養生には食材と栄養素についての知識も必要になります。
より実践的な知識について記述しました。参考にしてください。
記載内容は以下の通りです。項目名をクリックしていただければそれぞれの説明にジャンプします。
・鮭は胃腸を温めてくれます。特にエアコンで冷えた内臓を温めるのには最適です。むくみ改善、冷えの改善にも有効です。
・胃腸が弱っている方には湯豆腐、温豆腐を勧めます。
・サツマイモは胃腸を丈夫にし、元気を補ってくれます。ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富です。
・東洋医学の五行説では「イライラ」は「土」に分類され、この性格を持つ味は「酸」が該当します。酸っぱいもの、つまり、柑橘類が適しています。特に柚子(ゆず)が最適です。しそ、ネギ、ニラ、バジルも有効です。
・鰹はエネルギーや血を補います。皮に近いところは必須アミノ酸のリジンが含まれています。リジンには疲労回復効果、肝機能を高める効果、血管を強くする効果があります。
・鰹のタンパク質は本マグロの赤身に次いで多く豊富です。
・血合が多く、鉄やビタミンB、タウリン等が含まれています。
・鰹は必須アミノ酸トリプトファンが豊富です。トリプトファンは幸せホルモンとも呼ばれる神経伝達物質セロトニンを合成する栄養素のひとつです。
生姜は漢方薬には欠かせない生薬のひとつです。次のような効果があります。
・体を温める
-血管を拡張して血流を良くする。
-副腎髄質を刺激してアドレナリンの分泌を促し、体内の細胞の働きを活性化して、体を温める。
・強心・利尿作用
-心筋を刺激し、心筋の収縮率を強めることにより、腎血流量を増加させ、腎機能を高め、排尿量を増加させ、体内の余分な水分(水毒)を排泄する。
・血液凝固を抑制する
-血小板の粘稠性を抑えて、その凝集を抑制して血栓を防ぐ。
・血液中のコレステロールを低下させる
・しめじには免疫力を高めるグルカンが豊富に含まれています。
・しじみに豊富に含まれることで有名なオルニチンですが、しめじにはそのしじみの約7倍もの量のオルニチンが含まれています。オルニチンには美肌効果や肝機能を正常にする働きがあります。
・しめじに含まれるグアニル酸は血液中のコレステロールを下げる効果があります。
・高血圧の一つの原因は食塩の過剰摂取だけでなく、カリウムの不足も挙げられます。カリウムにはナトリウムの排泄を促して血圧を下げる作用があります。血圧を平常に保つには、ナトリウムとカリウムの比率も重要です。健康な体内の比率は1:0.6です。
・カリウムは昆布、わかめ、リンゴ、メロン、スイカ、バナナ、ホウレンソウに含まれています。
・血圧のコントロールにはカルシウムとマグネシウムの摂取比も大切です。動脈の収縮にカルシウム、弛緩にはマグネシウムが関わっています。マグネシウムはカルシウムの2分の1以上を摂ることが望ましいとされています。
・カルシウムは牛乳、小魚、海藻等、マグネシウムは海藻、日本そば、ごま、豆類、ココアに含まれています。
・高血圧は血管の弾力性も絡んでくるため、血管をつくる材料として良質のタンパク質の摂取も不可欠です。血管にはコラーゲン、エラスチンという名のタンパク質が配置されています。コラーゲンは血管の強度と弾力性を、エラスチンは特に動脈に弾力を与えています。
・良質のタンパク質は体内で作り出すことができない必須アミノ酸がバランスよく含まれているものをいいます。食材としては肉・魚・卵・牛乳・大豆です。
アボガドには豊富な栄養素がありますが、特に本ページでは次の点を強調したいと思います。
・豊富に含まれているオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)が悪玉コレステロール(小型LDL)を減らし、HDLコレステロールを増やします。
・豊富なビタミンEが動脈硬化や過酸化脂質(活性酸素によって酸化された脂質)の生成を抑えます。
・豊富に含まれているカリウムはナトリウムの排泄を促して血圧を下げる作用があります。
・糖質はほとんど含まれていないため、糖質制限にお勧めの食材です。
・但し、脂質を多く含んでいるため、食べ過ぎには注意のこと。どんなに多くても1日一つまでです。
代表的な発酵食品である納豆の効果は定評のあるところですが、特に強調したい効果を列記します。
・納豆に含まれているナットウキナーゼは、血栓を予防したり、血栓を溶かす酵素を活性化します。
・ワーファリンなどの抗凝固薬を処方されている循環器系患者は納豆摂取が厳禁です。
・次に抗酸化作用、免疫力向上(風邪予防)、肥満予防、肝機能向上です。これは大豆や大豆製品に多く含まれているサポニンの効果です。
・サポニンは大豆や大豆製品のほか、ごぼう、高野豆腐に含まれています。
・骨粗鬆症を防止するためのビタミンと言えばビタミンDとともにビタミンKがありますが、納豆にはそのビタミンKが多く含まれています。1パック(40~50g)で1日当たりの必要量を取ることができます。
・納豆には抗老の働きをするオートファジー(注参照)を活性化するスペルミジンが含まれています。
・納豆にヨーグルトをかけて食べると意外においしいです。
(注)オートファジーの3つの役割
①飢餓状態になったときに、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にする
②細胞の新陳代謝を行う
③細胞内の有害物を除去する
家森幸男先生(武庫川女子大学国際健康開発研究所長)が文藝春秋に連載中の「世界最高の長寿食」2022/10月号で、「ヨーグルト」を紹介しています。
ヨーグルトには次のような効果があります。
・ヨーグルトには塩の害を打ち消してくれるカリウム、カルシウム、マグネシウムが含まれています。塩分過多になりがちな日本人には必要とされる食品です。
・血糖値がゆっくり上がります。
・免疫力が向上します。
・乳製品に含まれているたんぱく質にはアルブミンを合成する作用の時にその作用を促進する働きがあります。中でもヨーグルトはアルブミン値が上がりやすいことが判明しています。アルブミンは健康長寿の鍵であるたんぱく質の一種です。
・認知機能を良くします。
但し、どれを食べても同じというわけではなく、ヨーグルトの菌と相性が良いものを選びましょう。1週間食べ続けてお通じが良くなるなどの効果を感じられない場合は、別の種類に変えましょう。市販のヨーグルトを選ぶ場合は、無糖のものを選んでください。
ブロッコリーは緑黄色野菜の中でも群を抜く栄養価を誇ります。タンパク質、食物繊維、カロチン(ビタミンA)・ビタミンB1・Cなどのビタミン類、鉄分・カルシウム・カリウムなどのミネラル類等を豊富に含みます。バランスの良い緑黄色野菜です。
特に本ページではブロッコリー、ブロッコリースプラウト(ブロッコリーの新芽)に含まれている「スフォラファン」というファイトケミカルを紹介したいと思います。
「スフォラファン」には次のような効果があります。
・体内の取り込まれた発がん物質を無毒化し、体外に排出する解毒酵素を活性化することで、解毒力を高めます。
・抗酸化酵素の生成を促進することで、体の抗酸化力を高めます。
なお、「スフォラファン」は、チンゲン菜、キャベツ、カリフラワーなどのアブラナ科の野菜にも含まれています。
・くるみには活性酸素を抑制するポリフェノールやメラトニン、コレステロールや中性脂肪を抑制するオメガ3脂肪酸、さまざまなビタミン、ミネラル(マグネシウム、カリウムほか)が豊富であることはいうまでもありません。中医学ではくるみは健脳に効果があるとされています。集中力、記憶力の衰えを防ぎます。
但し、食べ過ぎに注意してください。一日10粒程度に抑えてください。
・昆布、わかめ等海藻類に含まれている水溶性食物繊維の「アルギン酸」は余分なナトリウムを排出し、高血圧を予防、改善する働きをします。
・但し、昆布の食べ過ぎはヨウ素の摂りすぎになりますので注意してください。
・「ファイトケミカル」は植物が紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから体を守るために作りだされた色素や香り、辛味、ネバネバなどの成分のことです。外敵にさらされても移動できない植物は、酸化を防ぐ抗酸化力、抗菌力を自ら持っています。その成分がファイトケミカルです。人はファイトケミカルを作り出すことはできませんが、ファイトケミカルを取り入れることで、抗酸化力や免疫力を向上させることができます。
・代表的なものにイソフラボン(大豆)、カテキン(緑茶)、アントシアニン(ブルーベリー、ブドウ)、フラボン(セロリ、パセリ、ピーマン)、ケルセチン(たまねぎ、ブロッコリー)等のポリフェノール系、カロテン(にんじん、かぼちゃ、トマト)、リコピン(トマト、スイカ)、ルティン(ホウレンソウ、ブロッコリー)等のカロテノイド系があります。
・食物繊維というと便秘に良い(特に不溶性食物繊維、例:豆類、ゴボウ)、糖質の吸収をおだやかにする(特に水溶性食物繊維、例:海藻類、イモ類)というイメージがありますが、コレステロールを減らす食材でもあります。食物繊維は胆汁酸を体外に排出する働きがあります。胆汁酸の原料はコレステロールです。
切り干し大根、かぼちゃ、ゴボウ、アボガド、豆類、イモ類、きのこ類、もち麦がお勧めです。
・白血球を増やす効果が若いバナナより5(~8)倍も高くなります。
・その理由は、シュガースポットのあるバナナのほうが、免疫細胞のマクロファージ(白血球の一種)が分泌するTNF-α(腫瘍壊死因子)という物質(サイトカイン)を増加し、これが活性化することで免疫力を高めるからです。
・しかし、TNF-αは肥満時の脂肪細胞からも分泌され、インスリン抵抗性(インスリンの効きを悪くする)を引き起こす原因物質であると考えられています。脂肪組織から分泌されているサイトカインをアディポサイトカインといいますが、その内の悪玉アディポサイトカインのひとつです。TNF-αは両面あります。
・サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現または抑制など多様な細胞応答を引き起こす生理活性物質の総称です。
・リンはカルシウムとともに骨を構成している成分であり、またDNAや細胞膜の主成分で、人間が体を維持していく上で重要な物質です。
・しかし、リンの蓄積は老化を加速するという研究結果(黒尾誠教授の研究)があります。腎臓には体内の余分なリンを腎臓から排泄するクロトー遺伝子が多く含まれています。リンの摂りすぎ→腎臓のネフロンの減少→クロトー遺伝子の減少→リンの蓄積→老化の加速というメカニズムです。
・リンには肉類、魚介類、卵、乳製品、豆類等に含まれている「有機リン」と加工肉等に使用されている食品添加物等に含まれている「無機リン」があります。有機リンは制限すると栄養状態に影響を与えます。無機リンは有機リンよりも体内への吸収率が高いのが特徴です。
・食品添加物が含まれるソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉、干物、練り物、スナック菓子、インスタント麺ファーストフード等を意識的に避けてください。
・大豆イソフラボンに含まれるダイゼインがエクオール産生菌という腸内細菌(善玉菌)によって代謝されて生み出されるエクオールは、女性ホルモンのような働きをします。うるおいのある肌にしたり、抜け毛を減らし豊かな髪を生み出したり、女性らしい体型にしたり、骨粗鬆症を防いだりします。
・大豆には長寿のための重要なミネラルであるマグネシウムが豊富です。マグネシウムは体内の300種類以上の酵素反応に関係し、神経の興奮を抑え、血圧を調整し、筋収縮等、身体を整えています。特に血圧を下げる効果です。細胞内にナトリウムが増えると、これを阻止するため、ナトリウムを外に追い出してカリウムを取り込むポンプを作動します。そのポンプを動かす役割をするのがマグネシウムなのです。
・みそはこの善玉菌のえさとなる大豆イソフラボンの量がほかの大豆製品に比べて多いと言われています。
・この善玉菌はえさ(大豆イソフラボン)が日常的にないと消えていってしまいます。日常的に大豆製品を取りましょう。
・しかし、みそ汁で問題なのは塩分です。塩分の排出を勧めるカリウムを多く含む緑黄色野菜や芋類、カルシウムやマグネシウムを含むわかめ等海藻類を具にたっぷり入れましょう。
・夏は心臓に負担がかかります。心の養生にはゴーヤが適しています。夏バテを防止し、熱を冷まし、イライラを落ち着かせます。ゴーヤ、豚肉、豆腐の組み合わせのゴーヤチャンプルーは最適です。大豆は女性ホルモンのような働きをするイソフラボン、豚肉は疲労回復の栄養素ビタミンB1、ゴーヤは抗酸化栄養素、それぞれ豊富で理にかなった組み合わせです。
タウリンは「スーパー栄養素」です。例えば、
・交感神経の緊張を鎮めてストレスや血圧を下げる
・胆汁を増やしてコレステロールや脂肪の排出を促す
・インスリン分泌を促進する
タウリンは貝類、アジやサバ等の近海魚、ブリやカツオの血合いの部分、カニ、イカ、タコ、エビに多く含まれています。
・海苔には、痰切りや下腹部の余分な熱を治めて利尿により湿を排出する力があります。
・尿酸値が高くても痛風にならない人がいます。血液中の尿酸値が高くなると尿酸がナトリウムと結合し、針状結晶ができ、炎症を引き起こします。糖タンパクがあると尿酸はナトリウムではなく、糖タンパクと結合し、痛風になりにくくなります。糖タンパクをつくるにはビタミンAが不可欠です。
ビタミンAはたまご、牛乳、にんじん、ほうれん草(葉の部分)に含まれています。糖タンパク質とは、糖とタンパク質が結合した一群の物質の総称です。
・トウモロコシは余分な熱を取り、むくみを解消、胃腸の働きを整え、疲労回復、食欲回復の効果があります。
・トウモロコシには必須脂肪酸リノール酸が含まれており、抗酸化作用や血中コレステロールを減らす効果があります。
・トマトにはリコピン、ビタミンC、ビタミンEなど抗酸化作用の高い栄養素がたくさんあり、夏バテ、熱中症対策に最適です。熱を冷まし、気持ちを落ち着かせる力を持っています。
「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」はバランスが重要です。
血液中の「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」のバランスが、1:2くらいまでは心臓病での死亡リスクが低く抑えられていますが、それを超えて「オメガ6系脂肪酸」の方が多くなると、急激に死亡リスクが高まることが報告されています。
ナッツでお勧めのクルミは「オメガ3系脂肪酸」も多く含まれていますが、「オメガ6系脂肪酸」もさらに多く、その比率は1:4です。食べ過ぎに注意しましょう。
《豆知識》
栄養素としての脂肪に関する基礎的な知識です。
①脂肪は、タンパク質、炭水化物(糖質+食物繊維)とともに三大栄養素の一つである。
脂肪は一般的に脂質とも呼ばれる。
②「脂肪酸」は脂肪の主成分である。
③「脂肪酸」は、構造の違いにより「飽和脂肪酸」、「一価不飽和脂肪酸(オメガ9系脂肪酸)」、「多価不飽和脂肪酸」、「トランス脂肪酸」の4種類に分類できる。
④「多価不飽和脂肪酸」は「オメガ3系脂肪酸」、「オメガ6系脂肪酸」に分類される。
⑤「オメガ3系脂肪酸」には「ドコサヘキサエン酸(DHA)」、「エイコサペンタエン酸(EPA)」、「α–リノレン酸」、そして、「オメガ6系脂肪酸」には「リノール酸」、「アラキドン酸」、「γ–リノレン酸」がある。
⑥これらは人間が体内で生成できない「必須脂肪酸」である。
⑦「オメガ6系脂肪酸」は白血球を活性化して病原菌などと戦う働きをし、「オメガ3系脂肪酸」は逆に白血球の働きを抑制、炎症を抑える働きがある。
⑧「オメガ3系脂肪酸」と「オメガ6系脂肪酸」にはバランスが重要である。血液中のオメガ3系脂肪酸:オメガ6系脂肪酸のバランスが、1:2くらいまでは心臓病での死亡リスクが低く抑えられているが、それを超えてオメガ6系脂肪酸の方が多くなると、急激に死亡リスクが高まることが報告されている。
(本項の参考文献等)
・ジェームズ・W・クレメントほか(2021)『SWITCH-オートファジーで手に入れる究極の健康長寿-』日経BP.
・NHK健康チャンネル (2021/9/27)、『健康には必須脂肪酸「オメガ3」「オメガ6」が重要!油選びのコツ』、閲覧日 2022/7/7、https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1128.html
・柿は肺を潤し、咳を収めます。
・貧血には鉄、ビタミンB2、Eが多く含まれているアーモンド、特に手軽に食べやすい素焼きがお勧めです。
・肺を潤す、胃腸を整え、便通をよくします。
・但し、食べ過ぎに注意してください。一日10粒程度に抑えてください。多く食べるとガスが発生します。試行錯誤の上、自分の適応数を把握してください。
便秘にはもち麦ご飯を勧めます。もち麦はもちもちした食感の大麦で、水溶性食物繊維のβ-グルカンが豊富に含まれており、腸内環境を整え、ダイエット効果も高いとされています。出すぎるかもしれません。また、もち麦はコレステロールも減らします。
(本項の参考文献)
・松生恒夫(2021)『健康の9割は腸内環境で決まる』PHP研究所.
炭水化物には糖質のほかに食物線維も含まれています。そのため、炭水化物制限を行うと、結果として食物繊維が減って、結果として食物繊維の摂取が減って腸内フローラが乱れ、排便量の減少や便秘を経験することになってしまいます。
この場合は、白米にもち麦を混ぜて炊飯することを勧めます。
・血虚(血が不足しており、血の働きが衰えているタイプ)の方にはぴったりの食材です。黒キクラゲは血を増やし、血行を促進します。
・黒キクラゲの栄養素としては鉄分、ビタミンD、食物繊維、カルシウム、グルカン(免疫力を高める)が豊富です。
・黒豆は蔵精(親から受け継いだ先天の気をストックする)の機能を持つ腎を補うのに適した食材です。先天の気は親から受け継いだ生命力、生命エネルギーととらえてください。身体をいつまでも健康で若々しく保ちます。血流を良くする機能もあり、月経の異常や貧血などを引き起こす血虚体質にも最適です。
家森幸男先生(武庫川女子大学国際健康開発研究所長)が文藝春秋に連載中の「世界最高の長寿食」2022/9月号で、「史上最強食材大豆の底力」を掲載しています。
イソフラボンの働きについて、本ページでは《女性にさまざまな効果のあるみそ汁》、《血栓予防、抗酸化作用、抗老に納豆》にも記述していますが、家森先生の記事を紹介します。イソフラボンの栄養素としてのすごさを別の視点から再認識できると思います。
・イソフラボンは女性ホルモンの「エストロゲン」の構造と非常に似ている物質です。
・日本や中国など、大豆イソフラボンを多くとっている国は心筋梗塞死が少なく、摂取が少ない国は心筋梗塞死が多いのです。
イソフラボンは、血中で女性ホルモン様の働きをし、血管を裏打ちしている内皮細胞の遺伝子に働きかけて一酸化窒素(NO)を作ります。これにより血管が拡張し、血液もサラサラになって血栓ができにくくなります。
但し、一酸化窒素は非常に不安定なので、体内で活性酸素に出会うと効果が失われてしまいます。そのため活性酸素を抑える抗酸化栄養素(野菜の色素、ビタミンA、E、Cなど)と一緒に摂ると最強の働きをしてくれます。例えばシソがお勧め。
・イソフラボンには、LDLを減らす作用もあります。肝臓の細胞には、LDLのレセプター(受容体)がついていて、これがLDLを処理しています。イソフラボンはこのレセプターを増やし処理量を増やすのでLDLが下がるのです。
・大豆摂取の少ないアメリカでは乳がんや前立腺がんの年齢調整死亡率が高く、大豆摂取の多い中国や日本では少ないのです。イソフラボンががん増殖を抑えると考えらます。
・免疫などによって退治されずに残ったがん細胞は、新しい血管をつくる「血管新生」を起こして血液中の栄養を摂って育ち、全身に転移します。イソフラボンには、「血管新生」を抑える効果があります。血管が作れないとがん細胞は栄養を摂ることも広がることもできず、兵糧攻めになります。
・ハワイの日系人を対象にした研究では、イソフラボンの摂取量が多い人ほど、骨のカルシウム量が高くなっていました。イソフラボンは骨粗鬆症も予防します。
・大豆を食べている地域では肌のきれいな人が多いのです。イソフラボンは末梢循環を良くするので肌の健康にもよいようです。
・アメリカの食品医薬局(FDA)が効果を認めた大豆たんぱくの1日あたりの摂取量は納豆で換算すると1パック半です。
山芋は古来滋養強壮の食材として有名です。
・腎と脾の両方に効果があります。腎の消耗による疲労感や冷え、更年期の不定愁訴のほか、脾の衰えにより胃腸の働きが低下し食欲がない、下痢しやすいなどの症状に効果があります。
(本項の参考文献)
・阪口珠未(2018)『老いない体をつくる中国医学入門』幻冬舎.
・鮭には必須アミノ酸をバランスよく含んだ良質のタンパク質(注参照)と不飽和脂肪酸(DHA・EPA)が含まれており、消化吸収に優れています。特に秋の鮭はDHA、EPA、ビタミンA、ビタミンB、ナイアシン、カルシウム、鉄等が含まれており、栄養満点です。
・鮭は活性酸素による酸化ストレスを抑えるアスタキサンチンやビタミンEを豊富に含む食材です。また、皮にはコラーゲンが多く含まれています。皮ごと食べてください。
(注)良質のタンパク質とは、構成するアミノ酸の中で人体ではほとんど合成することができない9種類の必須アミノ酸がどれだけ理想に近く含まれているかによって決まります。
(参考文献等)
・飯沼一茂(2017)『それでは実際、なにをやれば免疫力があがるの?-一生健康で病気にならない簡単習慣』 ワニブックス.
・石原結實(2020)『水分の摂りすぎが病気をつくる』ビジネス社.
・健康長寿ネット(2019/2/1)、『サポニンの効果』、閲覧日 2020/10/24、https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/saponin.html
・草野英二、黒尾誠(2011)『腎臓病から見えた老化の秘密』日本医学館.
・小峰一雄(2018)『自然治癒力が上がる食事』ユサブル.
・櫻井大典(2019)『つぶやき養生』幻冬舎.
・櫻井大典(2019)『まいにち漢方食材帖』ナツメ社.
・篠浦伸禎(2022)『脳の働きと免疫力-最強の食・体・脳の使い方-』 国書刊行会.
・高取優二(2024)『弱った腎臓のメンテナンス法』アスコム.
・寺本民生監修(2016)『脂質異常症<コレステロールと中性脂肪> -最新の食事療法-』高橋書店.
・内藤裕二ほか(2022)『腸すごい!医学部教授が教える最高の強化法大全』文響社.
・中屋豊(2009)『よくわかる栄養学の基本としくみ』秀和システム.
・日経BP総合研究所メディカル・ヘルスラボ/編著 樂木宏実/監修(2020)『「100年ライフ」のサイエンス』日経BP.
・平田恭信監修(2017)『高血圧 -最新治療と食事-』高橋書店.
・堀江昭佳(2019)『血流がすべて整う暮らし方』サンマーク出版.
・松田久司監修(2020)『カラダのために知っておきたい 漢方と薬膳の基礎知識』淡交社.
・三石巌(2017)『医学常識はウソだらけ-図解版 分子生物学が明かす「生命の法則」』祥伝社.
・家森幸男(2022)『文藝春秋2022年4~11月号「世界最高の長寿食(連載第1~8回)」』文藝春秋.
・吉森保(2020)『LIFE SCIENCE -長生きせざるをえない時代の生命科学講義-』日経BP.