血中脂質値の上昇を予防、改善するツボ療法です。
ここでのツボの狙いは、次の3点です。食事療法、運動療法に加えて行ってください。有酸素運動は必須です。
・東洋医学的には、過剰な「水」と「熱」が体の中で結ばれ充満する「湿熱」という体質(「体質とツボ」参照)になっており、その体質を変えます。
・脂質の代謝に直接関与している内臓に働きかけます。
・自律神経を整えます。この項目については、「自律神経を整える」ページも参照してください。
《豆知識》
・コレステロールのバランスには、中性脂肪も関係しています。
・中性脂肪が増えすぎると、HDLコレステロールは反比例して減少します。さらにLDLコレステロールは変性し、粒子が小さい「超悪玉」と呼ばれる、動脈硬化をさらに進めるコレステロールになります。
・運動をすると、中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上げ、LDLコレステロールの質が良くなります。
(豆知識の参考文献)
・寺本民生/監修(2018)『脂質異常症がよくわかる本』講談社.
・寺本民生・木庭新治・丸山千寿子/監修(2013)『コレステロール対策のベストアンサー』主婦と生活社.
・梅津拓史(2020)『血管の専門医が教える 『血流』をよくする最高の習慣 』総合法令出版.
1. 「湿熱」という体質を変えます。
・「気」、「血」が上手に巡ることができず、ドロッとしたものが体内にあります。
・暑がりで汗っかきが多く、冬でも薄着でも大丈夫です。でも夏は不得意です。一見、元気があり余っていそうに見えますが、「湿熱」が気血のめぐりを邪魔しているため、実はだるさや熱っぽさを感じています。
・食欲旺盛で、どちらかというと内臓脂肪型の肥満タイプ(出腹)が多く、高脂血症、痛風、糖尿病、動脈硬化、前立腺肥大症等を引き起こします。
①右図「足三里」(膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下)
「豊隆」(膝蓋骨(ひざのお皿)の下縁と外踝の間を16等分した中央の高さで前脛骨筋(すねの外側に盛り上がる筋肉)の外縁)
膝蓋骨の下縁と外踝の間に手を広げ、中央を探ってください。足三里から指4+3本下を目安にしても結構です。足三里から足首の中央へ垂直におろした線よりも指1本外側になります。前脛骨筋は足を背屈した方が分かりやすいと思います。痰湿(体内に余分な水分が溜まり、血脂が高い状態)除去の特攻穴で、「去痰(気管や気管支にたまった痰を除去すること)の要穴」とも呼ばれています。
②右図「三陰交」(内踝の直上指4本、脛骨の後縁)
③右図「内関」 (腕関節掌側横紋の正中から肘に向け指2本)
④右図「関元」 (臍の中心から真下に指4本)
「丹田」とも呼ばれます。正確には臍から恥骨結合上縁を5等分し、「関元」は上から3/5に取ります。
項番1①の「豊隆」と組み合わせることで一層の効果がでます。
2. 脂質の代謝に直接関与している「肝」、「胆」、「腎臓」等の足のツボ、反射区に働きかけます。
①右図「太衝」(第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ)
ストレスを抑えるツボでもあります。
②右図「胆嚢反射区」(右足の甲及び裏の第三、第四中足骨間隙の基部(足首に近い部分))
胆嚢反射区は右の足のみで、足の甲側、裏側双方にあり、特に甲側に圧痛が出ます。右足の第三指と第四指の指の股から5センチほど下になります。
胆汁酸は血液の中にも分泌され、脂肪細胞や筋肉細胞に作用して、代謝を促進し脂肪を燃やすホルモンであるインクレチンのGLP-1の分泌を促します。
③「肝臓ゾーン」 (右足裏にあり、第二中足骨より第五中足骨のほとんどをカバー)
このゾーンも右足のみです。足の裏側で外側(第四中足骨)4センチほど下にも圧痛を感じると思いますので、念入りに押してください。この箇所は外側に向けて押します。
④「排泄系」のツボ、反射区です。
右図「湧泉」(五指を屈し足底中央の最もくぼんだところ)
「副腎」の反射区 (湧泉の下のエリア)
「腎臓」の反射区 (副腎の下のエリア、第二、第三中足骨の近位端でリスフラン関節線の上)
「輸尿管」の反射区 (「腎臓」、「膀胱」を結んだ線)
「膀胱」の反射区 (内踝の下、土踏まずのアーチ状の(踵骨、船状骨、第一楔状骨にまたがる)エリア)
3. 運動療法、食事療法は必須です。
①運動は、有酸素運動はもちろんのこと、筋肉トレーニング、ストレッチも取り入れてください。
・1週間で150分の有酸素運動をしてください。有酸素運動は自分に合ったものをしてください。
・ウォーキングする場合は次のことに留意してください。
一日8000歩(日常的な歩行を含む)、そのうち20分は時速6kmが必要です。
・筋肉トレーニング(体の大きな筋肉、特に下半身)は必須です。「運動による養生法」ページの「片足立ちをしながら、足上げ、太もも上げ」、「コーナースクワット」を勧めます。
②お勧めの食材は、日常的に手軽に食べられるものとして納豆(1パック/日)、くるみ(10粒程度/日)、そして食物繊維です。
・食物繊維は胆汁酸を体外に排出する働きがあります。胆汁酸の原料はコレステロールです。切り干し大根、かぼちゃ、ゴボウ、アボガド、豆類、イモ類、きのこ類がお勧めです。
・くるみの食べ過ぎに要注意です。一日10粒程度です。
③お勧めの食材として、家森幸男先生(武庫川女子大学国際健康開発研究所長)が文藝春秋に連載中の「世界最高の長寿食」2022/9月号で、「史上最強食材大豆の底力」を紹介しています。
・イソフラボンは女性ホルモンの「エストロゲン」の構造と非常に似ている物質です。
・日本や中国など、大豆イソフラボンを多くとっている国は心筋梗塞死が少なく、摂取が少ない国は心筋梗塞死が多いのです。
・イソフラボンは、血中で女性ホルモン様の働きをし、血管を裏打ちしている内皮細胞の遺伝子に働きかけて一酸化窒素(NO)を作ります。これにより血管が拡張し、血液もサラサラになって血栓ができにくくなります。
・イソフラボンには、LDLを減らす作用もあります。肝臓の細胞には、LDLのレセプター(受容体)がついていて、これがLDLを処理しています。イソフラボンはこのレセプターを増やし処理量を増やすのでLDLが下がるのです。