」タイプの人は、基本的に食べすぎ・飲みすぎです。食事内容の見直しと、体内に溜まった湿熱を運動で消費することが不可欠です。
・但し、極度の激しい運動は逆に尿酸値を高めます。
《豆知識》
●高尿酸血症には3つのタイプがあります。どのタイプかは蓄尿検査などで知ることができます。
・腎負荷型(尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型)
→尿酸の排泄機能は正常なのに、体内で尿酸が過剰に作られてしまうタイプ。
日本では患者さんの約10%がこのタイプです。
激しい運動、強い精神的ストレス、過度の飲酒、肥満(食べ過ぎ)、一部の薬剤の副作用、遺伝的体質が原因としてあげられます。
・尿酸排泄低下型
→作られる尿酸の量は正常ですが、排泄機能が低下しているために体内に尿酸が処理されずに残ってしまうタイプ。
日本人の患者さんの約60%がこのタイプです。
体質的に腎臓で尿酸を排泄する能力が低いことが原因ではないかと考えられています。そのほか、動脈硬化症や高血圧症、糖尿病、腎炎といった病気に起因して腎機能低下が引き起こされる場合、また、過度の飲酒、激しい運動、肥満、薬剤の副作用なども排泄低下の原因となります。
・混合型
→尿酸の産生量が多く、かつ排泄量が少ないタイプ。
日本人の患者さんの約30%がこのタイプです。
●尿酸には過剰な活性酸素を無害化してくれる働きがあります。
多すぎても少なすぎても人間の体に悪影響を及ぼします。
(豆知識の参考文献)
日高雄二監修(2020)『患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症 改訂版』高橋書店.
それでは、痛風のツボ療法の説明に入ります。
ツボ療法の狙いは痛風発作の予防と発作時の痛みの緩和です。
・ツボ療法としては「脾」、「腎」、「肝」の経絡とツボを使います。
この3つの経絡は脚の内側を流れています。
・東洋医学では「水」の代謝には五臓の「脾」が密接に関係しているとしています。
・「腎」は全身の「水」を管理します。
・「肝」は、さまざまな栄養素を代謝、貯蔵するほか、胆汁の生成や分泌及び解毒や排泄等を行います。
1.脾の経絡のツボです。
「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
「漏谷」 (下腿内側(脛側)、頸骨内縁の後側、「三陰交」の上方指4本)
「地機」 (下腿内側(脛側)、頸骨内縁の後側、次の「陰陵泉」の下方指4本)
「陰陵泉」 (脛骨内側踝の下縁の陥中)
脛骨内側を膝に向かって擦上すると骨の湾曲部に至って止まるところにとります。
特に湿熱は「漏谷」と「地機」にかけての経絡の手当が必須です。そのラインにあるしこりと圧痛を探ってください。脛骨の際に指または爪をゆっくり入れ込み、その後筋肉を引きはがすように指または爪をスライドします。
2. 腎のツボ及び排泄系の反射区です。
右図「湧泉」 (足の五指を屈し足底中央の最も隅なるところ)
「湧泉」はお勧めの必須のツボです。
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」の反射区 (足裏中央付近のへこんだあたり)
「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)
「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)
右図「太渓」(内踝の後方、アキレス腱の前のくぼみ)
3. 肝の反射区及びツボです。
右図「肝臓ゾーン」 (右足裏にあり、第二中足骨より第五中足骨のほとんどをカバー)
このゾーンは右足のみです。特に、薬指から4センチほど下に圧痛を感じると思いますので、念入りに押してください。この箇所は外側に向けて押します。
右図「太衝」 (第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)
《豆知識》 痛風とビタミンA
・尿酸値が高くても痛風にならない人がいます。血液中の尿酸値が高くなると尿酸がナトリウムと結合し、針状結晶ができ、炎症を引き起こします。糖タンパクがあると尿酸はナトリウムではなく、糖タンパクと結合し、痛風になりにくくなります。糖タンパクをつくるにはビタミンAが不可欠です。
ビタミンAはたまご、牛乳、にんじん、ほうれん草(葉の部分)に含まれています。糖タンパク質とは、糖とタンパク質が結合した一群の物質の総称です。
(豆知識の参考文献)
・三石巌(2017)『医学常識はウソだらけ-図解版 分子生物学が明かす「生命の法則」』祥伝社.