脳の疲れは、脳が緊張した状態や不安が長く続くことによって起こり、疲労困憊といった状況になります。イライラして感情のコントロールができなくなったら、要注意です。
この状況を改善すべく、脳の血流を改善し、むくみをとるツボ、反射区に手当てをしていきます。「聴息法」という気功法も加えます。
《豆知識》
・デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは、内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉などから構成される脳回路で、意識的な活動をしていないときに働きます。ボーとしているときでも、いろいろな雑念が「浮かんでは消え」を繰り返しています。
・DMNのエネルギー消費量は、脳の全エネルギー消費の60~80%を占めており、脳のアイドリング中に浮かんでいる雑念こそが、脳疲労の最大要因の一つであると言われています。
・雑念を抑えることで脳を休ませるというのが、マインドフルネス瞑想の基本メカニズムです。
・「あのとき、ああしておけばよかった」というネガティブな思考の反復、いわゆる「反芻思考」も脳の疲労に直結します。
・一方、DMNは過去の記憶の呼び出しや将来の展望を描いたりするのに重要な働きをしているとみられています。
(豆知識の参考文献)
・久賀谷亮(2016)『世界のエリートがやっている 最高の休息法』ダイヤモンド社.
・池谷裕二監修(2015)『脳と心のしくみ』新星出版社.
1. まず、頭のツボで脳の血流改善をします。
①右図「百会」 (頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部))
髪の生え際から指幅7本上または7本弱(女性は6本上)で少しくぼんでいるところを探ります。
「四神聡」 (百会の前後左右親指の幅1本)
「神」は精神の意味、「聡」は聡明の意味で、精神状態を落ち着かせることができ、自律神経のバランスが是正され、頭の感じをスッキリさせる効果があるツボです。百会の後のツボは単独で「防老」と呼ばれるツボです。
②次に右図督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(前頭部眉毛中央を上がった線及びその外側の線)という経絡(ツボの経路)を前髪際指2本下から後方に少しずつ上がっていきます。
特に督脈、前髪際指2本下から前髪際までの線(正中線から外側に向けて額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線)を念入りに押してください。脳活性化を狙います。
頭部の押し方には二つあります。
・ひとつは頭皮揉搓法です。人差し指、中指、薬指の腹で軽く押して前後にゆらしながら進みます。くぼみがあればそこをすこし揉捻します。表面を揺らしますと髪が引っ張られますので注意してください。高齢者、体力が弱っている方向けです。
・もうひとつは親指での指圧です。自分でやる場合は中指を使います。経絡に沿って指2本ずつぐらい離して押していきます。押したら3~5秒キープします。できれば、「頭のツボ図解」ページを参照し、督脈、頭頂部の膀胱経、胆経の個々のツボの位置を意識してください。
額中線、額旁Ⅰ線、額旁Ⅱ線、額旁Ⅲ線は1984年WHO西太平洋地域事務局会議で同意が得られた「頭皮鍼穴名称国際標準」のツボです。
「額中線」 (頭の正中線、縦の線は前髪際から指2本下まで(縦の線は以下同様))
「額旁Ⅰ線」 がくぼういっせん (頭の正中線から指1本半外側)
「額旁Ⅱ線」 (まっすぐ前を見た状態で瞳孔を上がった線上)
「額旁Ⅲ線」 (額角から指半分内側)
③特に、脳に熱を持っている(興奮が収まらない)場合の対処法です。
上記の経絡、7本の線を押すとき、左右の指を重ねず垂直に押し、その後その親指の押す方向を左右に分けます。頭頂部を左右の分割し、頭頂から熱を出すイメージです。クールダウンが狙いです。
④頭頂結節の下から側頭に近い後頭部にかけて、縦の線を押していきます。途中、アステリオンも押します。
右図「言語2区」 (頭頂結節の後下方2cmより下3cmの区域)
運動性の失語症(言葉は理解できるが発音がむずかしい)に効果があるといわれています。
「アステリオン(星状点)」 (ラムダ縫合、頭頂乳突縫合及び後頭乳突縫合の合点)
耳尖(耳介の尖がった先)の指1本弱上から指4本ほど後方のくぼみです。耳鳴りや目の養生で使います。
「後頭乳突縫合」 (後頭骨と側頭骨乳突部(側頭骨後方を形成する側頭骨の一部分)の間)
胆経という経絡のツボが並んでいます。側頭部の痛みや耳鳴り、難聴に良く効きます。
さらに、後頭部の督脈(頭の正中線)、膀胱経(頭の正中線から指二本横)、胆経(前頭部眉毛中央を上がった線の延長)を頭頂部から下に指2本ぐらいの間隔で押します。
⑤次に右図の外後頭隆起の上下の横の線を押します。
目安として、
右図b1外後頭隆起の下の線(2本)、
b2外後頭隆起の上の線、
を中心部から側頭部にかけて押してください。b2の線上には「脳戸」、「玉枕」、「脳空」というツボが並んでいます。
「脳戸」 (頭部、外後頭隆起上方の陥凹部)
「玉枕」 (「脳戸」の外方指1.5本強の小さなくぼみ))
「脳空」 (「玉枕」の外方指1.5本弱(「脳戸」の外方指3本)のくぼみ)
且つ、上記した耳尖(耳介の尖がった先)の指1本弱上から指4本ほど後方のくぼみ(「星状点(アステリオン)」)も念入りに押して下さい。
⑥次に右図側頭部の2本の線を押していきます。頭鍼で使用する頂顳前斜線(ちょうしょうぜんしゃせん)と頂顳後斜線という線です。コツは上述と同じです。
頂顳前斜線:「懸釐」(もみあげを上にたどり、眉の高さより少し上)~「前頂」 (「百会」の指2本前)の線
頂顳後斜線:「曲鬢」(もみあげ後縁の垂線と耳尖の水平線の交点)~「百会」(頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部)の線
⑦胆経という経絡上のお勧めのツボを紹介します。
・右図「陽白」 (前頭部眉毛中央より親指幅1本上)
眉間と前髪際間の下から1/3で、小さなくぼみがあります。
目の愁訴を取り除きます。
上記した額のツボ「額旁Ⅱ線」を押す際に押してください。
・右図「率谷」 そっこく (耳尖の直上、指2本)
慢性疲労、疲労感にお勧めです。
・右図「完骨」 (乳様突起下端より後上方指1本弱(骨がくぼんだところ)または乳様突起下端より後下方、陥凹部)
首から頭への気、血の流れを良くする代表穴です。
⑧側頭部の次のツボもお勧めです。
右図「太陽」 (目じりから髪の生え際に向かう間にあるこめかみの大きなくぼみ)
片頭痛、眼疾患に効果があります。
2. 項部のツボで脳の血流改善をします。
右図「風池」 (僧帽筋腱(僧帽筋の起始部)と胸鎖乳突筋の間の陥凹部、後頭骨の骨際)
体の正中線より指3本弱外側に位置します。
「風府」 (外後頭隆起下方(指二本弱)の陥中)
「風池」と同じ高さになります。
「天柱」 (盆のくぼの中央から指2本外側で僧帽筋腱の外縁陥凹部)
左右の「風池」を結んだ線より少し下側に位置します。「風池」を結んだ線には「上天柱」というツボがあり、「天柱」に劣らぬ効用があります。
首を後ろに倒し、首の重みを利用して右側は左手の(左側は右手の)中指で押さえた方が効きます。
「健脳」 (風池より指幅1.5本下)
指幅1本下という説もありますが、本サイトでは1.5本下とします。ツボの名前通り健脳を狙います。
「百労」 (脊柱の正中第七頸椎棘から指幅3本分上、外側指1.5本)
人によって第七頸椎棘から指幅4本分上が効く場合もあります。
3. 次に足と手の反射区、ツボです。
右図「脳ゾーン」(足の親指腹全体)
親指の腹の頭部、人差し指側の側部も含めて押し揉んでください。手の拇指の腹または示指の横で押し揉みます。力が入らない方は指圧棒で押し込んでください。
「腹腔神経叢」 (「湧泉」(足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)というツボを中心に第一中足骨と第二中足骨の間から、第三中足骨と第四中足骨の間までの範囲)
太陽神経叢ともいいます。特に、親指と人差し指のまたから踵方向に4cm下がったふくらみの稜線上、そして、そこから拇指球の下の窪みまでの箇所が効きます。
「湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)
右図「合谷」 (第一、第二中手骨の基底部の前陥凹部にとる。やや人差し指側)
4. 聴息法です。お勧めの瞑想法です。
気功法のひとつです。呼吸を意識します。
①夜寝床の中で、体、特に顔をリラックスします。目は閉じます。
椅子に座った状態でも結構です。背筋を軽く伸ばし、背もたれから離します。
②吐く息を意識します(聴きます)。
③時間にして5分ぐらいです。
④最初は腹式呼吸、胸式呼吸、鼻で吐く等はどちらでも構いませんが、自然に腹式呼吸で、口を小さく空けて吐くようになり、吐く息が長くなります。
⑤雑念が浮かんできたら、注意を呼吸に戻します。雑念が生じて当然です。
⑥腹式呼吸をする際、おへその上と下に左右の手掌をそれぞれ横に当て、おなかの膨らみとへこみを感じると、より腹式呼吸が実感できると思います。
(本項の参考文献)
・鵜沼宏樹(2008)『元気になれるとっておきのツボ療法』婦人之友社.
・ジョン・カバットジン(2007)『マインドフルネスストレス低減法』春木豊訳 北大路書房.
5. あくびも疲れを取るのには有効です。やり方は簡単です。①椅子にすわり、②首を後ろに倒し、③顔の筋肉を全て緩め、④口をぽかんとあけます。自然にあくびが出ます。
《豆知識》 : 脳を疲れさせないためのヒント
・同時に複数の意識的なプロセスを実行することはできない。一度に集中して行うことができる意識的な作業は1つである。
・考える作業をしている間は、全ての情報通信機器の電源を切る。
・相手の立場、相手の国や文化の視点、あるいは別の時点で物事を見る。
・優先順位付けに着手する。
・紙に書きだすこと。重要案件を紙に書き留めておけば、それをおぼえるのに余分なエネルギーを使わずに、各案件の比較のために脳を温存できる。
・作業をルーティーン化する。
・もっとも注意を要する作業を頭がフレッシュで明晰に働く時間に設定する。
・良質的な社会的つながりや安心できる結びつきがある環境の中でこそ、脳はうまく働く。
・誰かのことを公平だと感じると、信頼感も高まる。公平な提案を受けると、信頼感と自己評価が高まる。
・脳は一人の時間が十分に取れないといらだつ。
(豆知識の参考文献)
・デイビッド・ロック(2019)『最高の脳で働く方法』矢島 麻里子訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン.
・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.