東洋医学は生体を維持する要素として「気・血・水(きけつすい)」があると考えています。気・血・水が中庸で且つ滞りなく巡っていることを最良としています。中庸とは平均値の意味ではありません。調和がとれている状態を言います。気血水が中庸を外れ、滞った状態を病態別に体系化し、グループ分けをしています。そのグループを「体質」といいます。
本ページは加齢とともに増える肌トラブルを、東洋医学の「体質」という視点からどのようにセルフケアで整えていくかをまとめました。
1. 体質の変化
加齢とともに増加する東洋医学が定義する体質にどんなものがあるのでしょうか?
結論から言うと、加齢とともに増えやすい東洋医学の体質は代表的なものとして「気虚」、「血虚」、「陰虚」、「瘀血」の4つが挙げられます。女性の美容の悩み(乾燥・シミ・たるみ・疲れ顔・むくみ・イライラ・不眠)は、この4つの体質の組み合わせでほぼ説明できます。このほかに「血熱」、「湿熱」が挙げられます。
単独で存在することはむしろ少なく、実際には「気虚(特に脾気虚) → 血虚 → 陰虚 → 瘀血」という順番で複合化します。
「陰虚→血熱→上衝」のケースもあります。特に陰虚があると熱がこもりやすく、血熱・上衝が起こりやすくなります。
おのおのの体質を説明します。詳細は「体質とツボ」ページを参照してください。
① 気虚
・脾胃の働きが弱り、エネルギー生成が低下、疲れ顔・むくみ・たるみ・肌のハリ低下
・高齢者は「脾気虚」がベースになり、血虚・陰虚を加速させる
② 血虚
・血が不足し、皮膚の乾燥、クマ、髪のパサつき、めまい、立ちくらみ、脳・自律神経が不安定で不安、不眠、集中力が低下
③ 陰虚
・体の水分・潤い・冷却力が低下、血熱・上衝を誘発しやすい、赤み・皮膚の乾燥・ほてり・敏感肌・のぼせが起こる
④ 瘀血
・血流が滞り、加齢で血管の弾力が低下、痛み・シミ・くすみ、たるみ、慢性痛(肩こり、腰痛)が固定化、動脈硬化
⑤ 血熱
・血の中に余分な熱がこもり、血が熱を帯びてしまった状態、赤み、ほてり、入浴後の悪化
・身体の潤い(陰)が不足する→熱を冷ます力が弱くなる、熱がこもりやすくなる→結果として血が熱を帯びる
⑥ 上衝
・顔に熱が集まりやすい、血管が拡張しやすくなる、皮膚の薄い部分に赤みが強く出る
・熱が集まりやすい場所(血流が多い・皮脂が多い・皮膚が薄い)にだけ強く反応が出る
⑦ 湿熱
・加齢で代謝が落ちる・ストレスで食欲が増える・甘いもの/脂っこいものが増える等食欲旺盛熱が過剰で、吹き出物や湿疹が出やすくなり、炎症を起こし、化膿しやすくなる
2. 本ページで紹介するツボ・手技療法
①全ての体質に共通のツボです。
ピップエレキバンを貼ることをお勧めします。ピップエレキバンは刺激が弱く、毎日続けられ、慢性症状には向いています。皮膚がかぶれますので、時々休ませてください。または一日朝晩2回指圧をしてください。
・合谷:手背、第2中手骨中点の橈側
・曲池:肘を屈曲したとき、肘関節の前面にできる横紋の外端のくぼみ
・中脘:臍の中心から真上に指4本+1本のところに圧痛を探る
・巨厥:肋骨弓の交差する部位から指3本下
・足三里:膝の外側直下の小さなくぼみから指4本分下(で脛骨から指幅1本外側)
・三陰交:内踝の頂点から指4本上
・太渓:内踝の後方、アキレス腱の前のくぼみ
・太衝:第一、第二中足間を圧上して指の止まるところ
②自律神経を整える手技療法です。5、6回/日行ってください。
・ツメ揉み:爪甲の角や骨の細いくぼみのツボに親指の爪の先端を使って、チクチクと5~10回/1セット、一日4~5セット以上押します。筆者自身は10セット押すことを目標にしています。
・中指もみ:中指の先端から手のひらの中央~手首までを揉みます。一日3セット行います。
③血熱→上衝に有効です。自律神経の不安定(交感神経の過剰)を鎮めます。
・百会:頭部正中線と左右の耳尖を結んだ線の交叉部
-中指で押す、5~10秒(6秒ぐらい)ゆっくり押す→ゆるめる(2~3秒)
-このセットを5回、押すとき→ゆっくり吐く、ゆるめるとき→軽く吸う
-グリグリしない、長時間押しっぱなしにしない
-太衝、三陰交を併用する→血熱に効かせる
3. 身体の構造的変化
項番1では加齢による東洋医学的な体質変化を説明しました。項番3は、加齢とともに起こる「身体の構造的変化」を整理します。両者は互いに影響し合い、美容の悩みとして現れます。
① 皮膚の構造変化(薄くなる・乾燥する)
・コラーゲン量が急減(1年で1〜2%減少 → 更年期で一気に30%減)
→ たるみ → 毛細血管が透ける → 赤みが目立つ
・皮脂量が激減
→ 乾燥 → かゆみ → バリア機能低下
・肌の赤みが残りやすくなる
② ホルモン変化(特にエストロゲン低下)
・肌の潤い低下
・顔のほてり
・赤み
・のぼせ
・乾燥
・夜のかゆみ
・髪のパサつき
・目の乾燥
③ 血流・自律神経の変化(ほてり・赤み・むくみ)
・血流が変動しやすい
・自律神経が乱れやすい
・ストレスの影響を受けやすい
④ 筋肉・骨格の変化
・表情筋の衰え→たるみ
・骨密度の低下→顔の土台が縮む
・脂肪の移動→ほうれい線・フェースライン崩れ
4. 美容悩み別セルフケア一覧表
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美容の悩み |
主な体質 |
改善ポイント |
具体的セルフケア |
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乾燥・粉ふき・かゆみ |
血虚・陰虚 |
・血を増やす |
・1時間おき70〜80mlの水 ・入浴後すぐ保湿 《避けるもの》 ・塩分の強い乾物 ・スナック菓子 |
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赤み・ほてり・敏感肌 |
陰虚・血熱・上衝 |
・熱を下げる |
・1時間おき70〜80mlの水 |
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シミ・くすみ |
瘀血 |
・血流改善 |
・木槌でふくらはぎ叩打 |
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たるみ・疲れ顔 |
気虚・瘀血 |
・気を補う |
・朝の白湯 |
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むくみ(顔・足) |
気虚・水滞 |
・脾を守る |
・冷たい飲み物を避ける ・ふくらはぎケア 《避けるもの》 ・冷たいもの・甘いもの |
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クマ(青・茶・黒) |
血虚・瘀血・気虚 |
・血を増やす |
・黒ごま・卵・きくらげ
・ふくらはぎケア ・首・お腹・足首のあたため |
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髪のパサつき・抜け毛 |
血虚・腎虚(陰虚) |
・血と腎を補う |
・黒豆・黒ごま・海藻 |
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ほうれい線・口元のしぼみ |
気虚・血虚 |
・気と血を補う |
・白湯 ・顔のツボ |
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のぼせ・冷えのぼせ |
陰虚・瘀血 |
・上の熱を下げる
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・1時間おき70〜80mlの水 |
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皮脂・ニキビ・赤み・むくみ・ベタつき、毛穴の開き(特に黒ずみ) |
湿熱・瘀血
湿熱・肝鬱(ストレス) |
・湿を抜く ・熱を冷ます ・巡りを良くする |
・基本的に食べすぎ・飲みすぎ→食事内容の見直しと、体内に溜まった湿熱を運動で消費することが不可欠 ・揚げ物・甘いもの・乳製品・小麦・アルコールは湿熱を悪化させる ・きゅうり・大根・冬瓜・はと麦・緑豆は湿熱を抜く ・汗をかきすぎない運動(軽いウォーキング・太極拳・ヨガ)→ 大量の汗は逆に湿を悪化させる ・食後すぐの運動は避ける(胃腸に湿が溜まる) ・5-7呼吸法(5秒で吸い、7秒で吐く):3回/1セット、3セット/日(内、夜1セット、6-8呼吸法) |
5. 「体質は改善しますか?どれくらいの期間で改善しますか?」という疑問に対して
① 体質は改善します。 体質は生まれつきの「固定されたもの」ではなく、生活習慣・ストレス・年齢によって変化する「動的な状態」です。 そのため、偏った状態を中庸に戻すことは十分に可能です。
② 改善の手応えが明確に出てくる期間の目安
● 1ヶ月(2〜4週間)
・揺れ幅が少しずつ減り始る。ただし、この時期はまだ波が大きく、日によって変動がある
・赤みが若干軽減(ふとした時に「前よりマシ」と感じる程度)
・乾燥の軽減(軽度)
● 1〜3ヶ月
・改善の“手応え”が出始めるが、まだ波は大きい
・血虚の初期改善(肌の潤い・髪の質)
・陰虚の初期改善(ほてり・敏感肌の安定)
・瘀血の初期改善(くすみ・シミの変化が出始める)
● 3〜6ヶ月
・波が明確に小さくなり、悪化しても戻りが早くなる
・体質の「ベース」が変わる
・たるみ・疲れ顔の改善
・のぼせ・冷えのぼせの安定
・血熱の安定
・上衝の改善(赤み・ほてりの波が減る)
● 6ヶ月〜1年
・慢性化した体質の改善が定着
・シミ・くすみの大幅な改善
・肌の安定性が高まる(季節変動に強くなる)
③なぜ時間がかかるのか
・血は1〜4ヶ月で入れ替わる(赤血球の寿命が約120日)
・皮膚のターンオーバーは28〜45日(加齢で60日以上)
・自律神経の再学習には3ヶ月
・瘀血の改善には毛細血管の再生が必要(3〜6ヶ月)
6. 体質改善の途中で起こる「軽い揺り戻し(波)」について
体質改善は、身体が「元の状態 → より整った状態」へ移行する過程です。この途中で、良くなったり悪くなったりを繰り返す「波」が出ることがあります。
例えば、
・ある日は赤みが少ないのに、翌日は急にほてる
・夜は落ち着いていたのに、翌朝は乾燥が強い
・ストレスがかかると一気に上衝が出る
・食事や睡眠の質で反応が変わる
こうした揺れは、自律神経・血流・皮膚バリア・ホルモンなどが調整されているサインであり、体質改善の過程では自然に起こり得るものです。揺れがあっても、全体として少しずつ良い方向に向かっていれば、それは体質改善が進んでいるサインです。
7. 注意事項・補足事項
① 5-7呼吸法
・基本的な方法
-順番は「吸う」→「吐く」から→副交感神経が優位になるように
-吸う息は「自然に入ってくる」感覚を優先し、力んで吸いにいかない→力んで吸うと交感神経が強く(スィッチが)入る
-吸うときのコツ ↓
:片手を胸、片手を下腹に置く
:吸気の最後の1秒だけ、胸の手が「実際に動くか」を観察する。
:手が動かない→胸は動いていない(理想的)
・呼吸の生理反応
-吸う:軽く交感神経が入る(心拍が少し上がる、活動モード)
-吐く:副交感神経が優位になる(心拍が下がる、リラックス)
・1日の合計=最大6〜8セットまで →「やり過ぎると逆効果になる理由」
-深呼吸を繰り返すと、体内の二酸化炭素(CO₂)が必要以上に排出される
-迷走神経が刺激されすぎて、逆に不調が出る
-普段使わない筋肉(肋間筋・横隔膜)が疲れる
-深呼吸は自律神経を調整する強力な手段だが、やり過ぎると逆に揺らす
-「息が吸いにくい」、「喉が詰まる感じ」がでる
・力んで吸いすぎない(胸式にならないように、胸が動かないように)
・めまい・頭が重い・手足がしびれる場合は中止する
・食後すぐは避ける(迷走神経反射が強まりやすい)
・不安が強い時は「短めの呼吸」から始める(急に深呼吸をすると過換気を誘発しやすい)
・やり過ぎと感じる場合は 4-6呼吸法(4秒で吸い、6秒で吐く)で良い
・夜はやり過ぎると逆に覚醒する人もいるため、体調に合わせて調整する
・回数が多いと、無意識にこうなる:
-「ちゃんとやらなきゃ」
-「深く吸わなきゃ」
-「秒数を守らなきゃ」
この“努力性呼吸”は、実は交感神経を刺激する。
・自然に入ってくる空気を、下腹だけで受け止める ← 最も迷走神経が反応する吸い方
-力を入れない
-空気を“取りに行かない”
-下腹が60%くらい膨らむところで止める
-胸は完全に不動
-鼻から静かに吸う(音が出ないレベル)
・3回で最大効果を出す質の基準
-姿勢:胸を動かさず、下腹だけが前に出る
-吸う:自然吸気・下腹60%・無音
-吐く:細く長く・力を抜く方向へ・吐き切らない
-3回の流れ:準備 → 本番 → 固定化
②深呼吸のロジック
● 吸う(吸気)=能動的(横隔膜が動く)
・横隔膜が下がる
・胸腔が広がる
・肺が広がり、空気が入る
・腹腔の圧が高まり、内臓が前下に押される
・お腹がふくらむ
● 吐く(呼気)=受動的(肺と胸郭が自然に戻る)
・横隔膜が上がる
・胸腔が小さくなる
・肺と胸郭の弾性で自然に縮む
・空気が押し出される
・腹腔の圧が下がり、お腹がへこむ
《豆知識》
●血管反応性とは何か
血管が、温度・ストレス・アルコール・香辛料・摩擦・炎症などの刺激に対して、どれだけ拡張しやすいか/収縮しにくいかを示す性質。
・刺激 → 一酸化窒素(NO)や神経伝達物質が放出
・血管平滑筋がゆるむ → 血管が拡張
・皮膚表面の血流が増える → 赤み・ほてり・火照り
つまり、「血管がどれだけ過敏に反応するか」という体質的な特徴。
●加齢、皮膚、自律神経との関係
・加齢で皮膚が薄くなり、血管の収縮力が落ちるため、赤み・ほてりが出やすくなる。
・皮膚バリアが弱いと刺激が血管に届きやすく、反応性がさらに増す。
・自律神経(特に交感神経)が興奮すると血管が拡張しやすくなり、ストレスや緊張でも赤くなりやすい。
⇒東洋医学の「上衝」「血熱」とも現象レベルで密接に対応する。