糖尿病

糖尿病タイプ2(インスリンの分泌量が低下しているか、インスリンの血糖を下げる作用が弱くなっている)の、特に境界型の段階におけるツボや反射区を使った療法です。消化器系(「脾」)を中心に、それを支えている「肝」、「胆」、「腎」の機能向上、特に代謝向上を狙います。さらに、糖尿病合併症で起こる部位(神経、目、腎臓)へのツボや反射区療法も行い糖尿病合併症の予防も狙います。

食事療法(特に糖質制限)はもちろんのこと、1週間で150分の有酸素運動(少し強め)と筋肉トレーニング(体の大きな筋肉、特に下半身)は必須です。「自分でできる運動療法」、または「軽い筋トレ」を参照してください。

HBA1cはなかなか減りません。数年にわたる長い取り組みが必要です。境界型の段階で何とか治したいものです。

 

《豆知識》

・AGE(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)が糖尿病合併症の真犯人である。血液中の過剰なブトウ糖がタンパク質と結合することによって産出される。

・AGEは一度作られると、その後長く体内に残る。そのために、今血糖値が低く抑えられていても、過去に血糖値が高ければ20年後に合併症が出るということが起きる。

・一度糖尿病になった方はその糖尿病の記憶の一部分が「ほぼ一生つきまとう」ために「カラダの中に過去の高血糖とその期間が記憶されていて、治療を始めた後も糖尿合併症の進展が止まらない可能性」があることがわかってきた。

・体内でできるAGEの量は、「血糖値×持続時間」で表すことができる。血糖値が高いほど、体の中で糖とタンパク質が結びついて多くのAGEが発生する。そして糖にさらされる時間が5年、10年と長くなればなるほどAGEは溜まり続ける。

・血糖値を下げれば、糖尿病の合併症が減るわけではないという最初の研究が1970年に報告されている。 

・血糖値を下げたからといって、全ての合併症が予防できるわけではなく、血糖値だけを指標にしていては糖尿病の治療はうまくいかない。コレステロールや血圧、禁煙、体重など多くの指標が重要である。

 

 

(豆知識の参考文献)

・牧田善二(2016)『日本人の9割が誤解している糖質制限』ベスト新書.

・伊賀瀬道也(2016)『「血管力革命」健康寿命を延ばす46の知恵』冬樹舎.

・AGE測定推進協会ホームページ『AGEとは』、 閲覧日 2019-10-01、http://www.age-sokutei.jp/about/

・名郷直樹(2017)『病気と薬ウソ・ホントの見分け方』さくら舎.

 

1. 「脾」、「肝」、「胆」、「腎」を強化します。あわせて、自律神経を整え、代謝向上を狙います

足の反射区を使って、「脾」、「肝」、「胆」、「腎」を強化します。

右図「膵臓ゾーン」 (拇指球の3cmぐらい下のリスフラン関節上、斜線部分)

膵臓の働きを強化します。

「胃、十二指腸ゾーン」(足裏第一中足骨の基部)

消化吸収を正常化します。双方のゾーンとも指圧棒を使って押し揉みます。方向としては内側から外側に向けて押し込みます。

肝臓ゾーン」 (右足裏にあり、第二中足骨より第五中足骨のほとんどをカバー)

このゾーンは右足のみです。外側に向けて押します。特に、薬指から4センチほど下に圧痛を感じると思いますので、念入りに押してください。

胆嚢ゾーン」(右足の甲及び裏の第三、第四中足骨間隙の基部(足首に近い部分))

胆嚢反射区は右の足のみで、足の甲側、裏側双方にあり、特に甲側に圧痛が出ます。右足の第三指と第四指の指の股から5センチほど下になります。

胆汁酸は糖尿病に効果があるホルモン、インクレチンのGLP-1の分泌を促します。

湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)

副腎ゾーン」 (「腎臓ゾーン」の真上)

炎症を抑えます。

腎臓ゾーン」 (「副腎」の下で第二、第三中足骨の近位端でリスフラン関節線の上) 

「脳下垂体ゾーン」 (足の親指の腹の中央) 

「甲状腺ゾーン」 (足の親指の付け根の下にある膨らんだ部分)

親指の付け根、親指と人差し指の間も押し揉んでください。

 

自律神経を整えます

右図の「腹腔神経叢」 (「湧泉」(足の五本の指を内側に曲げた時にできるくぼんだところ)というツボを中心に第一中足骨と第二中足骨の間から、第三中足骨と第四中足骨の間までの範囲)も押しもんでください。

太陽神経叢ともいいます。

③お腹の定番のツボを使って、「脾」を強化します。

右図「中脘」 (胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から臍までの線の中央)

臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る方法が分かりやすいと思います。少し前かがみの姿勢で押します。

章門」(第十一肋骨尖端の下際)

肘関節を屈して肘尖の当たるところに圧痛を求めます。肘を90度に曲げ、さらに少しうしろに引いた方が第十一肋骨尖端に当たります。

 

「肝」を強化します。肝臓は糖代謝(糖新生と糖取り込み)に重要な役割を持っています。

右図「期門

このツボの取り方は二通りあります。

a1 (第6肋間、前正中線の指幅5本外方(乳頭中央の下方)

WHO(世界保健機関)で定義されている位置で、「巨闕」(胸骨体下端(肋骨弓が交差する部位)から指3本分下)というツボの指幅5本外方

a2 (第9肋軟骨付着部の下縁)

旧来定義されていた位置で、乳頭線上(正中線より指幅5本外方)で肋骨下縁(第9肋軟骨付着部にあたる)のやや内側のくぼみにとります。このくぼみはみぞおちから肋骨下縁を探っていくと2番目のくぼみになります。

糖尿病(境界型)の改善は、a1、a2の両方を押します。 

 

さらに、右肋骨下縁(オレンジ色の位置)に少し深めに指を入れ、下にスライドします。

 

「膵臓」を養生します。

前項の図の左肋骨下縁(茶色の位置)に少し深めに指を入れ、下にスライドします。

 

2. 糖尿病(境界型)の改善とともに合併症を予防するためのツボと反射区です

①まず、消化器系の内臓を養生します。そのために「按腹(おなかのマッサージ)」をお勧めします。「腎陽虚を改善する(按腹)」ページを参照してください。

 

②次に手や足の先端の神経障害の予防です。これらは糖尿病の改善のツボとしても勧めます。

右図「隠白」(足の母指内側、爪体の角を去ること2mm弱)

手の拇指の爪先で押します。

右図左側「小指尖」 (手の小指の先端)

右図右側「小趾尖」 (足の小指の先端)

双方とも爪で押し揉みます。特に手軽に押せるツボとして手の小指の先端のツボがお勧めです。

手軽にできる糖尿病改善法及び合併症予防のひとつです。手の各指を1本ずつ片方の手で握り、根元から先端に向けて、斜めの方向に回しながら押し揉んでいきます。各指5回ぐらい揉みます。一日何セット回行っても結構です。捏五指法という気功法です。

 

自律神経機能低下の予防です。

項番1の「腹腔神経叢」が該当します。

 

腎症の予防です。

項番1の「湧泉」、「副腎」、「腎臓」が該当します。

 

目の障害の予防です。

・目の周りのツボです。

3秒程度押し、1秒休み、これを3回程度繰り返します。このセットを一日数回行います。「晴明」と「承泣」は強く押さないでください軽く添える程度です。

右図「晴明」 (顔面部、内眼角の内上方と眼下内側壁の間の陥凹部)

目頭より内側やや上(3~4mm)の鼻根部の小さなくぼみで、鼻に向かって垂直に軽く押します。

「攅竹」 さんちく (眉毛内端の陥中)

親指か中指で上45度の方向に押し上げます。他の指は必ず支えに回してください。

「魚腰」(眉の中央部分の少しまぶたに下りた眼窩のきわ)

親指で上45度の方向に押し上げます。

「絲竹空」 しちくくう(眉毛外端の陥中)

小刻みに押します。

「瞳子髎」 どうしりょう (外眼角の外方指1本弱、骨が少し陥凹するところ)

「承泣」 (眼窩下縁瞳子の直下6~7mm、縦に線上のものがある)

 

・右図「太陽」 (目じりから髪の生え際に向かう間にあるこめかみの大きなくぼみ)

老眼予防にも効果のあるツボです。

「和髎」 (もみあげの後方、耳介の付け根の前方)

 

 

3. 糖尿病予防には過食防止は必須です。次の耳ツボを押してください。

食事の10~15分ぐらい前に、2~3分押し続けます。

右図「飢点」 (耳珠の前のやや下) 一番のお勧めのツボです。

「やや下」 の目安は、耳珠の中心を通る水平線と耳の穴の下にある切れ込みの水平線の間を3等分し、上の1/3の中心としてください。食欲を抑えます。「飢点」には二つ説があります。その1は「外鼻」(耳珠の膨らみの中央よりやや頬によったところ)、その2は耳珠の前のやや下です。本サイトでは後者を採用しています。依存症治療の代表的なツボです。と言っても、1~2mmしか離れていません。  

 

 

4. 糖尿病にお勧めの気功法です。撼天柱(かんてんちゅう)という気功法です。

気功家中健次郎先生が推奨している簡単で効果が高い気功法です。

・床に座る(あぐら)か、椅子に座ります。腰が痛い方は正座か椅子にしてください。

・背中の正中線上で、おへその後ろ側に「命門」というツボがありますが、このツボを大きく回すことを意識して、背骨を回します。

・左に9周、右に9周回します。

・横~後ろに回すときに吐き、後~横~前に回すときに吸います。

 

注意点は次の通りです。

・力を抜いて行ってください。

・急に終わらず、静けさを保ってください。

・食後一時間くらいは避けてください。

 

5. 有酸素運動及び下半身の筋トレは必須です。下半身の筋トレとして、特に「つま先立ちをし、踵を床に100回打ちつける」運動を勧めます。つま先立ちが困難な方は、枕元に木槌を置いておき、寝る前と朝起きたときに左右の足の踵中央の「失眠」というツボを木槌で少し強めに100回毎日叩いてください。

 

《豆知識》

・健康な骨からはオステオカルシンというホルモンが分泌される。オステオカルシンは、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を高める。骨粗鬆症の方は、オステオカルシンの分泌が減って、インスリンの分泌も減ってしまい、血糖も上がる。

 

(豆知識の参考文献)

・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.

 

6. 腸内で発生する腐敗ガスや腐敗毒素が体内に蓄積され、免疫システムに異常をきたすことが、糖尿病の遠因として考えられるという報告があります。腸を整える3個の方法を列記します。どの方法でも結構です。

①その一つ目として、足の大腸と小腸への反射区への押圧を勧めます。指圧棒または歯ブラシの柄の先でも結構です。まず、大腸の反射区です。右足から左足での数字の順番に押してください。2と3のラインはリスフラン関節の少し下方(但し、第四中足骨基底部では同関節の上方)、5のラインは内髁と外髁を結んだ線になります。つぎに小腸の反射区です。斜めの線のエリアを押し揉んでください。

 

右図のおなかのツボを押し揉んでください。一番のお勧めです。少なくとも朝起きたときと夜寝るときに寝床で行って下さい。それ以上行った方がより効果があります。

 

「府舎」 (鼠径溝の中央から指1本上方)

「腹哀」 (上腹部、臍中央の指4本上方、前正中線の指3+3本外方)

 

仰向けに寝て膝を立て、おなかの筋肉をゆるませます。左右の親指と中指及び薬指で二つのツボをシーソーのように交互に50~100回ぐらい押し揉みます。ツボの位置のまわりも含めてください。

 

③次の方法です。おなかのツボです。

右図「天枢」 てんすう (臍の両傍指2本半~3本)

「大横」 だいおう (臍の両傍指3本+3本、乳頭線上(乳首から真下の線)) 

「大巨」 だいこ (天枢穴の下指3本)

これらのツボは皮膚に直角に少し強めに押してください。