臓腑論とは何か

東洋医学について、私が読者の皆様にこのページから知ってもらいたいのは次の4点です。

・各臓器は連携している。その関係には相互利用もあれば、相互抑制もある。

・各臓器は感情、心の動きを持っている→これは言い過ぎですね。ある臓器はある感情と密接にしかも相互に関連している。

・各臓器は身体のパーツ、天候、味覚等自然、人体の事物、事象と密接な関連がある。

・健康を維持するということは、身体のなかを東洋医学でいう三大要素、「気」、「血」、「水」がよどむことなく流れることである。

 

それでは説明していきます。

 

なお、「臓腑論」とは「経絡」、「陰陽」、「五行」、「営衛気血」とともに東洋医学の理論の基礎をなすものです。

 

1. はじめに

東洋医学の臓腑という概念は西洋医学の臓器とは大きく異なります。古い教科書「中国漢方医学概論」(編著者:南京中医学学院、1965年初版)に次のような文章があります(54ページ)。

「臓器それ自体をさしているのではなく、体内の臓器が体外に表現する各種の現象を指していることである」

この現象とは、その臓器のもつ生理的、病理的なものだけではありません。西洋医学的な知識からいくと理解できないことが含まれているかもしれませんが、以降少しずつ組みほどいていきたいと思います。

 

なお、「経絡とは何か」ページも合わせてお読みください。

 

その前に一口知識です。

・臓器を「臓」、現象を「象」といい、合わせて「臓象」といいます。臓腑に関する理論「臓腑論」は「臓象学説」とも称されます。 

 

2. 六臓六腑とは、五臓六腑とは

臓腑とは次を指し、六臓六腑といいます。一般にいう五臓六腑の五臓は心包を心に含めます。

・六臓:肝、心、脾、肺、腎、心包

・六腑:胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦

 

なお、臓の定義は内腔を欠き、組織が充実した器官で、腑の定義は内部が空洞で、管状や嚢状をなす器官です。

 

東洋医学の臓腑と西洋医学の臓器の定義が大きく異なるところをいくつか挙げます。下記は東洋医学の定義です。

 

①腎の機能は水分代謝はもちろんのこと、成長・発育・老化において主導的な機能を持つとされています。これは腎臓の上に位置する副腎の機能も含めるといっているのでしょうか? そういうレベルではなさそうです。もっと深い意味を示唆しているのだと思います。

いろいろな生命活動のためにエネルギーが必要です。東洋の古代の人はそのエネルギーを気と呼びました。気は一つではありません。運動、成長、免疫、防御、代謝、維持、治癒、思考、感情、記憶等、肉体的に、精神的に、いろいろな活動している気があります。そのなかでも先天的に受け継いだ気があると考えました。それを「先天の気」といいます。その「先天の気」を親から受け継ぎ、消費し、いずれは衰えていく、そして次の世代に受け継いでいく、これを腎の機能と考えたようです。

本サイトでも腎の養生をツボ療法の基本に置いています。

 

②脾は脾臓のことではありません。消化器全般の機能の代表、特に膵臓の機能や栄養物の全身への運搬を担います。

 

③「心包」と「三焦」は東洋医学しか定義していない臓腑です。

東洋の古代の人は身体全体をめぐる仕組みも臓腑と考えていたようです。そしてそれに名前をつけました。

 

その機能は「中国漢方医学概論」を見ると次のように書かれています。

 

・「心包」:心の外衛であり、心臓を保護する、心の命令を執行する(59ページ)

・「三焦」:気・血・水をゆきわたらす、飲食物を腐熟する、水の通る道を整えるなど三つの面がある(71ページ)

 

「三焦」がわかりにくいですね。気、水の通り道のようです。

 

いろいろな異論はあると思いますが、本サイトでは次のように捉えています。

・「心包」:全身の脈管系

・「三焦」:全身のリンパ系

 

3. 「虚」、「実」とは

「虚」というのは本来備わっている機能が低下していること、「実」は機能の管理水準を超えてしまっていること、別の意味で言うとそういう状態におとしめている「邪」つまり悪い要因があるということです。 

虚実の概念を管理図を使って説明します。

管理図には中心線と上下の管理限界線があります。異常原因により、上の管理限界線(上限)を越えた場合が「実」、下の管理限界線(下限)を越えた場合が「虚」になります。

4. 陰陽とは

酒谷先生の著書の説明がわかりやすいので抜粋します。

「陰陽学説とは、この世のすべての事物や現象を陰と陽の二つに分類し、それぞれの対立と依存、消長(一方が増えれば他方が衰える→逆もある)と転化(相手に転化する)によりバランスが保たれて存在しているという学説です」

 

5. 気血水精とは

東洋医学においては生体を維持する三要素は気、血、水と考えました。精神活動を含めた機能的活動を統一的に制御する要素が気、生体の物質的側面を支える要素が血と水です。

機能的な働きを持っている気を生み出している元の生理的物質を精と定義しました。精は世代を超えて継承されます。

気、血、水は生体を循環します。気、血、水の質・量は時系列でまた環境で変動します。

 

①東洋医学では気はいろいろな生命活動のためのエネルギーと定義しましたが、いくつかに分類をしています。

・「先天の気」:先天的に受け継いだ気→腎が関連→消費により減少する

・「後天の気」:後天的に得た気で次の「営気」、「衛気」、「宗気」をいう

・「元気」:生命活動の源で「先天の気」が元となり、それを「後天の気」が培ったもの→腎が関連

・「営気」:周流循環して全身に栄養を与える気→脾、心が関連

・「衛気」:身体を防御と保護をする気→脾、肺が関連

・「宗気」:呼吸により胸中に分散された気と水穀(飲食物)の気が合わさったもの→肺、脾、心が関連

 

ここで大事なことは、「先天の気」は年齢とともに衰えますが、それを補うのは「後天の気」です。「後天の気」を支えるのは呼吸、飲食、気の周流(よく流れて滞らないこと)です。「先天の気」のために腎を養生する必要があります。「後天の気」のために食べるもの、呼吸に対して十分に気を使う必要があります。

 

②「血」は西洋医学の血液の機能に加え、精神活動の物質的基礎、言い換えれば精神を養い安定させるものと定義されています。心、肝、脾が関連します。

 

③「水」:体内のいっさいの正常な水液の総称です。「津液(しんえき)」ともいいます。腎、脾が関連します。

正常というのは多すぎても少なすぎても良くなく、よどむことなく周流することを意味します。汗はかきすぎても良くありません。年配になったとき、「汗を流すことは血を流すことです」と言い切る中医のドクターもいます。汗とともに気が漏れてしまい、息切れしたり、体に力が入らなかったり、無気力になるからという考え方です。

 

④上記の気血水の説明で「精神活動を含めた機能的活動を統一的に制御する要素が気、生体の物質的側面を支える要素が血と水です」と定義しました。さらに定義を深めていきましょう。

 

気血水に陰陽と虚実の概念を結びつけます。

・陰陽の概念では機能は陽、物質(形あるもの)は陰としており、その定義からいくと気は陽であり、血と水は陰です。そして、前者を陽気、後者を陰液と呼びます。

・熱の例を挙げて説明していきます。

陽気と陰液が管理水準内にあり、バランスが取れていれば健康です。

・陽気が管理水準を超えた場合、高熱が出ます。実熱と言います。例えばインフルエンザにかかった時(外邪のひとつ)です。

・陰液が虚の状態(管理水準より下)の場合、上記陰陽(消長)の関係から陽気が活発となり(活発に見える)、微熱が出ます。虚熱と言います。この場合は血か津液(水)の不足か滞りに原因(内風のひとつ)があります。

・つまり、熱があるとしても、外邪ではなく内風(体の内部による原因で起こるめまい・痙攣・麻痺・熱などの症状)の可能性もあるということです。

 

慢性病、生活習慣病にお悩みの方は、陽気(気)と陰液(血、水)に分け、気が不足しているのか、血流が悪いのか、滞っているのか、津液不足なのか、滞っているのか、冷えているのか等の観点から、自分がどういう状態か、自分がどういう体質なのか、どの五臓六腑にどういう問題があるのか、考えていただければと思います。「体質とツボ」、肝心脾肺腎毎の機能向上ページも参照してください。

 

⑤気は精からうまれたものであるからして、精も気と同じ分類になります。

・「先天の精」:先天的に(両親から)受け継いだもので次世代に継承するもの→腎が関連

・「後天の精」:後天的に飲食物から補充されるもの→脾、肺が関連

 

6. 五行論

「臓腑論」を展開するにあたり「五行論」を切り離すことはできません。「五行論」は

古代中国に伝わる自然観、宇宙観から発生したものといわれています。

宇宙、自然、社会、身体を構成する全ての要素(事物、事象)を五つに分類し、その五つの「相生」、「相克」の関係をもって要素間の相互の関連及び共通性の理論付けをしています。

 

万物を「木」、「火」、「土」、「金」、「水」に分類し、表としたものを「五行式体表」といい、「臓腑」の「現象」を捉えることができます。臨床上もおおいにヒントを得ることができます。「相生」とは要素間の協調、相互産生、相互利用、「相克」とは要素間の相互抑制、相互制約をいいます。

 

7. 六臓六腑の協働、相生、相克

・六臓六腑の協働

六臓六腑は、ひとつずつの臓と腑で6個の組み合わせ(右図参照)があります。この組み合わせは協働していると考え、治すときもこの組み合わせをよく使います。一方の病がもう一方に影響しやすいという特徴もあります。この関係を「表裏」関係といいます。

 

・相生、相克

身体を構成する要素は五つの臓腑の系統に包括され、五行論に基づき、五つの「相生」、「相克」という関係性を持つと考えます。 

 

下図に臓腑の五行図を掲載します。

なお、心包、三焦は「火」に属します。

 

8. 五臓と心の動きや反応との関連

ここで読者の皆様へ問題です。

東洋医学では次のような心の動きや反応はどの臓と関連していると思いますか?

 

①なかなか始めないが、始めると止まらない。結局のところ全部は終わらない。

②胸苦しく心悸亢進し、夜寝ると不安になる。疲れやすく冬でも汗が出やすい。

③必要以上に思い悩む、くよくよする、結論が出ないことにあれこれ考える。

④何もやる気が起きない。

⑤体力気力が落ちる、長続きしない。

 

 

 

答は①肝、②心、③脾、④肺、⑤腎です。

 

五臓は次のような心の動きに対応します。「五行式体表」では「五志」といいます。「五行式体表」では心は「喜」となっていますが、本サイトでは心の臓象から以下のようにしています。

①肝→イライラ、怒り

②心(心包含む)→不安、心配、憂い

③脾→思い悩み、考えすぎによる落ち込み、沈み込み

④肺→悲しみ、切なさによる気分の落ち込み

⑤腎→おそれやくじけそうになる気持ち、落ち込み

 

本サイトの「心の疲れ」ページではこの考え方をベースにしています。

 

もうひとつ、五臓と精神作用との関連です。「五行式体表」では「五精」といいます。

①肝→「魂(精神を支える気)」

②心(心包含む)→「神(精神・意識・思惟の主宰)」

③脾→「意智(しようとする思い、熟慮すること)」「理性で考えること」「しようという思いと深く考えること」

④肺→「魄(激しい意気込み)」

⑤腎→「精志(意を支える心、根気、志)」→「志を持って考えること」

 

例えば、加齢とともに腎が衰え、志を持つことも少なくなっていきます。また、脾の衰えとともに熟慮することも少なくなり反射的に対応することが多くなってきます。本サイトの「認知症」ページでは「五精」の考え方をベースにしています。

 

 

9. 五臓と身体のパーツ

「五行式体表」では「五体」といいます。

①肝→筋(神経、血管、筋肉、腱、膜)

②心(心包含む)→脈(血管を通して体のすみずみまで血液を送り出すポンプ)

③脾→肉(体の全細胞)

④肺→皮毛(皮膚、皮膚呼吸、体毛、汗腺)

⑤腎→骨髄(骨、歯、髄液、体液)

 

本サイトのいろいろなページでこの考え方をベースにしています。

例えば、「内臓下垂」は内臓を支えている脾の衰えが起因すると考えます。脾の弱りや衰えは肌肉が痩せ弱り、四肢が無力となるなどの症状が出ます。

 

 

10. 五臓と天候

「五行式体表」では「五悪」といいます。

①肝→風

②心(心包含む)→暑

③脾→湿

④肺→燥

⑤腎→寒

 

例えば、本サイトの「気象病」ページではこの考え方をベースにしています。

 

 

11. 五臓と味

「五行式体表」では「五味」といいます。

①肝→酸

②心(心包含む)→苦

③脾(胃)→甘→化膿しやすい

④肺→辛

⑤腎→鹹(塩辛い)

 

臨床上でこういうことがありました。

・数ヶ月おきに副鼻腔炎になる方がいました。薬で治るのですが、すぐ再発します。飲食物との関連を疑ったところ、この方は甘い濃い目の梅酒を毎日のように飲んでいます。甘いものは化膿しやすいとされています。次の関係から梅酒をやめてもらったところ、再発は止まりました。

梅酒(ホット)→副鼻腔炎←胃の経絡は鼻茎を通る

 

・よく肺炎になる方がいました。この方はトウガラシ等香辛料が大好きです。もともと呼吸系が強い方ではありません。辛いものの常食をやめてもらったところ、肺炎の頻繁な再発はなくなりました。

 

12. 五臓と感覚器官

「五行式体表」では「五根」といいます。

①肝→目

②心→舌

③脾→口

④肺→鼻

⑤腎→耳

 

この関係はよく使います。

 

13. 東洋医学から見た臓腑の別の観点です。

・肺は嬌臓(きょうぞう)と呼ばれ、デリケートな臓で、寒熱の刺激に弱く、皮毛や鼻を通じてすぐ影響を受ける。

・伝説の名医華佗曰く「胃気が壮んであれば、五臓六腑はみな壮んとなる」。

・胃は小さな脳、ものを言う、要求がはげしい、いろいろなことに悩まされる。

・脾は中州(中土)を司る→中土は大地の意味であり、脾(胃)は大地を耕す。

・心は君主の官である。君主であっても、天の意思(自然の営み)に従わなければならない。

・腎は精を蔵し、精には志がやどる。腎の衰えは生命の衰えである。

・肝と腎、まさに縁の下の力持ちである。文句を言わず、黙々と働く。それだけに養生しなければならない。

・三焦は元気の使者である。経絡を介して全身をめぐり、臓腑・器官・組織に活力を与える。

・肝は謀慮を主り、胆は決断や勇気を司る。

 

・ストレスが肝、腎、脾、心に影響を与える機序は次のように考えられる。

ストレス→肝虚→肝気鬱血→肝腎両虚→腎陽虚

          〃     →肝脾不和→脾胃虚熱→湿熱/気滞

          〃   →肝火上炎→心肝火旺

[注]

-肝気鬱血の症状…精神抑鬱

-脾胃虚熱の症状…見せかけの脾の活発化(脾胃が強くないのに食べ過ぎてしまう)

-肝火上炎の症状…イライラ

-心肝火旺の症状…不眠、多夢

 

・ぼんやりしたり、鬱々という状態が続く、疲れやすい疲れが取れない、食欲不振の状態の機序は次のように考えられる。

心脾両虚→心(精神や意識、考える力が落ちている)&脾(食べ物をエネルギーに変える力が落ちている) 

対応としては立ち止まり、労働環境/ストレス/過労/生活リズム/冷えの状態を考えること(「心の疲れ」ページ参照)&脾を休ませること(冷たいものは飲まない、だらだら食いやつまみ食いを止める)

[注]

-心脾両虚…心と脾は五行論から相生の関係にあり、相互に影響を与える

 

14. 以上を総合して東洋医学的な五臓の機能の主な定義は次の通りです。

①肝

肝の働きは主疏泄(そせつをつかさどる)と主臓血(ぞうけつをつかさどる)です。

・疏泄とは全身の気血の流れをスムーズにする働きです。 精神的なストレスなどで肝が弱まってしまうと気血の流れを滞って、抑うつやイライラ感が増します。これを「肝気鬱結(かんきうっけつ)」といいます。

・臓血とは血を蓄え、血量を調節する働きです。肝はこの働きで疏泄を可能にしたり、目や筋肉の働きを調節しています。 よって血が虚してしまうと筋肉に力が入らなかったり、痙攣したり、目が見えにくくなってしまいます。

・疏泄の疏は「疎通」、泄は「発散、上昇」の意味であり、木の根が四方八方にのびのびと張る様子に例えられました。アルコール、脂質、糖質の摂り過ぎにイライラ、怒りが加わると肝は失調状態になります。疲れやすい、肩がこる、頭がボーッとするといった症状が出てきます。本来、肝はのびのびを好む臓です。

 

②心(心包含む)

心の働きは主血脈(血液をつかさどる)と主神志(神志をつかさどる)です。

・主血脈とは血を全身に運び出し(ポンプ)、血脈をつかさどること、つまり血液の循環で栄養物の運搬と人体の各部の新陳代謝や機能を維持することです。

・主神志とは精神・意識・思惟活動を制御することです。精神活動、感情との関連は五蔵にそれぞれあるのですが、その主宰に位置づけています。

・血を送り出す「ポンプ」の機能があるので、この心の気が虚すると動悸や息切れ、胸痛や胸苦しさなどの症状が現れます。

・心の血が虚すると不眠や不安など精神的な問題が出てきます。

 

③脾

脾の働きは主運化(運化をつかさどる)、主昇清(昇清をつかさどる)、主統血(統血をつかさどる)です。

・主運化とは飲食を吸収し、エネルギーとなる気と津液を生み出し、肺の力も借りて全身へ運搬します。

・主昇清とは栄養物質を人体の上部に持ち上げたり、内臓下垂を防止する機能です。

・主統血とは血が血管の外に漏れ出すのを防ぐ機能のことです。よく出血する、内出血がなかなかひかないという現象も脾がかかわっている可能性があります。

・胃は飲食物の腐熟をつかさどり、脾は飲食物の運化、精気津液の輸送をつかさどるいう分担があります。

・思い悩む、心配ごとは脾の働きを低下させます。

・甘味は脾、胃の経絡に異常を起こします。思い悩み、考えすぎによる落ち込み、沈み込みを起こす原因ともなります。

・脾の失調は血虚、気虚を引き起こします。

 

④肺

肺の働きは主気(呼吸をつかさどる)、主宣発(宣発をつかさどる)、主粛降(粛降をつかさどる)、水道(水分代謝)です。

・主気とは綺麗な空気(清気)を吸い、不要な空気(濁気)を吐きます。この循環で気をつくり、心と協力して全身に気血津液をおくります。

・主宣発とは臓腑の温煦(おんく)を行う衛気を体表に発散、全身に散布します。温煦とは人体を温めて臓腑の陽気を補うことです。

・従って、肺は皮毛(皮膚やうぶ毛)をつかさどるともいいます。肺と皮膚の関係は密です。肺が弱ると病にかかりやすくなります。

・主粛降とは気と津液を下腹部に下すという意味です。宣発と粛降は協調して動いています。宣発と粛降を合わせて主行水(こうすいをつかさどる)ともいいます。

・主行水とは津液を全身に散布、下降させるという意味になります。

・水道とは水分代謝(尿や汗など)の調節管理をします。

・ストレスがたまると「ため息」がでることあります。呼吸は非常にストレスと密接であるのがわかります。憂い、悲しみといった感情は肺と関連します。

 

⑤腎

腎の働きは蔵精(精を蔵する)、主生殖(生殖をつかさどる)、主水(水をつかさどる)、主納気(納気をつかさどる)です。

・蔵精とは先天の気をストックすることです。

・主生殖とは文字通りです。

・主水とは水液代謝を調節することです。

・主納気とは呼は肺がつかさどり、吸は腎がつかさどるという考え方です。加齢とともに吸息筋が衰えます。「呼吸困難」ページは吸息筋と加齢の関係に触れています。

・骨、髄をつかさどります。加齢と骨は密接な関係があります。

・おそれやくじけそうになる気持ち、落ち込みは腎を弱らせます。

 

15. 腑の定義

①胆

・「胆は決断をつかさどる」とあります。「中国漢方医学概論」の胆の機能にはこの文章が最初に出てきます。非常に興味深いですね。東洋の古代の人はどこから発想したのでしょうか? 「十一の臓は皆決を胆に取る」とまで言い切っています。

・小腸に胆汁を分泌して消化を助ける機能をもっています。

・「肝と胆を機能面で区別することはできない」ともいっています。まさに「肝胆相照らす」の通りです。

・経絡から考えると「胆経」は足の先から頭までめぐっており、幅広い症状の改善に使います。

 

②小腸

・胃から来た飲食物を受けて消化し、糟粕(そうはく)を大腸に輸送します。

・清濁を区別し、水液を膀胱に、糟粕を大腸に輸送します。

・小腸と心臓は表裏関係にありますが、これが一番わかりにくいと思います。

「中国漢方医学概論」では例として「心に熱があれば、小腸に結ぶ、ゆえに小便血なり」とあります。心火亢盛の諸症状(心煩・不眠・多夢等)の他に、心熱が小腸に移り、小腸実熱証の症状(血尿)がみられるとのことですが、この臨床がないためよくわかりません。

 

そこで私は次のようなとらえ方をしています。

東洋医学による養生に身体を冷やさないというのがあります。身体が冷えないように体温を維持させるためには血流を良くし、熱を発生する特に筋肉に栄養を与えるということ、そのためには心臓の機能と栄養吸収の大きな要である小腸の力が必要になるという理解です。身体を冷やさない、免疫力を上げるにはぴったりのコンビだと思います。この二つの臓腑が五行説にいう「火」に属するというのも理解できます。もちろん、肝も脾も関係しているわけですが、この二つは五行説による心の相生関係にあります。

 

③胃

・口から入った水穀(飲食物)を受納(受け入れ)、腐熟(消化)を行い、消化した水穀を小腸に下降させます。

 

④大腸

・糟粕(よいところを取り去った残り)を転輸します(運び出す)。

・肺と大腸の関係は、明確に定義されていませんが、風邪の症状等に大腸に影響があることをよく体験します。

 

⑤膀胱

・津液(ここでは尿)を蔵し、排泄します。

 

⑥三焦

・定義には諸説あります。私はリンパ組織全体の体液系ネットワークと捉えています。

 

 

(参考文献)

・酒谷薫(2002)『なぜ中国医学は難病に効くのか』 PHP研究所.

・篠原昭二(2009)『臨床経穴ポケットガイド』医歯薬出版.

・篠原昭二(2014)『補完・代替医療鍼灸改訂2版』金芳堂.

・代田文誌(1978)『針灸治療基礎学』医道の日本社.

・芹沢勝助(1976)『人体ツボの研究』ごま書房.

・寺澤捷年(1990)『症例から学ぶ和漢診療学』医学書院.

・南京中医学院(1976)『中国漢方医学概論』中国漢方.

・兵頭明(2018)『中医学の仕組みがわかる基礎講義』医道の日本社.

・小高修司(2005)『老いを防ぐ「腎」ワールドの驚異』講談社.

・池上正治(2008)『中国四千年の自力強壮法』土屋書店.