ここで紹介するのは、前立腺肥大や膀胱炎等の頻尿の原因が特定できていない場合のツボ療法です。どちらかと言えば、加齢とともに症状が出てきた場合です。
東洋医学からみると、頻尿は膀胱経という経絡(ツボの経路)の失調だけでなく、小腸経という経絡も影響していると考えます。小腸の役割として、「清濁の分別を主る。胃から送られてきた水穀の精微を、液体を膀胱に送って小便とし、固形分を大腸に送って大便とする」と定義されています。そこで、ツボ療法としては、膀胱経、小腸経に関連するツボと腎、尿管を含めた排泄系及び緊張を取り除く脳の反射区を使います。
ツボ療法の前にやってもらいたいことがあります。排尿習慣の見直しです。これが一番効き目があります。
1. 排尿習慣の見直し
読者の皆さんは昼間、夜間それぞれ排尿のため何回トイレに行っていますか?
医学本には昼間8回以上、夜間1回以上が頻尿と書かれています。ドクターによっては昼間11回以上、夜間3回以上を頻尿としている方もいます。いずれの数値を目標にするにしても、私が強調したいのは「勢いのある、気持ちの良い、自然に出る排尿」です。
・ためて出すこと←排尿間隔を守ること:2時間(日中8回ペース)~4時間(日中4回ペース)→排尿間隔が短いと、排尿までの時間がかかる、勢いがない、途中で止まってしまう、残尿感があるといった症状が出やすい。
・トイレに行きたくなってもすぐには行かず、少しだけ我慢をする。最初は5分がまんをするところから始める。無理なくがまんができるようなら、さらに10分、15分と少しずつがまんする時間を延ばす。
・立って前かがみの姿勢を取らない。
・「今のうちに」、「念のため」、「とりあえず」トイレに行く⇒こういう出し方をしない。
・出すことを意図しないこと→自然に任せる、出すのは自律神経の役割→運動神経の役割ではない。
・自然に出るままに任せる。
・顔の力を抜く。
この方法はあくまで過活動膀胱(注参照)のための改善方法であり、「感染症、前立腺肥大症、尿路結石などの場合は症状を悪化させることもある」のでご注意願います。
・過活動膀胱とは①尿意切迫感(急に我慢ができないほどの強い尿意を感じる)、②頻尿(頻繁にトイレへ通う)を主訴とする。
(参考文献)
・渋谷秋彦(2014、2018)『気持ちいいオシッコのすすめ』現代書林.
・関口由紀(2018)『自分で治す頻尿・尿漏れ』洋泉社.
2. 泌尿器系トラブルの代表的な必須穴です。
右図「関元」 (臍の中心から真下に指4本)
小腸に関連する重要なツボで、「丹田」とも呼ばれ、応用範囲の広いツボです。
骨盤の中心に向けて押し込み、斜め下に流します。
「中極」 (「関元」より親指幅1本下)
膀胱に関連する重要なツボです。
この二つのツボは尿失禁でも使う名穴です。正確には臍から恥骨結合上縁を5等分し、「関元」は上から3/5、「中極」は4/5に取ります。
3. 次に排泄系、脳の反射区、ツボです。指圧棒を使って少し強めに押してください。
①右図「湧泉」 (足の五指を屈し足底中央の最も隅なるところ)
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」の反射区 (足裏中央付近のへこんだあたり)
「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)
「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)
これらは尿失禁でも使うツボ、反射区で、軽い症状の場合はこれだけで改善されるはずです。
②右図「脳ゾーン」の反射区(足の親指腹全体)
特に親指の腹の中央下方を押し揉んでください。小脳や延髄の反射区があり、緊張やストレスを和らげます。
4. 手軽にできる手の特効穴です。いずれも 爪を使って押していきます。
①右図「腎臓」 (手のひら、第二、第三中手骨間の中央)
「膀胱」 (手のひら、中央下、手首寄り)
②右図「少沢」 (小指の尺側爪体の角を去ること1~2mm弱)
小腸経のツボです。
③右図「腎穴」 (小指の指先側、第一関節の横しわ中央)
「夜尿点」とも言われます。