骨粗鬆症は「骨強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気」ですが、東洋医学の観点から見ると骨を司る腎の経絡(ツボの経路)の衰えと食物(ここではカルシウム)の吸収と代謝の衰え、すなわち後天の気を司る胃、脾、小腸の経絡の衰えと見ます。
骨粗鬆症のみならず、冷え、むくみ、膝の痛み、下肢動脈瘤等に対応すべく、足腰の強化は中高年にとって非常に大事なものと考えています。
特効ツボ、腎、胃、脾、小腸に関連するツボ、反射ゾーンから治療または予防していきます。
骨粗鬆症の予防や治療のため、薬を常用している方も当ページの手法や運動法の併用をぜひお勧めします。
1. 一番のお勧めのツボです。
右図「失眠」(踵の中央)
このツボを木槌で軽く叩きます。中国では「失眠」の位置を足裏の縦の中心線と内・外踝を結ぶ線との交差点としています。踵の中央より前になります。朝夕少し広めに且つ強めに100回ぐらい叩いてください。
あわせて、次項の「湧泉」も叩いてください。
つま先立ちをし、踵を床に100回打ちつける方法も有効ですが、木槌で叩く方法が一番膝に負担がかかりません。
《豆知識》
・健康な骨からはオステオカルシンというホルモンが分泌される。オステオカルシンは、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を高める。骨粗鬆症の方は、オステオカルシンの分泌が減って、インスリンの分泌も減ってしまい、血糖も上がる。
・オステオカルシンは脳血液関門を超えて脳に入り、海馬に働いて認知症状を改善していることがわかっている。
・骨がぼろぼろになると血管がカチカチになる。骨粗鬆症と動脈硬化には関係がある。骨粗鬆症になると血液中に流れ出たカルシウムの一部は血管(動脈)に中へ移動し、動脈の壁に沈着する。これらの関係を「骨血管連関」という。
(豆知識の参考文献)
・伊藤裕(2015)『なんでもホルモン』朝日新書.
・伊賀瀬道也(2016)『血管力革命 健康寿命を延ばす46の知恵』冬樹社.
・宮坂昌之ほか(2018)『免疫と「病」の科学』講談社.
2. 足裏のツボ、ゾーンから施術していきます。
右図「湧泉」 (足の五本の指を内側に曲げた時にできる凹んだところ)
腎の経絡を強化します。
「副腎ゾーン」 (「湧泉」の真下)
「湧泉」、「副腎ゾーン」とも、腎を強化します。女性は閉経後、特に「副腎ゾーン」は大事です。
「小腸ゾーン」(土踏まずのリスフラン関節より踵側)
「十二指腸ゾーン」(足裏第一中足骨の基部、小腸ゾーンの上)
「胃ゾーン」 (土踏まずの上、親指の付け根の下のふくらみ(拇指球)の下部)
「小腸ゾーン」、「十二指腸ゾーン」、「胃ゾーン」は、特にカルシウムの消化吸収を助けます。「胃ゾーン」、「十二指腸ゾーン」は消化する方向つまり図の矢印の方向に押し込んでいきます。左足と右足の方向が違いますので、ご注意願います。
「甲状腺ゾーン」(足の親指の付け根の下にある膨らんだ部分)、
「副甲状腺ゾーン」(甲状腺の内側)
カルシウムの代謝をコントロールします。特に足の内側の黒く塗りつぶしたところの副甲状腺ゾーンを念入りに押し揉んでください。親指の付け根、親指と人差し指の間も押し揉んでください。
3. 次に特効穴、腎、脾の経絡から次のツボを紹介します。
右図「懸鐘」 (外踝の上指4本、腓骨前縁に取る)
古来、骨髄の精気が集まるツボとして有名です。腓骨後縁も押して圧痛のある方を取ってください。
右図「太渓」(内踝の後方、アキレス腱の前のくぼみ)
「三陰交」(内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
4. 骨粗鬆症の怖さは転倒による骨折です。転倒予防には運動療法が必須です。「自分でできる運動療法」ページ、特に《バランス運動と下半身の筋肉トレーニングの組み合わせ》、《筋肉が弱い方向けの下半身の強化》という項目がお勧めです。