脳卒中で病状が安定した後の回復期リハビリテーションの補助療法です。
脳卒中後遺症の治療穴として、昭和の名灸師と言われた深谷先生とその高弟の先生が推奨しているツボから選びました。一般の方が長く続けられることを考慮しツボの数を絞りました。毎日且つ長期間続けることがポイントです。後遺症治療としては患側だけで結構ですが、予防も兼ねて健側も勧めます。
ご家族の方に次の本の一読を勧めます。
・ジル・ボルト・テイラー (2012)『奇跡の脳』 竹内薫訳 新潮文庫.
この本は、米国の脳科学者が37歳のとき、脳卒中に襲われ、幸い一命は取りとめましたが、脳の機能を著しく損傷、リハビリを経て復活を遂げた彼女が、科学者として脳に発見したもの、新たな気づきについて書いたものです。
「回復のためのオススメ 付録B:最も必要だった40のこと」からの抜粋です。
・わたしはバカなのではありません。傷を負っているのです。どうか、わたしを軽んじないで。
・あることを何十回も、初めと同じ調子で教えてくれるよう、忍耐強くなって。
・声を大きくしないで…私は耳が悪いのではなく、傷を負っています。
・わたしのエネルギーを守って。訪問は短く(5分以内に)して
・ほんの少しですぐに疲れてしまうことを憶えておいて。
・どれぐらい速く考えられるかで、わたしの認知能力を査定しないで。
・小さな成功を全て讃えてください。
・わたしに以前の生活ぶりを教えてください。
・今では、前と異なる脳を持っているのです。
・進歩を途中で阻まないで。
その他、次の本の一読も勧めます。
・小林純也 (2017)『脳卒中患者だった理学療法士が伝えたい、本当のこと』 三輪書店
・鈴木大介 (2016)『脳が壊れた』 新潮新書.
1. もし、お灸ができる環境があれば、療法としてはお灸を勧めます。
お灸をするに当たっての注意点です。
① 一般の方はせんねん灸のような台座があるお灸の方が扱いやすいと思います。くれぐれも注意しなければならないことは水泡が生じないようにすることです。熱く感じたときはすぐに取ってください。
② 熱くない場合はもう1壮してください。2壮までで止めてください。ここで紹介するツボは予防も兼ねています。お灸とは長い付き合いになると思います。焦らないでください。
2. お灸ができない環境やお灸のにおいや煙が苦手な方は指圧をベースとし、時々ピップエレキバンを貼って刺激を持続させてください。
3. ツボの紹介です。まず、手のツボからです。
①右図「十宣」 (手の指の最先端)
最初は患側の5本の指端全部にお灸をします。熱く感じない指を選び、その指が以降の治療対象です。機能回復に優れた効果を出しますが、一定の機能回復を見た後はそれ以上の効果は期待できないと言われています。
②右図「曲池」(肘を十分屈曲して、肘窩横紋外端の陥凹部)
高血圧の名穴でもあります。
「手三里」 (「曲池」より前腕橈側指3本下)
4. 次に足のツボです。
①右図「風市」(大腿部外側、直立して腕を下垂し、手掌を大腿部につけたとき、中指の先端が当たる腸脛靱帯の後方部、圧痛点にとる)
腸脛靱帯はやや膝を屈し、大腿をやや内旋すると現れやすくなります。
②右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下)
万能の名穴ですが、脳卒中の予防、治療穴としても有名です。
5. 中国で有名な「醒脳開竅法」(せいのうかいきょうほう、注参照)から次の2穴を選びます。
①右図「内関」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指2本)
肝気と血を整えます。
②右図「三陰交」 (内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
気血をめぐらせ、血瘀を除きます。
[注]醒脳開竅法:
中国・天津の石学敏教授らが脳血管障害に対し独自に開発した鍼灸療法